金属加工の技術:熱処理加工用語と解説

▶︎【熱処理加工】26種類

「熱処理」とは、鋼を熱して冷やす処理のこと。金属材料を融点以下の適当な温度に加熱し、 冷却速度を加減して所要の組織・性質を与える処理のこと。熱して冷やすことによって鋼は性質が変化する。

「技術」とは、科学の原理を役立てて、ものを生産したり組織したりする仕方や技。または、物事を能率的に行う技をいう。

油焼き

油焼きとは、鉄鋼製品を高温に加熱後、油で急冷を行う焼入操作のこと。水焼入に比べ焼入歪や焼割れを生ずることが少ない。鍛造後あるいは加工後の精度が要求される製品の焼き入れに適している。クロム、ニッケル、モリブデンなどを含む肌焼鋼は焼入性が高いために油焼入を行う。

移動焼入

移動焼入とは、品物の一部を加熱冷却するようにして、これを連続移動して全面的に高周波焼入する方法。高周波焼入とは、鋼に高周波の電磁波による電磁誘導を起こし、表面を過熱させて焼入れを行う熱処理の手法のこと。

AXガス

AXガスとは、アンモニア分解ガスのことで、H↓2、75%、N↓2、25%の組成。−30〜−40℃と露点が低く、酸化を極めてきらう材料に対する焼結や光輝焼鈍等の無酸化性雰囲気にて焼鈍を行う熱処理方法として用いられる。金属表面が酸化されないため、焼鈍前と同等の表面を保つことができる。

エージング

エージングとは、新品が安定動作するまで動作させる「慣らし運転」のこと。市場での初期故障による不良品を低減や初期変化を起こさせて製品を安定化することが目的である。
工場出荷の段階では規定寸法に組まれているだけで、製品の安定期には入っていない場合が多いためである。

塩浴軟窒化

塩浴軟窒化とは、耐磨耗性と耐疲労性がアップする、機械部品の性能向上に使用されるタフトライド処理のこと。
軟窒化ともいわれ、鋼や鋳鉄部品の表面に、数10μmの鉄窒化物からなる化合物層と、その直下に0.1〜1.0mmの窒素拡散層を得る処理。570℃付近の温度に溶融保持した塩浴(ソルトバス)に所定時間浸漬し水冷する。

エンリッチガス

エンリッチガスとは、浸炭性雰囲気のカーボンポテンシャルを増加させる浸炭焼入などで用いる強化ガスのこと。保護雰囲気のキャリヤーガス中に入れることにより、所定の炭素濃度を保つことができる。

カーボンポテンシャル

カーボンポテンシャルとは、鋼を加熱する雰囲気の浸炭能力を示す表面炭素濃度のこと。鋼を浸炭性ガス中で加熱する場合において、長時間ある温度に保持した際の、その温度で、そのガス雰囲気と平衡に達したときの鋼の表面の炭素濃度のこと。

火炎焼入

火炎焼入とは、高温の炎を吹き付けて材料の表面を焼入れし、表面層を硬化させる方法である。硬化の原理は焼入れと同じで、オーステナイト組織まで加熱後、鋼の表面部をその焼入温度まで加熱し、その後急冷して表面を硬化させる方法である。

加工熱処理

加工熱処理とは、加工と熱処理の組み合わせによって金属材料の材質改善をはかるプロセスのこと。熱処理に塑性加工を加えて、金属組織を微細化し、材料の強度、靭性を向上させている。最終の塑性加工がある温度範囲で行われ、熱処理だけでは繰り返して得られない特定の性質をもつ材料状態を生じさせる加工工程。

ガス軟窒化

ガス軟窒化とは、鋼および鋳鉄部品を550~600℃付近で、浸炭性ガスとアンモニアの混合雰囲気中で、窒化層を形成させること。また、耐摩耗性、耐焼付性、耐疲労性などの向上を目的として、窒素と炭素を侵入拡散させ表面に炭窒化物を形成させる処理をガス軟窒化処理という。

簡易焼ならし

簡易焼ならしとは、機械的性質の改善や切削性の向上を行う熱処理の一つである。熱間鍛造後の残熱を利用した省エネルギー型熱処理方法の一つ。熱間鍛造後、赤熱状態にある粗形材を650℃付近までブロアーなどで冷却し、その温度付近に保った炉に導き、炉内に一定時間保持後、空冷で冷却して、金属組織の結晶を均一微細化させる方法。

完全焼なまし

完全焼なましとは、冷間加工または焼入などの影響を完全になくすために、鉄のγ鉄に炭素や合金元素などの他の元素が固溶する均一なオーステナイトの領域まで加熱し、これを徐冷する熱処理法のことをいう。

