品質保証

品質改善の考え方「未然防止」とは?

品質改善の考え方「未然防止」とは?

本日は『品質改善の考え方「未然防止」』をお伝えいたします。

未然防止とは?

『一歩も二歩も先を読み、想定される問題に対してあらかじめ手を打つこと』

 問題が発生して、あたふたと対策するのではなく、事前に問題を予測して発生しないように、予め、その原因に対策しておくという考え方です。

未然防止の必要性

未然防止とは、製品の品質トラブルや製造現場での事故などが発生する前、つまり”未然に防ぐための活動”を言います。

未然防止とは、言葉だけで見るとすごく単純そうに思えますが、見えてない問題を未然に対策する訳ですから、実際に行うとかなり難しい作業なのです。

問題解決では、既に見えている問題を対象にしますが、未然防止では今はまだ見えていない問題を想定して対策するという、問題解決とは違った能力が必要になるためです。

未然防止

例えば、世の中の多くの人が、「インフルエンザにはかかりたくない!」と思っています。そのためインフルエンザの予防接種をして対策しています。それはインフルエンザにかかると38℃以上の高熱が出て、悪寒、頭痛、関節痛、倦怠感などの全身症状で、一週間程度休まなければならないことを知っているからです。

同じように提供する製品に品質トラブルがあった場合、社会に対する被害が大きければ何百億円という損害賠償の支払い、無償交換など、費用も労力もかかります。何より企業の信頼が損なわれてしまいます。

インフルエンザの予防接種と同じように、事前に対策がなされていれば、品質トラブルの製造も流出もなく、費用も時間もムダに使うことがありません。信頼も失うことなどありません。だから企業はトラブル防止の努力をします。

未然防止が上手くいかない3つの理由

設計・生産技術・製造の各部門の品質トラブルが撲滅することはありませんが、特に流出させてはいけない不具合として、品質不良の再発です。品質不良が再発する理由のひとつに、過去トラブル情報を活用できていないことが挙げられます。

過去のトラブル情報を新製品開発や製造工程の設計に活用するために、トラブル情報のデータベースを持っている企業は多くあります。しかし残念ながら、その過去トラブル情報は未然防止に上手く活用されていません。そのトラブル情報を活用できない理由は、以下のようなものが挙げられます。

「品質不具合の解析が不十分で、活かせない」

最も多くあるパターンは、トラブル発生時に生産を優先して、不具合対策を応急処置で対応したため、トラブルの解析が十分にできず原因が掴めてないことが挙げられます。発生したトラブルの原因が掴めないことには源流での対策ができませんので、このままでは同じトラブルが何度も繰り返し発生する可能性があります。なぜその問題が発生したのか?をしっかりと解析することが重要となります。

「源流である設計や生産技術部門が使える情報になっていない」

後工程で発生するトラブル情報は、不具合対応した結果の報告書として作成されるため、トラブル情報をそのまま設計に伝えても使う設計側の欲しい情報の伝え方ではないので、使いたくても使えないということが挙げられます。そのトラブルを次へ活かすには、新製品開発時の設計や生産技術部門など関係部署へのフィードバックとしての視点で不具合解析も行い整理されるべきです。

「膨大にある不具合情報が整理されてないため、必要な時に探し出せない」

過去トラブルのデータベースが活用できてない理由に、情報量が膨大すぎて、上手く検索できないことが挙げられます。一元管理されているとしても、トラブル情報が毎日毎日増え続けることで、検索しても類似する内容も膨大になり、関係者が自分に必要な情報を探すだけで一苦労します。欲しい情報が簡単に見つからないから、結果的に役に立たない情報データベースになってしまいます。

トラブル未然防止3つのポイント

1:計画

計画(plan)によく考えて、起こり得る問題を予測し洗い出す。製造だけではなく、設計・生産技術などの早めの段階から取り組むべきことです。「有効な手法」:品質展開・デザインレビュー・FMEA・FTAなど

2:実施

実施(do)での管理ポイントを明確化する。「有効な手法」:品質展開・工程FMEA・品質保証体系図・QC工程表など

3:確認・処置

確認(check)・処置(action)を確実におこなう。※ 問題があれば、ただちに対応・改善策を織り込んでいく

未然防止する3つの理由とは?

