今回は『統計的な考え方「QC7つ道具:パレート図」』についてお伝えいたします。
パレート図とは?
現場で発生する問題で、全く同じものというのはほとんどなく、日常的に発生している問題や、突発的に発生した問題など、多種多様です。
現場の管理監督者にとって、担当する業務のうち、品質不具合や設備故障・不具合などの改善すべき事柄の「どこに問題があるのか?」「どこに処置をとるべきか?」を判断することは最も重要な仕事です。
データを項目別に分類して、大きさの順序に並べるパレート図は、この判断を早く確実に下すための手段の一つとしてパレート図が用いられます。
限られた資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の中で、効率よく問題を解決していくために、このパレート図は、重要なことに集中的に取り組む重点指向をサポートするものとなります。
パレート図とは、項目別に層別して、出現頻度の大きさの順に並べるとともに、累積和を示した図。例えば,不適合品を不適合の内容の別に分類し、不適合品数の順に並べてパレート図を作ると不適合の重点順位がわかる。
JIS Z 8101-2:1999より引用
パレート図とパレートの法則の関係
パレートの法則というものを聞いたことがあると思います。
パレートの法則とは、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した冪乗則です。
全体の数値の80%は、全体を構成するうちの20%の要素が生み出しているという理論です。例えば、売上の80%は全顧客の20%が生み出しているというもの。
つまり、重点思考のためのための手法で「80:20の法則」とも呼ばれます。
パレート図の法則は、別名2:8の法則とも言われます。パレート図とは、値が降順にプロットされた棒グラフとその累積構成比を表す折れ線グラフを組み合わせた複合グラフであり、QCの7つの基本的な道具の一つです。パレート図は、たくさんあるの項目の中から、重要な項目に絞りたい時に活用します。
例えば、品質不良の低減を行いたいけど、何から手を付けていいか分からないので今の品質状況を調べるなどです。過去3ヶ月の品質不具合を調べ、件数が多い順に並べて比較していきます。件数が多い順に並べていくことで、全体を俯瞰して状況を読み取ったり、重点項目の順番に並べていくことができます。
パレート図を活用する目的は?
パレート図によって「どの項目に問題があるか?」「その影響がどの程度か?」を見いだすことができます。現場を管理する立場のあなたにとって、担当業務で不具合や故障など「どこに問題があるか?」「どんな処置をすれば良いか?」という判断する仕事は最も重要な仕事であると思います。この判断の精度を上げる目的でパレートは使われています。
パッと一目で客観的に現状を掴むことができるシンプルですが、とても優れた手法です。品質不良の発生状況は、現場の肌感覚では分かっていても、実際に具体的な数値として把握してまでは掴めていないものです。だからこそ、誰もが一見して把握できる図にすることが大切なのです。
パレート図は、問題とする不良や欠点をいくつかの分類項目でとらえ、項目ごとのデータの値を棒の高さで表し、高い順に並べた棒グラフと、それぞれの棒の高さを累積した折れ線グラフで表した図。問題とする不良や欠点の中で重点となる項目を見つけ出すのに用いられます。
【問題解決の効果的なやり方】
- 問題になっている不具合の内容を調べる
- データーを現象別や原因別に分類して比べる
- 不具合件数や損失金額の多い項目から改善する。
このようなときに役立つのがパレート図です。
パレート図の4つの使い方
- 「どこに問題があるかの調査」
80:20の法則とも呼ばれるように、分類項目がたくさんあっても、全体に大きな影響を与えているのは、そのうちの2〜3項目です。結果を出すための改善ポイントは、その2〜3項目に注力しなければなりません。つまり重点思考です。 - 「問題点を掴み対策をとるため」
分類項目は、大きく分けて2種類あります。「結果と原因」の分類です。結果の分類とは、不良項目別・場所・工程別など。原因の分類とは、原料別・機械別・作業者別・作業方法別など。結果の分類によって問題点を掴み対策ないようを決めるためにパレート図を使います。つまり、どの項目が最も重要で、どの項目から改善を行えば最も大きな改善効果が得られるのか?などを調べます。 - 「報告と記録のため」
データの数値だけをまとめた資料を見るだけでは、分類項目別の影響は分かりにくいですが、パレート図は、そのデータの内容を一目で理解できるように示すことができます。特に、報告資料を作るとき「この問題を、こう対策して、結果はこうでした。自己評価としてはこうです。」と、問題の対策前後の比較をして効果を可視化できるため、並べて評価することで分かりやすい資料ができます。 - 「改善目標や改善効果を客観的に評価するため」
