製造現場では、「品質を保証する」とよく言われますが、品質保証とは完成した製品を検査し、不良品を取り除くことではありません。
本来の品質保証とは、要求品質を安定して実現できる工程をつくり、その状態を維持し、保証できない製品や状態を後工程へ渡さないことです。
その中心となる仕組みが「工程保証」です。
工程保証では、設計・生産準備・前工程などから受け取った品質要求を、自工程で安定して実現できる工程条件へ展開し、量産条件で成立性を確認したうえで、日常管理や変化点管理によって保証状態を維持します。さらに、異常が発生した場合には、生産停止、製品隔離、影響範囲の特定、復旧確認を行い、保証できる状態に戻してから生産を再開します。
つまり工程保証とは、「工程を管理すること」ではありません。
工程を通じて品質保証責任を果たすための仕組みです。
この記事では、工程保証の定義をはじめ、品質保証・工程管理との違い、工程保証を構成する要素、成立条件、保証判定、異常時の対応、工程保証を維持・更新する考え方まで、製造現場の実務に沿って体系的に解説します。
結論|工程保証は、要求品質を保証できる工程をつくり続ける仕組み
工程保証は、完成した製品を検査し、良品か不良品かを判定するだけの活動ではありません。
人、設備、材料、方法、環境などが変化する量産工程の中で、要求品質を安定して実現できる工程を設計し、量産条件で成立性を確認し、その保証状態を維持・更新する仕組みです。
本記事では、工程保証を次のように定義します。
工程保証とは、設計・生産準備・前工程などから受け取った品質要求を、自工程で安定して実現できる工程の成立条件、管理基準および確認方法へ展開し、その成立状態を維持するとともに、異常や変化を検出・処置し、実際に生産した製品を後工程へ引き渡せるか判断する仕組みです。
工程の成立条件には、設備の設定値だけでなく、次のような品質成立の前提を含みます。
- 設備能力
- 工程設定値
- 治具・工具の精度と状態
- 材料・部品の状態
- 作業方法
- 作業者の力量
- 保全条件
- 測定・検出能力
- 作業環境
工程保証の本質は、次の一文に集約できます。
工程保証とは、品質を検査だけで確認するのではなく、要求品質を保証できる工程を設計・成立確認・維持・更新し、保証できない製品や状態を後工程へ渡さないための仕組みです。
なぜ工程保証が必要なのか
製造工程では、人、設備、材料、工具、作業方法、環境などが常に変化しています。
そのため、昨日良品をつくることができた工程が、今日も同じように良品をつくれるとは限りません。
量産中には、例えば次のような変化が起こります。
- 設備や治具が劣化・摩耗する
- 材料や部品の状態が変わる
- 作業者や作業方法が変わる
- 生産速度や生産量が変わる
- 温度や湿度などの環境が変わる
- 保全や修理によって設備状態が変わる
- 製品仕様や工程条件が変更される
完成品だけを見ていると、不良が発生した後でなければ工程の変化に気づけない場合があります。
また、抜取検査では全ての不適合を検出できるとは限らず、検査や選別を増やすほど工数や費用も増加します。
だからこそ、製造部門は製品の結果だけでなく、品質を生み出す工程そのものを管理しなければなりません。
要求品質が成立する条件を明確にする
量産条件で成立性を確認する
成立した保証状態を維持する
変化や異常を早期に検出する
保証できない状態では生産・流動を止める
問題を工程へ反映して更新する
工程保証は、不良を見つけるためだけの活動ではありません。
不適合を発生しにくくし、異常を見逃さず、保証できない製品を後工程へ流さない工程をつくり続けるための仕組みです。
保証とは何か
工程保証を理解するには、最初に「保証」の意味を明確にする必要があります。
保証とは、単に「問題ありません」と宣言することではありません。
また、絶対に不良が発生しないと約束することでもありません。
保証とは、定められた要求に対して、成立条件と確認結果に基づいて適合を判断し、保証できない状態を管理・処置するとともに、その判断根拠を説明できることです。
保証には、大きく三つの要素があります。
要求への適合を判断できる
保証できない状態を管理・処置できる
判断と処置の根拠を説明できる
例えば、次のような情報が保証判断の根拠になります。
