統計的手法

統計的な品質管理手法「直交多項式」とは?

統計的手法 直行多項式とは

そもそも多項式とは?(同意多項式の基本的な概念について)

まず、多項式と聞くと、高校数学での因数分解や連立方程式の解を求めるための式を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、ここではそのような手法を「同次多項式」と呼んで区別します。同意多項式と同次多項式は、異なる目的で使用される別の手法です。
同意多項式は、品質管理において、プロセスの性能評価や制御に利用される手法です。製造業などの分野において用いられます。一方で同次多項式は、与えられた多項式の解を求めるための手段で、数学において使われます。

同意多項式そのものは、一般には最小二乗法によって求められます。最小二乗法とは、与えられたデータ点と、ある関数の値との差の二乗和を最小化することによって、最も近い関係式(=同意多項式)を求める手法です。

同意多項式は、実験データや観測値の解析によく使われます。例えば、ある製造工程において、パラメータと製品の寸法との間の関係を表す式を求めるために、同意多項式を用いることができます。
製品の寸法をy、製造プロセスのパラメータをx1とx2とすると、同意多項式は以下のような式で表されます。

【y = a + bx1 + cx2 + dx1x2】

aからdまでの係数は、最小二乗法によって求められます。同意多項式が求められれば、寸法yが最も望ましい値になるようにx1とx2を調整するだけです。

同意多項式を用いた品質管理の考え方(どのように多項式を適用するのか)

製造業における品質管理においては、製品の品質に影響を与える「要因」を明確にする必要があります。そして、その要因が与える影響をコントロールすることによって、品質改善を行います。
ここでの同意多項式の役割は、製品の品質に影響を与える要因を数学的に表現することです。要因の種類には、温度、圧力、材料の質、機械の調整など、様々なものがあります。これらの要因を数学的な式で表現し、要因と品質の関係を分析するために同意多項式が用いられます。

品質管理に同意多項式を用いるメリットには、おもに以下の3つがあります。

  • パターンの発見
    同意多項式を使用すると、品質管理において特定のパターンを発見することができます。例えば、製品の生産速度と品質との相関関係が明らかになれば、不良品の発生を抑えつつ生産速度は最大化することができます。
  • 予測の精度向上
    品質管理においての予測精度を向上させることもできます。例えば、同意多項式を使用して、ある材料が製品品質にどのような影響を与えるかを予測できれば、最適な材料が何かを予測するなど、適切な品質改善策を見つけることができます。
  • 可視化
    同意多項式を使用すると、品質管理におけるデータを可視化することができます。データの傾向やパターンを視覚的に把握できるようになるため、要因ごとの重要度を比較することができます。

3.直交多項式を用いた品質改善の手順(多項式を用いた品質改善の手順)

直交多項式を用いた品質改善は、以下の流れで行います。

  • データの収集
    まず、改善したい品質の指標に関するデータを収集します。この際、データ量は多ければ多いほうが望ましく、正規分布に従っていることが望ましいです。
  • データの解析
    収集したデータを解析し、平均値や分散、偏差などの統計的指標を求めておきます。
  • 直交多項式による近似
    選択した直交多項式を用いて、データを近似します。近似には、最小二乗法(場合によっては最尤推定法)を用いることが一般的です。この際、適切な次数の直交多項式を選択することも重要です。
  • 近似の評価
    近似されたデータを評価し、元のデータとの誤差を求めます。誤差が大きい場合には、より適した直交多項式を検討するなどの改善を繰り返します。
  • 品質改善の実施
    近似されたデータを元に、品質改善の施策を実施します。改善施策は、データの収集から解析、直交多項式による近似までの手順を繰り返しながら、徐々に改善を進めていくことが望ましいです。
  • 品質の監視
    改善施策を実施した後は、品質の監視を継続的に行います。これは、改善効果が持続するように管理するためで、必要に応じて改善施策を修正したり、改善施策の強化を行うことが重要です。

多項式の注意点

多項式は、プロセス性能評価の有効な手法ですが、いくつかの注意点があります。以下に、特に気を付けておくべきポイントを列挙するので、留意しておきましょう。

  • データ点の分布に注意
    同意多項式は、データ点集合に対して最小次数の多項式を求める手法であり、データ点の分布によっては適用できない場合があります。例えば、等間隔にデータ点が並んでいる場合において高次の同意多項式を使うと、近似誤差が大きくなる可能性があります。
  • ノイズの影響に注意
    同意多項式は、ノイズが大きい場合には適用できません。この場合は、事前にノイズを除去するなどの前処理が必要となります。
  • データ点数に注意
    データ量は多い方が望ましい一方で、多項式ではデータ点数が多くなると、計算量が膨大になることがあります。そのため、計算負荷が大きい場合には、適切なデータ点のサンプリングやデータの小規模化を行うなどの対策が必要です。
  • パラメータ選択の重要性に注意
    多項式には多数のパラメータがあるため、適切なパラメータ選択が必要です。そのてめ、事前に設定した複数のパラメータ候補を全て試して、最も有効な、良い性能を示したパラメータを選別しておくなどの事前準備をしておきましょう。試すパラメータの候補が多い場合には計算量が膨大になることがあるので、その点にも留意しておきましょう。

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