重点志向で対策項目の把握ができるので、パレート図の問題の中から重要な項目だけを選び出すことができ、効果的な改善活動が進められます。また、その後の改善効果もどれだけの効果があったかを客観的な視点で評価できます。
パレート図を活用するメリットと特徴
メリット
全体に占めるそれぞれの割合、重要度が判りやすく、何が主な原因か?(どこに不良や欠点が集中しているか)や、どの問題をどの程度改善すれば問題解決できるか?という視覚化が図れるので『重点指向、優先づけがやりやすい』というメリットがあります。
特徴
色々な問題を抱えている中、どの問題を日常管理に取り込むべきか、あれもこれもと手を出して、結局全てが中途半端になってしまった経験はないでしょうか?あなたが一番困っている問題、改善効果がなるべく大きな問題を取り上げて解決していく、つまり、重要なことに集中的に取り組みをする重点指向が必要です。この重点指向的考え方をサポートするのがパレート図です。パレート図の特徴は以下の4つになります。
- 最も重要な取り組むべき問題を、見つけることができる。
- 問題の大きさ・重要度が一目で分かる。
- 全体のどの程度、取り組む問題が占めているか、知ることができる。
- 問題の大きさが目で見て理解でき、説明資料として説得力がある
パレート図の作り方「8つの手順」
- データの分類(結果と原因)を決定する(例:不良件数・損失金額)
- 現状把握のため、期間を決めてデータ収集を行う
- 集めたデータを集計する
・大から小の順にデータを並べる
・影響の小さな項目は”その他”とまとめる
・項目別に、%を計算する - 分類ごとに累積数を求め、全体のデータ数に対する%を計算
- グラフ用紙に縦、横軸を記入する(縦軸にデータ目盛り・横軸に分類項目を記入)
- データの棒グラフを記入する
- データの累積数を”折れ線”で記入する
・右端に縦軸を書き、折れ線の終点を”100”とする
・0~100%の間を10等分し、%の目盛りを入れる - 収集したデータの期間、記録者、目的を記入する
パレート図の見方
パレート図は、品質不良件数、損失金額、作業時間、故障件数などを、その要因別・現象別などに分類して、その件数の大きさ順に並べた図です。パレート図からは、以下の6つを読み取ることができます。
- どの項目が最も問題なのか?
- 問題の優先順位や深刻度はどうか?
- 全体に対する各項目の割合は、どの程度占めているか?
- どの項目を解決すれば、どの程度の効果が得られるか?
- 不具合対策や改善策が、どれだけの効果をもたらしたか?
- 品質不良などの内容が、どう変わったか?
パレート図の累積比率
パレート図の累積比率についてですが、パレート図は項目別に分けたデータを左から大きい順に棒グラフで並べ山の高い順に作成されています。
この山の一本づつの数の合計が累積です。この山(累積)のすべての合計が100%に当たり、この山(累積)から一本づつを割って行った数字が累積比率となります。
パレート図では、累積比率を折れ線グラフで示されます。
まとめ
パレート図を活用すると、全体に占めるそれぞれの割合、重要度が判りやすく、何が主な原因か視覚化が図れるので、重点指向、優先付けがやりやすくなります。
問題解決を行うためには、正しい現状把握が必要ですが、このパレート図を活用する事で、原因を分類して視覚化できるので、取り組むべき優先事項も明確になります。
問題の改善前後のデータをパレート図で比較して示すことによって、改善効果が目に見えて確かめることもできるので、とても活用できるQC7つ道具の一つです。
最後に
私の経験談ですが、、、トヨタに勤務していた時、職場でのQCサークル活動や、特別研修での取り組みで「問題解決8つのステップ(QCストーリー)」を使って課題を解決していましたので、このパレート図をとても活用していました。
その「問題解決8つのステップ(QCストーリー)」の中でも、最初のステップ『問題の明確化』では、あるべき姿、ありたい姿と現状の差(問題)のGAPを明確にし、どの問題を改善するのかを決定する「選定理由」の際にパレート図を用いて表現します。
また、日常品質向上活動の展開をする中で「品質向上活動の見える化」という活動の可視化にも取り組んでいましたので、後工程のライン停止させてしまった直行阻害率(自職場責任の品質不具合)をまとめ、パレート図などを用いて発生不具合状況と対策優先順位を可視化していました。
もちろん不具合発生状況を品質ミーティング場に張り出して終わりではなく、発生した品質不具合に対する対策状況を「対策報告書」とともに掲示し、不良発生件数・対策件数・残項目件数を明確にして、対策を進めている状況を関係者全員が確認できるようにしていました。