QC7つ道具

品質管理の考え方「層別」とは?

品質管理の考え方「層別」とは?

本日は『品質管理の考え方「層別」』をお伝えいたします。

層別とは?

『データを何らかの基準(尺度・視点)によって分類すること』

データの共通点や特徴に着目して分類することで、複雑な事柄を解きほぐし問題点を具体化していくことです。つまり「たくさんのものを、ある特徴によって、いくつかのグループに分けること」です。

この目的は、層別前の全体の品質の姿(バラツキ)と、層別後の小さなグループの品質の姿(バラツキ)とを比較することで、品質に影響する原因を掴んだりすることです。

層別が、なぜ必要なのか?

データには必ずバラツキがあります。そのバラツキは「量的数値(温度・電圧・加圧力など)」と「分類要素(材料産地・作業方式・作業者など)」に分類されます。層別とは、この分類要素ごとにデータを分けて比較することを言います。

層別したことによって違いが出たら、その層別に使った要素がデータのバラツキを生んでいる原因の一つだと考えることができます。しかし、層別してもほとんど違いが出ないことがあります。その場合は、層別に選んだ要素はバラツキの原因ではないということを示しています。ですので、また新しい層別要素を探していきます。

層別の必要性とは?

 「分ければ分かる」と言われるように、大きく・曖昧な問題をモレなく細かく分け、より具体的な一つ一つの問題に整理します。

 問題を解決するためには、上手に分けることが重要なポイントの一つです。

層別

【例】:精度バラツキ調査

 車両組み付け検査工程にて近頃頻発している部品精度のバラツキ調査のため、製品おバラツキを調査したところ、以下のようなデータを得ましたが、原因がわからず、対策に苦慮していました。

▶︎このような時はどうすればいい?

 計測した全てのデータをまとめて解析しようとしても、何が悪いのか?どのようにバラツキがあるのか?どこが異常なのか?ハッキリと掴めません。

 このような時は、全てのデータを見て闇雲に原因を掴もうとするのではなく「機械別、原材料別、作業方法別、作業者別」などのように、重要と思われる項目でデータを層別して、同じ共通点や特徴を持ついくつかのグループに分けて比較すると有益な情報が得られます。

層別

▶︎データを層別すると、問題を捉えやすくなる

 データを作業者AさんとBさんに層別してみたところ、上図のようになりました。この結果から作業者の違いで製品精度のバラツキが違うことが分かったため、作業者ごとに違いを分析し、徹底的な作業訓練などによる対策で精度不良を効率的に低減できました。

層別のやり方6つの手順

  1. 層別する対象をハッキリと決める(品質特性は何か?数量範囲はどこまでか?)
  2. 全体の品質の姿を掴む(具体的な数値で表すことが重要)
  3. バラツキの原因を考える(全体品質のバラツキに影響があるものは何か考える)
  4. バラツキの原因と思われるもので小グループで分ける
  5. 層別した小グループの品質の姿を掴む(ヒストグラムなどを活用し品質の姿を掴む)
  6. 小グループ同士を比較し全体の関係を掴む(平均やバラツキの違いはないか?)

現状を正しく把握するための層別3つの視点

 今まで、22業種100社以上の集客・品質改善サポートを行ってきた中で、言われてきたのは「層別の仕方が分からない」「層別しても違いが分からない」ということをよく言われます。確かに、様々な要因が絡み合っているので、難しいものです。ここで3つのポイントをご紹介します。

【視点①】:層別の視点を明確にする

データを、どんな視点で層別するのかを明確にします。層別は、品質(結果)を要因(原因)で分類し、原因と結果の関係を掴もうとする方法です。つまり、いろいろなデータを比較しやすい形でまとめなければ、層別の効果は掴めません。(以下は例です)

