品質管理

品質改善の考え方「ヨコテン(横展開)」とは?

品質改善の考え方 ヨコテン

ヨコテン(横展開)とは、企業において、ある部署や生産ラインなどで成功した改善策を、他の部署や生産ラインにも展開することを指します。そのため、ヨコテンは、企業内での改善に重要な役割を担っています。

ヨコテンは、主に品質改善や生産性向上に利用されます。例えば、ある工場での製造ラインにおいて、ある部分で生産効率を大幅に向上させる改善策が見つかった場合、その改善策を他のラインでも導入することにより、全体の生産性を向上させることができます。また、品質改善においては、ある製品での不具合が発生した場合、その原因を解析し、改善策を見つけ出した後、他の製品にも同じ問題がないかをチェックすることが重要です。

ヨコテンの実施にあたっては、各部署や生産ライン間の情報共有やコミュニケーションが欠かせません。また、改善策の導入においては、現場の意見を十分に取り入れ、現場の声を反映させることが重要です。

ヨコテンは、企業内での改善活動において非常に重要な役割を担っています。企業全体で改善活動を進めることで、品質向上や生産性の向上を実現し、競争力の強化につながります。

ヨコテン(横展開)とは?

例えば、ある工場の生産ラインで生産される製品に不良品が発生したとします。この場合、横展開の手法を用いると、他の生産ラインや部門にも同じ問題が発生していないかを調査することで、同じ不良品が発生しないようにすることができます。

具体的には、以下のような手順で進めます。

  • 不良品が発生した生産ラインの問題点を洗い出す。
  • 同じ製品を生産している他の生産ラインや部門にも同様の問題がないか調査する。
  • 調査結果を分析し、問題の共通点を把握する。
  • 共通点について改善策を検討し、他の生産ラインや部門にも適用する。

自動車製造ラインで溶接剥がれが発生した場合

以下のような手順でヨコテンを行うことができます。

  1. 溶接剥がれが発生した製造ラインにおいて、その溶接剥がれの原因を特定する。例えば、パネル材質の違いや特殊チップ形状を使った溶接、分流していた理、冷却配管の詰まりのため、溶接剥がれが発生していることが分かった。
  2. 同じ要領で生産している他の製造ラインでも、溶接剥がれが発生していないか調査する。
  3. 調査結果を分析し、共通点を把握する。
  4. 改善策として、溶接の工程を見直し、設備の改修や作業員の研修を行う。
  5. 改善策を他の製造ラインにも適用し、同様の問題が発生しないようにする。

このように、横展開の手法を用いることで、一度解決した問題を他の生産ラインや部門にも適用し、同じ問題が再び発生しないようにすることができます。

横展開と水平展開の違いとは?

「横展開(ヨコテン)」と「水平展開」は、いずれも改善手法の一つであり、似たような意味合いを持つ言葉です。しかし、細かいニュアンスが異なります。

横展開は、ある一つの改善を、同じ生産ライン内の他の部署に展開することを指します。例えば、ある部署での改善が他の部署にも適用可能であれば、同じ改善を展開することで全体の効率化や品質向上を図ることができます。

一方、水平展開は、同じ業務プロセスを異なる業務領域や部門に適用することを指します。つまり、同じプロセスを異なる分野に適用することで、効率化や品質向上を図ることができます。

例えば、ある企業での改善によって生産ライン内の品質向上が図られた場合、横展開では、同じ生産ライン内の他の部署にも同じ改善を適用し、品質向上を全体に広げます。一方、水平展開では、同じ改善を異なる業務領域にも適用し、全体の生産性や品質向上に貢献します。

また、具体的な例としては、横展開では、ある工程での改善が他の工程にも適用できる場合があります。例えば、車の組み立てラインにおいて、ある工程での改善が他の工程にも適用できる場合、同じ改善を展開することで、全体の効率化や品質向上を図ることができます。

一方、水平展開では、同じプロセスを異なる業務領域に適用することができます。例えば、ある会社の経理部門での業務プロセス改善が、人事部門にも適用できる場合、同じプロセスを人事部門に適用することで、全体の効率化や品質向上を図ることができます。

ヨコテンのメリット

以下に、ヨコテンのメリットと具体的な例をいくつか紹介します。

生産ライン間の情報共有がスムーズになる

例えば、ある工場で生産された製品の品質不良が発生した場合、その原因をすぐに特定して改善することが必要です。ヨコテンを行うことで、他のラインで同様の不具合が発生した場合、すでに改善した方法を共有することができ、迅速な対応が可能になります。

具体例を挙げると、例えばある自動車メーカーの製造工場において、ある特定の生産ラインで品質不良が頻発していました。不具合原因を突き止めるための解析を行ったところ、問題は他のラインで使用されている同一の機器に起因するものであることが分かりました。