- 工程の成立条件
- 工程条件の確認結果
- 製品品質の確認結果
- 設備・治具・工具の状態
- 材料・部品の情報
- 製造履歴
- 異常や変化の履歴
- 検査・測定結果
- 異常時の処置結果
不適合が発生した理由を説明できても、生産を止められず、対象製品を隔離できなければ、工程保証が機能しているとはいえません。
反対に、生産を止めていても、何を根拠に正常・異常を判断したのかが不明確であれば、保証としては不十分です。
判断、処置、説明が一体となって、初めて保証が成立します。
「後工程へ保証して引き渡す」とは何か
工程保証の目的は、自工程内の帳票や検査を整えることではありません。
自工程から出る製品、部品、加工結果を、後工程が定められた条件で加工・組付け・使用できる状態にして引き渡すことです。
工程保証された状態とは、次のような状態です。
- 要求品質を満たしていると判断できる
- 工程の成立条件と管理結果が確認されている
- 保証できない対象品が識別・隔離されている
- 必要な品質情報や製造履歴を追跡できる
- 後工程が前工程の保証不足を補うための追加選別を行わなくてよい
- 定められた確認と通常の工程条件で加工・組付け・使用できる
後工程に受入確認や機能確認が定められている場合、それ自体が不要になるわけではありません。
重要なのは、次の点です。
前工程の保証不足を、後工程の検査や選別によって恒常的に補わせないこと。
したがって、工程保証された状態は次のように表せます。
工程保証された状態とは、後工程が前工程の保証不足を補うための追加選別や特別確認を前提とせず、あらかじめ定められた確認と通常の工程条件によって、加工・組付け・使用できる状態です。
品質保証の中での工程保証の位置付け
品質保証は、製造部門や検査部門だけが担うものではありません。
製品は、企画、設計、生産準備、調達、製造、検査、出荷など、複数の段階を経てお客様へ届けられます。
顧客・市場・法規などの要求
企画
設計
生産準備
調達
製造
検査・出荷
お客様
各段階が、自らの担当範囲で保証すべき事項を明確にし、責任を果たした状態で次の段階へ引き渡すことで、品質保証の連鎖が成立します。
設計部門は、顧客要求、法規、安全、機能、性能、耐久性などを図面や仕様へ展開します。
生産準備を担う部門は、その品質要求を量産で実現できる設備、治具、工具、工法、工程条件へ展開します。
製造部門は、受け取った設備や条件を単に使用するだけではありません。
自工程で要求品質を安定して実現し、正常・異常を判断し、保証できない製品や状態を未処置のまま後工程へ渡さない責任を担います。
この製造段階の品質保証を実現する仕組みが、工程保証です。
品質保証
└ 各段階が保証責任を果たす全体の仕組み
└ 工程保証
└ 製造工程で要求品質を保証する仕組み
└ 工程管理
└ 成立した工程保証を維持する管理活動
関連記事:
関連記事:
工程保証と工程管理の違い
工程保証と工程管理は、同じ意味ではありません。
工程保証
工程保証は、要求品質を安定して実現し、そのアウトプットを後工程へ保証して引き渡すための仕組みです。
工程保証では、次を明確にします。
- 自工程で何を保証するか
- どの特性によって保証するか
- 何が品質を左右するか
- どの方法で保証するか
- 何を日常的に管理するか
- どの基準で正常・異常を判断するか
- 誰が停止・隔離・再開を判断するか
- 量産条件で工程が成立しているか
- 実際に生産した対象品を引き渡せるか
- 変化後も保証状態が維持されているか
工程管理
工程管理は、成立した工程保証を維持するために、設備条件、材料状態、作業方法、品質実績などを監視・管理する活動です。
例えば、次のような活動があります。
- 温度、圧力、電流、時間などの条件管理
- 設備、治具、工具の点検
- 作業標準の遵守確認
- 初品、定期品、終品の確認
- 品質実績の監視
- 異常傾向の把握
- 基準逸脱時の処置
工程管理は、工程保証を実現する重要な手段です。
しかし、条件値を記録しているだけでは、工程保証が成立しているとはいえません。
| 項目 | 工程保証 | 工程管理 |
|---|---|---|
| 目的 | 品質を保証できる工程を設計・成立・維持・更新する | 工程を定められた管理状態に維持する |
