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新製品立上げ:試作段階における製造部門4つの役割

2017年4月6日

新製品立上げ:試作段階における製造部門4つの役割

本日は『新製品立上げ:試作段階における製造部門4つの役割』をお伝えいたします。

品質保証における製造部門の役割(試作段階)

新製品立上げ時、試作段階での製造部門の品質保証における役割・目的は何でしょうか?

この試作段階で、図面形状が現物になる最初のタイミングです。今までのサイマルテニアス・エンジニアリング(SE)活動で、検討してきた図面形状を試作製作することで、図面では判断が難しい板合わせ部位等の構造確認、形状確認、設備仕様の検討を行います。サイマルテニアス・エンジニアリング(SE)活動とは、戦略的にコストを下げるために、図面に線を描く前から生産技術や製造部門が設計に参加する活動のこと。

1.工程能力の確認

4M(人・設備・作業方法・物)をコントロールする

工程能力は、工程の平均値や工程の分散安定度のデータによって、工程が完全にコントロールできていれば工程能力は統計的数値CPやCPKを使って表すことができます。

製造業の仕事は、4M(Man人・Machine設備・Method作業方法・Material物)から構成されています。良い製品を造るためには、これら4つの構成要素を適切にコントロールすることが不可欠です。製造工程の工程能力は、造った製品の良さを表すQDC(品質・納期・コスト)の3点で評価されます。この工程能力を決定しているのは4M(Man人・Machine設備・Method作業方法・Material物)です。すなわち、検査結果から工程能力が足りてないと判断された場合は、その原因は4Mが適切に管理されていなかったことになります。4M管理は、すべての基本なのです。

設備計画の段階と実際にモノを造る製造段階では、製品品質のバラツキに影響を与える要因である4Mが全く同じであることは、殆ど考えられません。設備製作や工程の造り込みで、工程能力の実力値自体が変わっている可能性があるため、データ取りも含めて、工程能力の再検証が不可欠です。工程能力指数の確認のポイントは、下記の4点です。

工程能力指数の確認4つのポイント

【①:正しいデータのサンプリング】

母集団の性質を正しく推定する目的で、母集団よりサンプルをとることをサンプリングといい、サンプルを取るには、全体からまんべんなくサンプリングすることが大切です。

【②:データの分布・形の把握】

統計の対象とする集団の属性を階級に区切って階級別の出現頻度をグラフにしたものが分布図(ヒストグラム)である。このヒストグラムは、データの分布状況を視覚的に把握するのに役立つ。

【③:規格値中心とデータ中心のズレの有無確認(有りの場合:Cpkでの確認)】

分布の中心についての特性値を代表値といい、最頻値、中央値、平均値がある。正規分布であれば左右対称なのでこれらは一致するが、一致しないものもある。
現実の統計データでは、正規分布で近似できる場合でも厳密に一致する訳ではないので、データの中心についての情報をこれらのズレから把握することができる。

【④:サンプリングデータ数の補正】

比較するデータ数が違う場合、データ数を基準化(=バラツキの補正)した上で、優劣を判断する必要があります。

2.製品品質の維持・管理手段の確認

作業やり易さ(作業性)の確認

ここでは、生産準備担当から現場のへの引継ぎという観点で説明します。多くの企業でも同じようなことがいえるのですが、作業標準書の引継ぎ、受け取り時、生産準備担当が作成したものを丸呑みになっていす。現場責任者の方々による紙面上での作業要領の確認のみで終わっていることが多いと感じます。

より良い製品を造るために大切なことは、以下の2点です。

  • 現場責任者が、“この内容で受け取れるか?”を、現場の立場で適正を判断すること
  • 実際にモノを造るオペレーター自身が確認に参加し、やりながら確認すること

その判断をする際のポイントとしては、以下のような点があります。

  • 実際の製造タクトとの整合性
  • 作業の良否が分かりやすい内容
  • 「なぜそうなのか?」作業要領・手順の必要性・重要性の記述

その作業指示通りに作業を行わなかった場合、どのような事態になるのか?、製品の要求特性にどんな影響を及ぼすか?が理解できるようになっていないといけません。

QC工程表、検査法の確認

ここでは、現場主体という観点での確認のポイントを説明します。

QC工程表とは、製品・サービスの生産・提供に関する一連のプロセスを図表に表し、このプロセスの流れにそってプロセスの各段階で、誰が、いつ、どこで、何を、どのように管理したらよいかを一覧にまとめたものです。量産の際、自工程に原材料や部品が搬入され、製品の完成して出荷までの製造プロセスにて、管理の方法や管理のための道具・ツールで、実際に管理できるか?できないか?適切であるかの確認をしていますか?