この結果を共有し、他のラインでも同じような不具合が発生しているかどうかをチェックし、必要に応じて改善を行うことで、全体の品質改善につながりました。

ヨコテンを行うことで、生産ライン間の情報共有がスムーズになり、品質不良の原因特定から解決までの時間を大幅に短縮することができます。

生産ライン間の競争意識が促進される

ヨコテンを行うことで、生産ライン間の競争意識が促進され、改善活動による生産効率の向上が期待できます。例えば、ある工場で生産された製品の不良率が低下した場合、他のラインもそれに追随するように努力し、改善の競争が生まれることで全体的な品質向上につながります。

例えば、ある自動車メーカーの工場で、車両の製造に必要な部品を製造する生産ラインが複数あります。あるラインで、品質向上のために改善活動を行い、不良率が低下しました。この改善活動の成果を他のラインにも共有し、他のラインでも同様に改善活動を行うよう促すことで、他のラインも改善に取り組み、品質向上に繋がります。

また、あるラインが改善に成功した場合、他のラインも追随するようになるため、ライン間の競争意識が生まれます。各ラインが改善活動に取り組むことで、全体的な生産効率が向上し、コスト削減にも繋がります。このように、ヨコテンを行うことで、各ラインの生産性や品質向上につながり、全体的な効率が向上するメリットがあります。

全体最適が達成される

ヨコテンを行うことで、各ラインでの改善が全体最適につながることが期待できます。例えば、あるラインでの改善により、全体の生産効率が向上した場合、他のラインでも同様の改善を行うことで、全体的な生産性の向上が実現されます。

例えば、ある工場の生産ラインにおいて、ある工程で発生していたボトルネックを解消するための改善が行われたとします。この改善が実行されたラインだけではなく、同じ工程を持つ他のラインにもノウハウを共有し、同様に改善を行うことで、全体の生産性が向上します。

また、同じ工程を持つ他の工場にも同様の改善を広げることができるため、全社的にも生産効率の向上が期待できます。これにより全体最適が達成されることになります。

以上のように、ヨコテンには生産ライン間の情報共有の促進や競争意識の向上、全体最適の実現など、多くのメリットがあります。

ヨコテンの実践方法

ヨコテンを実践するためには、以下の手順やポイントがあります。

実践方法①:成果を出した改善点を共有する

改善点が見つかったら、その改善点を他の生産ラインや部署と共有することが大切です。例えば、ある工程での改善によって、生産性が向上した場合は、その改善点を他の工程やラインでも適用することができます。これにより、より大きな効果を期待することができます。

例えば、ある製品の生産ラインで、製品の品質不良率が高いことが判明した場合、その原因を突き止めて改善策を実行し、品質不良率を改善したとします。その改善点は、その生産ラインだけでなく、同じ製品を生産する他の生産ラインや他の部署にも共有することができます。

こうすることで、全体的な品質向上につながるため、その製品の全ての生産ラインや部署で改善点が適用されるようにすることが重要です。共有する手段としては、報告書や会議、工場内報などが挙げられます。

実践方法②:改善点をシンプルに伝える

改善点を伝える際には、できるだけシンプルに伝えることが重要です。簡単に伝えることで、他の部署でもスムーズに改善点を取り入れることができます。また、改善点を数字で表現することも効果的です。数字で表現することで、改善の効果を具体的に示すことができ、共感を得やすくなります。

例えば、製造工程の不良率を改善した場合、その改善率を数字で表現することができます。具体的には、改善前の不良率が10%だった場合、改善後に2%にまで低下したとすると、改善率は80%になります。

改善前の不良率をA、改善後の不良率をBとすると、改善率は以下の式で計算されます。

改善率の計算式

改善率 = (A - B) / A × 100%

例えば、改善前の不良率が10%で改善後に2%になった場合、改善率は以下のように計算されます。

改善率 = (10 - 2) / 10 × 100% = 80%

このように数字で表現することで、改善の効果を明確に示すことができます。

また、改善点をシンプルに伝える場合には、具体的な例を挙げることも有効です。例えば、改善点が「作業の手順を見直す」という場合には、具体的にどのような手順を見直したのか、どのような効果があったのかを説明することで、共感を得やすくなります。

実践方法③:実行の責任を明確にする

改善点を共有した後は、実際に改善を実行する責任を明確にすることが大切です。責任者を決定し、納期や費用などの具体的な条件を決めることで、改善点を確実に実行することができます。

具体例としては、ある生産ラインでの品質不良の改善点が共有された場合、改善点を実行するための責任者を決定し、改善点を実行するためのスケジュールを作成することが挙げられます。

また、改善点を実行するために必要な予算や人員を確保し、改善点を実行するための条件を整えることも重要です。改善点を実行する際には、具体的な責任者を決定し、その責任者が改善点を実行するためのスケジュールや予算、人員などを管理し、改善点を確実に実行することが求められます。