| 対象 | 品質要求、保証特性、工程要因、保証方法、判断基準、成立確認、保証判定 | 設備条件、材料、作業、品質実績など |
| 位置付け | 製造段階の品質保証を実現する上位の仕組み | 工程保証を維持する管理手段 |
| 主な判断 | 後工程へ保証して引き渡せるか | 工程が管理基準内にあるか |
工程保証とは、工程を管理することではなく、工程を通じて品質保証責任を果たすための仕組みです。
関連記事:
工程保証を設計する基本フロー
工程保証は、設備を導入し、検査方法を決めれば完成するものではありません。
顧客、法規、設計、後工程などから受け取った要求を、保証事項、保証特性、工程要因、管理方法まで一貫した因果関係でつなぐ必要があります。
顧客・法規・設計・後工程などの要求事項
品質要求
保証事項
保証特性
工程要因
保証方法
工程管理特性
管理方法・管理基準
判断基準・判断権限・反応計画
工程成立確認
工程保証成立
日常管理・変化点管理
対象製品・管理対象範囲の保証判定
後工程へ保証して引き渡す
問題解決
工程保証更新
この流れは、一度進めれば終わる直線的なものではありません。
成立確認で能力不足や検出力不足が明らかになれば、工程要因、保証方法、管理基準などへ戻って再設計します。
要求事項
工程保証設計
成立確認
不足あり
設計へ戻る
再確認
工程保証成立
工程保証設計は、要求を帳票へ転記する作業ではなく、成立確認を繰り返しながら保証の論理を完成させる反復設計です。
品質要求・保証事項・保証特性の違い
工程保証設計では、品質要求、保証事項、保証特性を区別する必要があります。
品質要求は、製品や部品が満たすべき要求です。保証事項は、そのうち自工程が責任を持って成立させる事項です。保証特性は、その成立を具体的に確認・判定するための特性です。
例えば、スポット溶接では次のように整理できます。
品質要求
必要な接合性能を満たすこと
保証事項
自工程で溶接接合を成立させること
保証特性
ナゲット径、接合強度、溶接位置、打点数など
「接合品質を保証する」という表現だけでは、何をもって良否を判断するのかが不明確です。
自工程の責任範囲と、具体的な判定特性まで展開する必要があります。
関連記事:
工程要求・工程要因・工程管理特性の違い
保証特性を成立させるには、設備能力、加工条件、材料状態、部品精度、作業方法など、工程として満たすべき要求を明確にする必要があります。
ここでは、工程要求、工程要因、工程管理特性を区別します。
工程要求
工程要求とは、保証特性を成立させるために、工程として満たすべき条件や機能です。
例えば、スポット溶接であれば次のようなものです。
- 必要な加圧力を安定して発生できる
- 必要な電流を安定して通電できる
- 板間を適切に密着できる
- 電極位置を所定範囲に維持できる
- 電極状態を管理できる
工程要因
工程要因は、保証特性へ影響する可能性のある要素です。
- 加圧力
- 電流
- 通電時間
- 電極先端径
- 板間すき
- 材料表面状態
- 治具精度
- 設備剛性
- 作業方法
工程管理特性
工程管理特性は、工程要因の中から、品質との因果関係、重要度、管理可能性、検出可能性を踏まえて、日常管理の対象として選定した特性です。
工程要因
品質への影響・重要度を評価
管理可能性・検出可能性を確認
工程管理特性として選定
全ての工程要因を日常管理するわけではありません。
品質との因果関係が強く、管理によって品質を安定させられる要因を、工程管理特性として選定します。
ここを区別しないと、4Mで抽出した項目を全て管理対象へ並べるだけの形式的な工程設計になりやすくなります。
関連記事:
工程保証が成立している八つの条件
工程保証は、QC工程表や標準作業票が存在するだけでは成立しません。
また、製品検査の結果が規格内だったという事実だけでも不十分です。
工程保証を技術的・管理的に成立させる七つの条件と、それを現場で機能させる一つの組織条件が必要です。
1.自工程で何を保証するかが明確である
自工程が、後工程へ何を保証して引き渡すのかを明確にします。
対象には、次のような品質があります。
- 寸法
- 強度
- 気密性
- 外観
- 機能
- 耐久性
- 接合状態
- 組付け状態
- 部品の有無
- 仕様の取り違い防止
図面や規格を受け取っただけでは不十分です。