キャリヤーガス

キャリヤーガスとは、ガスクロマトグラフィーで試料とともに送り込まれる雰囲気熱処理で用いる保護雰囲気をつくるガス。一般に、ヘリウム、窒素、アルゴンなどの不活性ガスが用いられる。雰囲気性状の改質のため添加するガスをエンリッチガスという。

クロム浸透処理

クロム浸透処理とは、クロムが鉄鋼上に拡散しクロムリッチな表面をつくること。鋼および鋳鉄部品の表面に耐酸化、耐食性、耐焼付性を目的として約1100℃で加熱処理することでクロムを拡散させ、クロム・鉄合金層、クロム炭化物層およびそれらの複合層を得る処理のこと。

恒温焼鈍

恒温焼鈍とは、金型工具を用いて、炭素鋼・ステンレス鋼・合金鋼・非鉄金属などの金属材料に、弾性限界を超える外的な力を与え、圧縮成形する冷間鍛造などの後工程での加工性を向上するため、鋼材の硬さを落とす処理のこと。

光輝熱処理

光輝熱処理とは、鉄鋼を保護雰囲気または真空中で熱処理することにより、表面酸化を起こさず表面の高温酸化および脱炭を防止し、製品が光り輝いている状態を保持する処理のこと。

高周波焼入

高周波焼入とは、高周波誘導電流によって、鋼材の表皮を変態点以上の温度に急速に加熱したのち、表面を急冷して硬化させる焼入れを行う熱処理の手法のこと。鋼表面のみ硬化させることで、内部は材料の破壊に対する抵抗性を保った状態を保つことで、柔軟性に富んだ材料にすることが可能となる。

高周波焼もどし

高周波焼もどしとは、導電性材料を加熱するための非接触の加熱方式である高周波誘導加熱を利用して行う焼もどしのこと。高温短時間処理に適し、火炎を使用せず、制御が容易なため高周波焼入と組合わせた連続操作が効果的である。

水蒸気処理

水蒸気処理とは、燃結部品を水蒸気で550℃付近に加熱し、固体粉末の集合体を融点よりも低い温度で加熱すると固まる燃結体の表面や空孔部に四酸化三鉄を生成させる処理。潤滑能力を高め、耐摩耗性の向上に有効である。

低温焼もどし

低温焼もどしとは、浸炭焼入部品や工具のように、HV650以上必要な部材において、焼入後約150℃~200℃以下の温度で、最低1時間以上焼もどしする処理。硬くて脆い焼入マルテンサイトが、粘い焼戻しマルテンサイトに変化する。経年変化の防止、耐摩耗性の向上、残留応力の減少、弾性限を向上させる。

軟窒化処理

軟窒化処理とは、鋼および鋳鉄部品を通常570℃付近のアルミニウム、クロム、モリブデンなどの窒化物形成元素を含む鋼を、アンモニアまたは窒素を含んだ雰囲気中で処理し、表面に数μm〜数十μmの炭窒化物層および0.1〜1.0mm程度の窒素を浸透させて硬化させる処理。目的は、耐摩耗性、焼付き防止、耐熱など。

焼入焼もどし

焼入焼もどしとは、鋼を焼入後、鉄のγ鉄に炭素や合金元素などの他の元素が固溶したオーステナイト変態点以下の適当な温度にて加熱後、冷却する一連の処理のこと。硬さを多少犠牲にするが、鋼を強靭にすることが可能となる。

焼なまし

焼なましとは、金属材料を適当な温度に加熱し、その後徐冷する熱処理である。金属製品は加工硬化や残留応力が発生するが、焼なましによって残留応力も減少するため軟化する特徴がある。鋼の軟化、内部応力の除去のため、適当な温度に加熱した後、ゆっくり冷却する処理。

焼ならし

焼ならしとは、鋼をオーステナイト化温度(726℃)まで加熱した後、空冷で放冷する処理のこと。機械的性質の改善や切削性の向上を行う熱処理である。鋼の組織および結晶粒度が均一化され、品質が安定し、被削性が向上する。

焼もどし

焼もどしとは、溶体化処理された金属を適切な温度に加熱・温度保持する処理のこと。焼入で生じた鋼の組織を変態または析出をさせて安定な組織に近づけ、ねばり強さを与えたり、硬さを減ずるなど所望の性質を得るために、γ鉄は比較的多くの他元素を固溶することができ、γ鉄に他元素が固溶したオーステナイト変態点以下、適当な温度に加熱した後、冷却する操作のこと。

レーザー焼入

レーザー焼入とは、焼入硬化性のある材料表面に高エネルギー密度のレーザービームを照射し、表面近傍を急速に加熱し、その熱が熱伝導で加工物内部に伝達され急速に冷却される、いわゆる自己冷却により焼入する方法。精密部品へ熱影響を与えず超低歪み精密焼入れを行うことが可能。

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