今まで、22業種100社以上の集客・品質改善サポートを行ってきた中で、言われてきたのは「正直言って、未然防止は手間ばかりかかって効率が悪い」「100%の未然防止は無理。ある程度はしょうがない」「再発防止で手が回らない」ということをよく言われました。

でも、そうではありませんよね?企業としての競争力を高めるためには、未然防止に力を入れて強化していくべきです。その理由は以下の3つです。

「理由①:不安要素の撲滅にこだわる」

お客さまからの信用を失う一番の原因はトラブルです。今まで積み上げてきた信頼を一瞬で失うことになり兼ねません。一旦失った企業の信頼を取り戻すには、何十年という歳月がかかってしまうため、企業の存続に関わることになります。したがって、なんとしても、不安要素は撲滅しておくべきものです。

「理由②:ムダなコストの損失防止」

品質不良は多くのムダ(加工・手直し・廃棄・倉庫・調査や解析などの様々なムダ)を生み出します。したがって、不良が後追い対策になってしまうと、手直し・不良の処理などの損失コストが生じます。さらに、市場に出てしまうと回収・交換などの損失コストは、莫大なものとなってしまいます。だから、不良が出てしまう前に、未然防止に費やす方が圧倒的に少ない金額で効果も大きいのです。

「理由③:技術面の向上」

未然防止という考え方を取り入れることにより、自工程の作り方や製品の作り方が変わってきます。「不具合が出ないようにするためには、どういう工程にするべきか?」未然にトラブルが防止できる一人前の技術者や技能者の教育にも最適です。そして、製造部門の問題ではなく、生産プロセスに関わる全ての部門で行う全社で取り組むべき、大きな全社プロジェクトでもあります。

まとめ

未然防止がどうやったらできるようになるか?というと、過去にあった不具合も把握できていなければなりませんし、製造プロセスも把握しておかなくてはなりません。

そして、小さい事にこだわらなきゃダメなんです。 目の前の問題は、絶対に見逃さず地獄の底までおいかけて撲滅させるのです。 そうやって、一つ一つの問題を解決していくことで、目標達成していくことができます。

「想定される問題に対してあらかじめ手を打つこと」ができるようになるとういうことは、多くの経験が必要な難しいことです。 

しかし、未然防止へ取り組むことにより、経験を積んでいけば、お客さまの信頼を獲得するとともに、コスト低減も可能になります。さらに、客観的に物事をよく見れ、物事をよく考え、先を読む力を養うという自己成長をも促します。

品質保証を行う上で、重要な12の考え方

  

内容

1

PDCAサイクル

「仕事を効果的・効率的に進めるための手順のこと」

2ファクトコントロール

「事実に基づいてデータでものをいうこと」

3

プロセス重視

「結果でなく、仕事のプロセスを管理していくこと」

4

標準化

「標準を作り、守り、それを活かしていく」

5

源流管理

「プロセスの下流でなく、プロセス上流で管理すること」

6

現地現物

「問題が起きた現地に足を運び現物を見ながら考えること」

7

品質第一

「品質優位により利益確保を目指すこと」

8

顧客志向

「お客様の真に要求するモノ・サービスを提供すること」

9

後工程はお客様

「後工程に喜んでもらえるモノやサービスを提供すること」

10

重点指向

「複数の問題から重要問題を選定し、優先的に取り組むこと」

11

再発防止

「根本原因を見極め対策することで問題を再発させないこと」

12

未然防止

「先を読み、想定される問題に対してあらかじめ手を打つこと」

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