その要求のうち、自工程がどの部分を保証するのかを具体化する必要があります。
2.保証特性が明確である
保証事項を、測定・確認・判定できる品質特性へ展開します。
「品質を保証する」「接合を保証する」といった抽象的な表現だけでは、判断基準になりません。
何を確認すれば、保証事項が成立していると判断できるのかを明確にします。
3.品質を左右する工程要求と工程要因が明確である
保証特性を成立させるために、工程として満たすべき要求と、品質へ影響する要因を明らかにします。
重要なのは、4Mなどの項目を形式的に並べることではありません。
どの工程要因が、どの保証特性へ、どのようなメカニズムで影響するのか。
この因果関係を明確にする必要があります。
4.保証方法が明確である
保証特性ごとに、どの方法を組み合わせて品質を保証するかを決めます。
- 工程の成立条件による発生防止
- 設備・センサーによる工程異常検出
- ポカヨケによる誤作業防止
- 自動測定・自動判定
- 作業者による確認
- 抜取検査
- 全数検査
- 後工程で定められた機能確認
検査だけに依存せず、発生防止、異常検出、流出防止を組み合わせることが重要です。
5.工程管理特性と管理方法が明確である
保証特性を安定して成立させるために、日常的に管理する工程特性を決めます。
例えば、接合強度を保証する場合でも、量産中に毎回破壊試験を行えるとは限りません。
そこで、品質と因果関係のある加圧力、電流、通電時間、電極状態などを管理します。
併せて、次を明確にします。
- 誰が確認するか
- 何を確認するか
- どの方法で確認するか
- どの頻度で確認するか
- どの基準で判定するか
保証方法と工程管理特性は、一方向に決めるものではありません。
保証特性を直接確認できるか、工程要因をどこまで管理できるか、異常をどの段階で検出できるかを踏まえ、保証方法と工程管理特性を相互に検討します。
6.判断基準・判断権限・反応計画が明確である
測定や点検を行っていても、どこからが異常か、誰が何を判断し、基準を外れたときに何をするかが曖昧であれば、工程保証は機能しません。
少なくとも、次を明確にします。
- 正常基準
- 注意基準
- 警戒基準
- 停止基準
- 製品規格
- 生産停止を判断する人
- 製品隔離を指示する人
- 生産再開を承認する人
- 連絡すべき関係部門
- 基準逸脱時の処置内容
反応計画では、管理項目ごとに次を結び付けます。
- どの基準を外れたか
- 生産を止めるか継続できるか
- どの製品まで遡って隔離するか
- 何を確認すれば復旧できるか
- 誰が生産再開を承認するか
7.量産条件で工程成立性が確認されている
工程の成立条件や管理基準を決めただけでは、工程保証は成立しません。
実際の量産を想定した条件で、継続して要求品質を実現できるかを確認します。
主な確認対象には、次があります。
- 工程安定性
- 工程能力
- 連続生産時の品質
- 設備信頼性
- 作業再現性
- 工具・消耗品の寿命
- 材料・部品ばらつきに対する余裕
- 工程異常の検出力
- 製品不適合の検出力
- 異常時対応の実効性
初品一個が良品であっただけでは、量産工程の成立確認にはなりません。
また、工程保証の成立は、製造部門だけで自己判定するものでもありません。
設計、生産技術、品質、製造、保全などの関係部門が、それぞれの責任範囲の成立を確認したうえで判断する必要があります。
8.製造部門が判断・処置・連携できる
第1項から第7項までは、工程保証を技術的・管理的に成立させる条件です。
第8項は、その仕組みを現場で機能させるための組織条件です。
製造部門が自工程の正常・異常を判断し、必要な初動を開始できなければ、どれだけ帳票や基準を整えても工程保証は機能しません。
工程保証が成立している状態とは、製造部門が自工程の正常・異常を判断し、停止・隔離・連絡を開始するとともに、関係部門と連携して復旧・再発防止を進められる状態です。
工程成立確認と対象製品の保証判定は同じではない
工程保証では、次の三つを区別する必要があります。
工程に要求品質を実現する能力があること
現在の工程が保証状態にあること
実際に生産した対象品を保証できること
工程成立確認
工程成立確認は、工程が量産条件で要求品質を継続して実現できる能力を持っているかを確認する活動です。