  • 人(個人・年齢・男女・組・直・経験など)
  • 機械・装置別(型式・号機・性能・ライン・金型など)
  • 原料・材料別(メーカー・ロット・成分・産地など)
  • 方法・条件別(温度・圧力・速度・手順など)
  • 時間別(日・午前午後・日勤夜勤・季節など)
  • 測定・検査別(測定器具・測定方法・検査方法など)
  • 環境別(気温・湿度・天気・振動や塵埃の有無など)

【視点②】:データの素性を明確にする

取得したデータの素性(性格や履歴)を明確にしておくと、いろいろな視点からの層別ができるようになります。例えば、自動車ですと単品から車両になるまでの工程間の計測データを履歴として残したり、原材料の産地などを明確にしたり。

バラツキの原因を掴むためには、原因と思われるデータを品質のデータに対応づけて明確にしておく必要があります。

【視点③】:いろいろな視点で層別する

今、見ている視点で層別しても違いがないからといって、諦めてはいけません。今までと違った別の見方で層別してみると、意外な結果が出てくることは、よくあります。(顧客になりきってみる、パラダイムを変える、抽象度を変えるなど)

バラツキの原因は様々です。どの原因が最も影響するか分かりません。ですので、影響があると思われる要因で全体の品質をいろいろな小グループに分けてみましょう。いろいろとやってみることが大切です。

まとめ

問題の早期発見、的確な対策立案のためにも、現状を調査・分析し、事実を把握する「層別」の考え方は重要です。

層別を使うメリットは「全体の姿と小さな姿の比較が視覚化できる」ということです。層別できるようになると、データの塊にしか見えなかったものが、具体的な問題を示す意味ある数字として見えてくるようになります。

大きく・曖昧な問題を細かく分けて、より具体的な一つ一つの問題に整理することができるので、問題解決では必ず活用する手法です。

QC7つ道具+3つの考え方

道具

内容

チェックシート

「データが分類項目別にどこに集中しているか?視覚化する」
データの取得・整理を容易にし、また点検・確認項目がもれなく行えるように、あらかじめ設計された様式・フォーマット。(QC7つ道具の一つ)

パレート図

「原因を分類して視覚化。重点指向、優先順位を付けやすい」
パレート図とは、値が降順にプロットされた棒グラフとその累積構成比を表す折れ線グラフを組み合わせた複合グラフ。(QC7つ道具の一つ)

特性要因図

「要因解析の時に使う特性と要因の関係を線で結んで表した図」
この特性要因図は、問題解決の7ステップの中の「要因解析」で“原因と結果との関係を明らかにする”一番重要になるステップの一部です。(QC7つ道具の一つ)

管理図

「工程の品質特性が規格に対して安定状態にあるか?を見るツール」
時系列に得られるデータをプロットし、点の位置や並び方からデータの変動が偶然原因なのか?異常原因なのか?を判断するためのものです。(QC7つ道具の一つ)

 ヒストグラム

 「データのバラツキの姿を把握するために活用するツール」
集めたデーターを幾つかの区間に分け、この区間に入るデーターの数を数えて度数表を作り柱状に表したものです。(QC7つ道具の一つ)

散布図 

 「2種類のデータの関係を視覚化して整理するためのツール」
特性とその要因とを対にしたり、関連のありそうな二つの特性や要因同士を対にしてとったデータを、二つの軸の交点にプロットした図です。(QC7つ道具の一つ)

グラフ

「二つ以上の数量や関数の関係を図形に示したもの」
グラフはあらゆる場面で使われ、あるデータを図表に表し、その状態が目で見て解るようにしたものです。(QC7つ道具の一つ)

バラツキ管理

「バラツキに注目し、ばらつく原因をつかむこと」
製品の品質を保つためには、このバラツキを管理していくことが重要であり、品質を一定の水準に安定させることを品質管理といいます。

層別

「データを何らかの基準(尺度・視点)によって分類すること」
データの共通点や特徴に着目して分類することで、複雑な事柄を解きほぐし問題点を具体化していくことです。

データ

「それをもとに推理し結論を導き出す、行動を決定するための事実」
連続的に変化する計量値データや断続的に変化する計数値データがあり、正しいデータ収集が重要になります。