ヨコテンの注意点

ヨコテンを実践する上での注意点や落とし穴をいくつか紹介しましょう。

注意点①:目標が明確でない場合、うまくいかないことがある

ヨコテンを実践する場合、改善の目的を明確に設定することが重要です。どのような問題を解決するために、どのような成果を得ることが目的なのかをしっかりと定め、その目標に向けてチーム全員が協力しましょう。

例えば、ある工場で作業効率の向上を目的としてヨコテンを実施する場合、具体的な目標として「作業時間を10%削減する」という目標を設定すると良いでしょう。

例えば、ある工場での改善活動で、複数の問題点が見つかった場合に、改善の目的を明確に設定することが大切です。品質不良の原因として、部品の納品遅延や製造工程の不備、作業者のミスなど複数の要因がある場合、どの問題に対して改善を行うのかを明確にし、その改善点に集中することが必要です。

改善の目的を明確にすることで、チーム全員が目標に向かって協力することができます。また、目標が明確であれば、改善の成果を評価することも容易になります。

注意点②:横展開先の状況を事前に確認する必要がある

ヨコテンを実践する際には、改善を展開する先の状況を事前に把握しておくことが重要です。例えば、改善を展開する先の現場が異なる場合、その現場の生産性や品質管理の方法について事前に調査する必要があります。

例えば、ある工場での品質改善を他の工場にも展開する場合、現地の品質管理体制や生産ラインの状況、現在の課題などを調査することが必要です。現地のスタッフや責任者にヒアリングを行い、改善のノウハウを共有することができます。

また、異なる工場での改善展開の場合、生産ラインの違いによって、適用できる改善策が異なる場合もあります。そのため、改善展開の前には現地の状況を十分に把握することが大切です。

注意点③:マネジメントの意識とサポートが必要

ヨコテンを成功させるためには、マネジメント層の意識とサポートが必要です。改善活動に必要なリソースや環境を提供し、ヨコテンによる改善が企業の方針に即していることを示すことが重要です。例えば、ヨコテンによる改善活動に必要な予算や人員を割り当て、改善活動を推進する役割を担うマネジャーを選任することが必要です。

具体例として、ある製造工場で品質改善のためにヨコテンを実施することを決定したとします。しかし、マネジメント層からの意識やサポートが不十分だったため、改善に必要な予算や人員が割り当てられず、改善活動が進められないという状況が発生するかもしれません。

このような場合、改善活動の推進に必要なリソースや環境を提供し、改善活動を積極的に支援することが必要です。また、ヨコテンによる改善が企業の方針に即していることを明確に示すことで、マネジメント層の理解と支援を得ることも重要です。

注意点④:成果を測定し、フィードバックを繰り返す

ヨコテンを実践する上で、改善の成果を定量的に測定し、フィードバックを繰り返すことが重要です。これにより、改善の効果を確認し、次の改善活動に反映することができます。例えば、作業時間の削減を目標とした場合、実際に作業時間がどの程度削減できたのかを定量的に測定し、フィードバックを繰り返すことが必要です。

例えば、ある工場で作業時間を削減するための改善活動を行った場合、その成果を定量的に測定する方法として、作業時間の計測やワークショップを実施することが挙げられます。作業時間の計測により、改善前と改善後の作業時間の差を算出することができ、それに基づいて改善の効果を評価することができます。

また、ワークショップを実施することで、改善点の評価や改善の必要性を再確認することができます。さらに、定期的に改善の成果を評価し、フィードバックを繰り返すことで、改善の効果を最大化することができます。

最後に

今回の記事では、「ヨコテン(横展開)」とは何か、そのメリットや実践方法、注意点、そして実践例について詳しく解説してきました。
ヨコテンの最大のメリットは、一つの改善が成功すれば、他の部門や生産ラインにも波及し、全体的な効果が高まることです。具体的には、ある生産ラインでの改善により品質不良が減少し、同時に他の生産ラインでも品質改善が行われ、全体的な品質向上に繋がるといった効果が期待されます。

実践方法としては、まずは目的を明確にし、改善の順序や手順を決定し、実行に移すことが大切です。また、成功事例や失敗事例から学び、改善のポイントを見つけ、自社に合った改善計画を立てることも重要です。

しかし、注意点もあります。

例えば、改善目的が曖昧だったり、スキル不足のため改善が行われなかったり、改善後の検証やフィードバックが不十分だったりすると、改善効果が得られなかったり、逆に悪化してしまったりすることがあります。

実践例としては、製造業やサービス業、医療など様々な業種でヨコテンが取り入れられています。例えば、ある製造業では、一つの工程で行われた改善が、他の工程にも波及し、短期間で品質改善が行われ、コスト削減にも繋がったという事例があります。

以上のように、ヨコテンは単に一つの改善を行うだけでなく、全体的な改善効果を狙える方法です。

しかし、実践には目的の明確化や実行計画の策定、検証やフィードバックなど、多くのポイントがあります。企業や部門に合った改善計画を立て、効果的なヨコテン実践を行い、生産性向上や品質改善に繋げることが重要です。

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