確認対象には、工程能力、安定性、設備信頼性、作業再現性、検出力、異常時対応などがあります。
工程の保証状態
保証状態とは、成立確認済みの工程が、定められた適用範囲と管理基準の中で運用され、実際の製造結果を要求事項へ適合していると判断できる状態です。
設備異常、材料変更、条件逸脱、工具寿命超過などが起これば、工程能力そのものが過去に確認されていても、現在の保証状態は失われる可能性があります。
対象製品・管理対象範囲の保証判定
保証判定は、実際に生産した製品、部品、加工単位または管理対象範囲を、後工程へ引き渡せるか判断する活動です。
判断には、次の情報を用います。
- 実際の製造条件
- 工程管理特性の確認結果
- 製品品質の確認結果
- 設備・工具・材料の状態
- 異常・変化の履歴
- 影響範囲の確認結果
- 対象品の処置結果
工程成立確認
工程に継続生産能力があるか確認する
保証状態の維持
成立した条件内で工程を運用する
保証判定
実際に生産した対象品を引き渡せるか判断する
工程能力が成立していても、条件逸脱中に生産した対象品をそのまま保証できるとは限りません。
反対に、製品検査が規格内でも、工程条件が保証範囲外であれば、追加確認なしに保証判定できない場合があります。
工程保証には適用範囲がある
工程保証は、どのような状態でも無条件に有効なものではありません。
成立確認を行った製品、設備、材料、条件、作業方法、環境などの範囲内で有効です。
例えば、次の前提が変化した場合、過去の成立確認をそのまま適用できない可能性があります。
- 製品仕様
- 材料仕様
- 部品精度
- 設備・治具仕様
- 工具や消耗品
- 生産速度
- 作業方法
- 作業者構成
- 環境条件
- 検査・測定方法
工程保証は、成立確認を行った条件の範囲内で有効です。その前提が変わる場合には、品質への影響を確認し、必要に応じて工程保証を再成立させなければなりません。
変化点管理は、工程保証の適用範囲が変わっていないかを確認する活動でもあります。
関連記事:
異常と不適合の違い
工程保証では、「異常」と「不適合」を区別します。
異常
異常とは、工程が定められた正常状態や管理状態から外れたことです。
例えば、設備条件の逸脱、工具寿命超過、設備・治具の異常、標準作業からの逸脱などです。
不適合
不適合とは、製品、部品、加工結果が要求事項を満たしていないことです。
例えば、寸法規格外、強度不足、部品欠品、外観基準外などです。
工程異常が発生しても、製品が直ちに不適合になるとは限りません。
しかし、製品が規格内であっても、工程異常を放置したまま生産を続けてよいとは限りません。
工程異常が発生した場合は、製品が規格内であっても、保証状態が確認できるまで影響範囲を管理する必要があります。
工程保証を守る三つの防御
工程保証では、次の三つの防御を組み合わせます。
発生防止
異常検出
流出防止
発生防止
要求品質が安定して成立する設備、治具、工具、材料、作業条件を整え、不適合を発生しにくくします。
異常検出
設備状態や工程条件の変化を、不適合が拡大する前に検出します。
流出防止
異常や不適合を検出した後に、生産や搬送を止め、対象製品を隔離して、後工程への流出を防ぎます。
異常を検出できても、停止、隔離、影響範囲の特定につながらなければ、流出防止は成立していません。
関連記事:
設備復旧と品質保証復旧は同じではない
異常発生後に設備が再び動くようになっても、それだけで生産を再開してよいとは限りません。
設備が動くようになった
工程の成立条件が回復した
対象製品を保証できる
保証状態を回復するには、少なくとも次を確認します。
- 異常原因が除去されている
- 工程条件が正常範囲へ戻っている
- 設備、治具、工具が正常である
- 復旧後の初品品質が確認されている
- 異常発生時の影響範囲が特定されている
- 対象製品の隔離・確認・処置が完了している
- 生産再開の承認が得られている
生産再開は、設備が動くようになった時点ではなく、工程の成立条件が回復し、影響範囲と対象品の処置が明確になり、再び品質を保証できると判断した時点で行います。
異常時の基本的な流れは、次のとおりです。
- 異常を認識する
- 設備・工程を止める
- 対象製品を隔離する
- 関係者へ連絡する