※QC工程表については『製造業におけるQC工程表の基本を参照ください。

3.作業指導と習熟度の確認

「作業指導」について

  • 作業者への指導を実施する場合、何にポイントを置かれていますか?
  • 作業手順を教えるのみに留まっていませんか?

作業習熟度を高めるために指導するポイントは、以下の4点です。

【①:指導者が、指導内容を理解・身につけていること】

他人に教えるという場合には、必須の要件で、紙面上のみで理論的に理解しているつもりだけでは、ポイントも絞り込めず、メリハリのない教育になりがちです。教える側の人間が、すべてを理解し身につけていることが大前提です。

【②:指導時に、口頭だけでなく、要領書で写真なども使用して具体的に指導すること】

ベテラン指導者が内容を熟知している場合にありがちですが、教える側に誤った思い込み、ポイントのズレが生じる場合もあります。要領書を基に現地現物で直接、現場工程での指導が大切です。

【③:その手順で行う意図・背景・目的を作業者に理解してもらうこと】

作業要領の手順通りに作業が行われないと、どのような影響があるのか?ということを作業者に理解してもらうことが重要です。なぜなら、作業要領を遵守しないと、不良率に大きな影響を及ぼすからです。

【④:多種混流生産の中の少量種への作業対応・配慮も説明すること】

製品種類の中で、たまにしか流れてこない少量生産のものは、作業を間違える可能性が高いです。ですので、少量生産の製品に対する作業指導が意外にできていないのが現状です。

「習熟度」について

  • 作業者の習熟度は、どのような方法で実施されているか?
  • 決められた時間内に作業ができるか?できないか?の確認だけで終わってないか?

作業習熟度の確認方法としては、以下の4つがあります。

  1. 完成した製品特性による作業結果の確認
  2. 現地現物での現場観察による作業手順の遵守の確認
  3. 決められた時間内に作業完了ができているかの確認
  4. ヒヤリングで作業者へ要領書記載内容の理解度の確認

4.設計品質に適合した製品品質の確認

初品評価による設計品質との比較検討(正寸志向のモノ造り)

【設計品質との比較】

  • どのような結果になれば、設計品質が満足できていると判断しますか?
  • N=1での確認、平均値での確認、評価結果が全て基準を満たしていたので問題なし!といった判断をしていることはないでしょうか?

ポイントは、以下の3つの観点が考慮されているかです。

  1. 測定精度
  2. データの分布の形
  3. データ数の補正

【市場要求品質の視点での確認】

そして、この試作段階において製造品質の確認として必要なことは、単なる図面との整合性のみだけでなく、お客さま視点で顧客ニーズにマッチしているか?の第3者的なチェックが重要です。例えば、量産製品については、全て一般評価検査を実施して、基本性能に問題ないか?をあなたがお客さまの立場・視点で観るということです。

逆に言えば、図面通りのモノができているから、、、社内の基準を満足しているから、、、といったことを理由として、本来NGな製品を曖昧にして、止めることなく、そのまま次のステップに流してしまうようなことがあってはなりません。

不具合対策の推進フォロー

  • 工数がないとの理由で、恒久対策できずに応急処置的対応になっていませんか?
  • 効率が良いとの理由で、過去の経験からのみの判断、対策実施していませんか?

【①:源流管理】

源流管理とは、「お客様に喜ばれる商品やサービスの品質を明らかにして、仕事の仕組みの源流、または担当業務の源流にさかのぼって、品質やサービスの機能や原因を掘り下げ、源流を管理していくこと」です。 「下流でなく、仕事のプロセスの上流で管理すること」をいいます。つまり、源流管理とは「悪いものは元から絶つ!」の考え方です。

生産プロセスの上流にさかのぼって問題の原因を掘り下げ、その対策を上流で行い、下流に悪いものを流さないようにすることです。このように現象から、その原因を探り、根本原因をつぶし、二度と再び同じ事が起こらない恒久対策(再発防止)を打つことによる管理を源流管理と言います。それに対し、問題が起こるとすぐ対策を考えるやり方を「もぐらたたき型の対策」といいます。

※源流管理については『品質管理の考え方:源流管理を参照ください。

【②:ファクトコントロール】

ファクトコントロールとは、事実に基づいて、できるだけデータでものをいうことです。経験・勘・度胸(KKD)に頼って仕事を進めるのではなく、可能な限りデータなどの客観的事実に基づいて仕事を進めることをいい、主観的判断を客観化することです。データに基づいて客観的に物事を判断し、品質不具合に対して、過去の経験を生かして要因を洗い出し、恒久対策に結びつけて問題を解決することは効率が良いことです。