- 影響範囲を特定する
- 原因を除去する
- 工程の成立条件を確認する
- 対象品の処置を完了する
- 保証状態の回復を判断する
- 承認後に生産を再開する
関連記事:
工程保証を設計・維持・更新する四つの活動
工程保証は、一度設計して終わるものではありません。
製造部門では、初期管理、日常管理、変化点管理、問題解決を通じて、工程保証を設計・維持・更新します。
工程保証の設計・成立
└ 初期管理
工程保証の維持・運用
├ 日常管理
└ 変化点管理
工程保証の見直し・更新
├ 問題解決
├ 変化点管理
└ 必要に応じて再初期管理
初期管理
新製品、新工程、新設備、工程変更などの初期段階で、工程保証を設計し、量産条件で成立させます。
日常管理
成立した工程条件と管理状態を、日々の量産の中で維持します。
変化点管理
人、設備、材料、方法、環境などの変化によって、工程保証の適用範囲や成立状態が崩れていないかを確認します。
問題解決
異常や不適合の原因を明らかにし、恒久対策を工程へ反映して、工程保証を更新します。
工程保証を更新するとは何か
異常品を手直しし、選別して出荷できたとしても、それだけでは工程保証を更新したことにはなりません。
工程保証を更新するとは、問題の原因を明らかにし、再発防止の内容を工程の仕組みへ反映することです。
反映先には、次があります。
- 設備
- 治具・工具
- 工程条件
- 管理基準
- 標準作業
- 点検方法
- 反応計画
- 異常処置基準
- 教育内容
造らない
見逃さない
流さない
繰り返さない
「繰り返さない」は第四の検査ではありません。
問題解決を通じて、工程保証そのものを強くする更新活動です。
工程の成立幅とロバスト性
量産工程では、一つの設定値で良品ができるだけでは不十分です。
設備、材料、部品、工具、作業者、環境などの通常ばらつきがあっても、要求品質を維持できる成立幅が必要です。
成立幅が狭い工程は、わずかな条件変化で不適合になります。
一方、通常想定される変動があっても品質が崩れにくい工程は、ロバスト性が高い工程です。
工程能力は、現在の工程ばらつきと製品規格との関係を見る指標です。
ロバスト性は、条件が変動しても品質が崩れにくい工程構造になっているかを見る考え方です。
工程保証では、標準値一点で良品ができるかだけでなく、通常のばらつきに対して十分な成立幅があるかを確認する必要があります。
関連記事:
工程保証は製造部門だけで完結するものではない
製造部門は、自工程で発見した全ての問題を単独で解決できるわけではありません。
例えば、次の問題は関係部門との連携が必要です。
- 製品設計上の問題
- 図面・公差の問題
- 設備能力不足
- 治具構造の問題
- 材料・部品品質の問題
- 検出設備の能力不足
- 仕入先工程の問題
しかし、製造部門が単独で解決できないことと、工程保証責任がないことは同じではありません。
製造部門には、少なくとも次の責任があります。
- 保証できない状態を見逃さない
- 必要に応じて生産を止める
- 対象製品を隔離する
- 発生事実と工程状態を明確にする
- 責任部門へ問題をつなぐ
- 復旧条件を確認する
- 対策後の工程状態を確認する
製造部門の工程保証責任には、問題を隠さず、止め、隔離し、事実を明確にして、関係部門と連携しながら解決へつなげることまでが含まれます。
工程保証を支える主な成果物
工程保証では、さまざまな帳票や文書を使用します。
ただし、帳票を作成すること自体が目的ではありません。
| 役割 | 主な成果物 |
|---|---|
| 工程リスクを予測する | 工程FMEA |
| 管理項目を工程順に展開する | QC工程表 |
| 重要特性・管理方法・反応計画を整理する | コントロールプラン |
| 作業を再現可能にする | 標準作業票 |
| 異常時の行動を統一する | 異常処置基準 |
| 通常管理への移行可否を判断する | 初期管理解除判定 |
工程FMEAで抽出したリスクが、QC工程表やコントロールプランへ反映され、標準作業票や異常処置基準まで一貫して展開されていることが重要です。
工程保証が成立していない工程の典型例
| 見かけ上の管理 | 工程保証として不足している点 |
|---|---|
| 条件値を毎日記録している | 品質との因果関係や管理基準の根拠がない |
| 完成品を検査している | 発生防止や工程異常検出が弱い |
| 初品一個を確認している | 連続生産時の安定性が確認されていない |
| 異常品を手直ししている | 影響範囲の特定や再発防止がない |
| センサーで異常を検出している | 設備停止や製品隔離につながっていない |
| 条件変更後に製品だけ確認している | 工程能力や成立幅を再確認していない |
| 設備を修理して生産再開している | 保証状態の回復や対象品の処置が確認されていない |
| 対策を実施している | 標準・管理基準・反応計画が更新されていない |
| 管理者だけが異常判断できる | 現場が停止・隔離・連絡を開始できない |
工程保証では、「何かを管理しているか」ではなく、次を確認しなければなりません。
その管理によって、なぜ要求品質を保証できるのか。
自工程の工程保証を確認する三つの問い
自工程の工程保証を確認する場合、まず次の三つを問い直します。
- 自工程は、後工程へ何を保証するのか
- その品質を、どの工程要因と確認方法によって保証するのか
- 保証できない状態を、どの基準で判断し、どのように止め・隔離・復旧するのか
この三つは、次の基本構造に対応しています。
保証対象
保証方法
異常時の統制
三つ目の問いでは、さらに次を具体的に確認します。
- どの状態を異常と判断するか
- 誰が生産を止めるか
- どの製品まで遡って隔離するか
- 何を確認して保証状態を回復するか
- 誰が生産再開を承認するか
この三つに、現場の事実と技術的根拠を用いて答えられない場合、工程保証には未整備な部分が残っている可能性があります。
工程保証カテゴリ全体の構造
要求事項
品質要求
保証事項
保証特性
工程要求・工程要因
保証方法
工程管理特性
管理基準・反応計画
工程成立確認
工程保証成立
日常管理
変化点管理
異常管理
対象製品・管理対象範囲の保証判定
後工程へ保証して引き渡す
問題解決
工程保証更新
この流れは一方向ではありません。
変化や異常、問題解決によって工程の成立条件や管理方法が変われば、必要に応じて工程保証設計や成立確認へ戻ります。
設計
成立
維持
変化・異常
保証保留
見直し・復旧
再成立
保証再開
この循環を継続することが、工程保証です。
まとめ|工程保証は、保証できない製品や状態を後工程へ渡さない仕組み
工程保証は、完成した製品を検査し、良品だったことを確認するだけの活動ではありません。
顧客、法規、設計、後工程などから受け取った要求を品質要求へ展開し、自工程で安定して実現できる工程の成立条件、管理基準、確認方法を定めます。
そのうえで、量産条件で工程の能力を確認し、日常管理と変化点管理によって保証状態を維持します。
実際に生産した製品については、製造条件、確認結果、異常履歴などに基づいて、後工程へ引き渡せるかを保証判定します。
異常が発生した場合には、生産停止、製品隔離、影響範囲の特定を行い、設備が動くようになっただけでなく、工程の成立条件と品質保証状態が回復したことを確認してから生産を再開します。
工程保証の論理は、次の五つの問いに集約できます。
- 何を保証するのか
- 何によって保証するのか
- 工程が成立していると、どう判断するのか
- 実際に生産した対象品を、どう保証判定するのか
- 保証できない場合に、どう止め・隔離・復旧・更新するのか
工程保証で最も重要なのは、帳票の数や検査項目の多さではありません。
なぜ、この工程から出る製品は要求品質を満たしていると判断できるのかを、工程の成立条件と確認結果に基づいて説明し、保証できない状態を適切に管理・処置できることです。
そして、保証できない状態になった場合には、製造部門が自ら異常を認識し、生産停止、製品隔離、関係者への連絡を開始しなければなりません。
そのうえで、設計、生産技術、品質、保全、調達などの関係部門と連携し、工程を復旧し、恒久対策を設備、条件、管理基準、標準作業、反応計画へ反映します。
工程保証とは、要求品質を保証できる工程を設計・成立確認・維持・更新し、実際に生産した製品を保証判定し、保証できない製品や状態を後工程へ渡さないための仕組みです。
工程保証とは、工程を管理することではなく、工程を通じて品質保証責任を果たすための仕組みです。