今まで蓄積された、実際に見たり聞いたり行ったりして、まだしたことがない状態から、したことがあるという状態になるという経験は大切なものであり、あなたの財産です。しかし、一生かかっても全てのことは経験できません。そして「ああでもない」「こうでもない」と議論を重ねてまとまらないことが、事実確認により、すぐに解決できたという経験もあると思います。事実で物事を判断することが大切ということです。事実によって管理していくことをファクト・コントロールと言います。

※ファクトコントロールについては『品質管理の考え方:ファクトコントロールを参照ください。

<事実を正確につかむ6つの手順>

  1. 現地・現物で、物事を観察し、事実・現象を捉える
  2. どのようなデータを収集すればいいかを決める
  3. そのデータを、何のために、どう使うのかを明確にする
  4. 正しいデータをとる
  5. QC手法などの科学的手法を活用して、データを解析する
  6. 考察し正しい情報を得る

【③:現地現物】

現地現物とは、現地に足を運び、現物を見ながら徹底的に考えることです。実際に現地に足を運び、現物をみて、触れることで、事実に即して物事を客観的にみようという姿勢です。よく「仕事が忙しいので、現地に行っている余裕はない!」という声を聞きますが、机上や想像で考えるよりも、生産現場やサービス現場に何度も足を運び、物に触れ、顧客やオペレーターと接することで問題点を洗い出し、効率的に業務を進めることが可能になります。

※現地現物については『品質管理の考え方:現地現物主義』を参照ください。

<観察7つのポイント>

  1. 良品や他の工程と比較してみる(並べてみる)
  2. データに頼らず、人間の五感で確認する(目・耳・鼻・肌・感じなど)
  3. 動きを遅くしてみる(ハイスピードカメラの使用など)
  4. 問題部分を拡大してみる・抽象度を上げて工程全体をみる
  5. 分解・断面カット・破壊してみる
  6. 問題が起きた現場をみる
  7. 自分が作業者になったつもりでやってみる

【④:QC7つ道具】

QC7つ道具とは、データの中から事実をつかみとり、職場の改善や管理を行うにあたり、現象を数値的・定量的に分析するための技法です。いずれも可視化によって、誰にでもすぐに問題点がわかったり説明を容易にすることができます。

※QC7つ道具については『統計的な考え方:QC手法の活用』を参照ください。

<QC7つの道具>

  1. チェックシート:事実を掴むため、データを簡単に利用し易い形で取る
  2. パレート図:改善の重点とする目標や問題を把握する
  3. 特性要因図:結果と原因系の関係を整理&把握する
  4. グラフ:数値の視覚化をする
  5. 散布図:2種類のデータの関係を視覚化して整理する
  6. ヒストグラム:データのばらつきの姿を把握する
  7. 管理図:製品の出来栄え把握や異常への気づき

【⑤:対策立案12のアイデア】

対策を検討する場合に、アイデアの発想の起点に戸惑ってしまったという経験はないでしょうか?そのような場合に、以下にご説明致します、「着想の定石」の考え方を活用すると、意外な対策のアイデアが創造されることがあると思います。

<アイデアを生む12の着想の定石>

  1. 排除:止めたらどうか。
  2. 正と反:反対にしたらどうか。
  3. 正常と例外:それは異常なのか。いつも起こるか。
  4. 定数と変数:変わるものだけ例外処理したらどうか。
  5. 拡大と縮小:大きくしたら、小さくしたらどうか。
  6. 結合と分散:それを結んだり、分けたらどうか。
  7. 集約と分離:まとめてみる、分割してみる。
  8. 付加と削除:付け加えたり、取り去ってはどうか。
  9. 順序の入替え:順序を組み立て直したら、作業手順を入替えたらどうか。
  10. 共通の差異:違った点を生かしてみたらどうか
  11. 充足と代替:他のものに使えるか、他のものに替えたらどうか。
  12. 並行と直列:同時に行ったら、つぎつぎやったらどうか。

まとめ

試作段階は、今まで行ってきたサイマルテニアス・エンジニアリング(SE)活動の成果が、目で見え始める段階です。

今まで検討してきた図面では判断が難しい板合わせ部位等の構造確認、形状確認、設備仕様の検討を漏れなく行いましょう。

もし試作段階で、製造での懸案項目がある場合は、早急に設計部門・生産技術部門と協議し、早め早めの対策を行っていきましょう。