「品質保証」と聞くと、完成した製品を検査し、不良品を市場へ流出させない活動を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。しかし、品質保証は品質部門だけが最後に製品を確認する活動ではありません。顧客・社会・法規などの要求を企画、設計、生産準備、調達、製造、物流、販売、アフターサービスへ展開し、各段階が自らの保証責任を果たし、必要な条件と情報を次の段階へ確実に引き渡すことで初めて成立します。本記事では、品質保証を企画から市場対応までを貫く組織全体の仕組みとして捉え、品質管理や工程保証との違い、各段階の保証責任、保証された引き渡し、適用範囲、未解決事項や変更管理の考え方まで、体系的に解説します。
結論|品質保証は、各段階が保証責任を果たし、次の段階へ引き渡す仕組み
品質保証とは、完成した製品を検査し、良品か不良品かを判定するだけの活動ではありません。
顧客・社会・法規などの要求を明確にし、その要求を企画、設計、生産準備、調達、製造、物流、販売、アフターサービスへ展開し、各段階が自らに割り当てられた保証責任を果たすための組織的な仕組みです。
本記事では、品質保証を次のように定義します。
品質保証とは、顧客・社会・法規などの要求を満たす製品・サービスを継続して提供するために、企画から市場対応までの各段階で、保証事項、成立条件、確認方法、判断基準、適用範囲、責任、権限および引き渡し条件を明確にし、その適合を判断・処置・説明できるようにする組織的な仕組みです。
品質保証の対象は、製造工程だけではありません。
顧客・社会・法規などの要求
↓
市場調査・企画
↓
製品・サービス設計
↓
生産準備・工程設計
↓
調達
↓
製造
↓
物流
↓
販売
↓
アフターサービス・市場対応
↓
企画・設計・工程・標準への反映
各段階が単に自分の作業を終えるのではなく、次の事項を明確にする必要があります。
- 何を保証するのか
- どの要求に基づくのか
- 何を根拠に成立と判断するのか
- どの範囲に対して保証が有効なのか
- 何を次の段階へ引き渡すのか
- 未解決事項をどのように管理するのか
- 保証できない場合に誰が何を判断・処置するのか
各段階が保証責任を果たし、次の段階が定められた条件で業務を開始できる状態にして引き渡すことで、品質保証の連鎖が成立します。
品質保証とは何か
品質保証という言葉は、次のような意味で使われることがあります。
- 製品を検査すること
- 不良品を流出させないこと
- クレームへ対応すること
- 品質部門が製品を確認すること
- 製品の保証期間を設定すること
これらはいずれも品質保証に関係しますが、品質保証全体の一部にすぎません。
品質保証で必要なのは、次の四つです。
- 顧客・社会・法規などの要求を明確にする
- 要求を製品・サービスと各業務プロセスへ展開する
- 各段階で要求への適合を判断し、保証できない状態を管理・処置する
- 判断と処置の根拠を記録し、説明できるようにする
したがって、品質保証とは単に「問題ありません」と宣言することではありません。
また、絶対に不具合が発生しないと約束することでもありません。
保証とは、定められた要求に対して、成立条件と確認結果に基づいて適合を判断し、保証できない状態を管理・処置するとともに、その判断根拠を説明できることです。
保証は、次の三つによって成立します。
要求への適合を判断できる
↓
保証できない状態を管理・処置できる
↓
判断と処置の根拠を説明できる
完成品の検査結果が規格内であっても、その製品がどのような材料、設備、条件、作業方法でつくられたのか分からなければ、十分に保証できない場合があります。
反対に、工程を厳密に管理していても、顧客要求や設計要求が不明確であれば、必要な品質を保証することはできません。
品質保証では、次を一つの論理としてつなぐ必要があります。
要求
↓
保証事項
↓
保証特性
↓
実現方法
↓
成立条件
↓
確認項目
↓
判断基準
↓
異常時の処置
↓
引き渡し
↓
記録・説明
品質保証の目的
品質保証の目的は、不良率を下げることだけではありません。
最終的な目的は、顧客や社会が製品・サービスを安心して選択し、購入し、使用できる状態を継続してつくることです。
そのためには、少なくとも次の状態が必要です。
- 顧客が求める価値が明確である
- 法規、安全、環境などの要求を満たしている
- 設計された機能・性能・信頼性が成立している
- 量産工程で設計要求を安定して再現できる
- 調達品を含むサプライチェーンが管理されている
- 保管・輸送・販売による品質劣化を防止できる
- 使用方法や注意事項が正しく伝えられている
- 市場で問題が発生した場合に追跡・処置できる
- 得られた情報を企画・設計・工程へ反映できる
品質保証は、製品を出荷した時点で終わる活動ではありません。
要求を把握してから、製品・サービスが顧客に使用され、その結果が次の企画、設計、工程へ反映されるまでの循環全体が品質保証です。
品質保証では要求の種類と発生源を分けて考える
品質保証では、全ての要求を一括して扱うべきではありません。
要求の発生源によって、責任部門、優先順位、確認方法、変更権限が異なるためです。
| 要求の種類 | 主な内容 | 主な発生源 |
|---|---|---|
| 顧客要求 | 機能、性能、価格、納期、使いやすさ | 顧客、市場、契約 |
| 法規要求 | 安全、環境、表示、認証 | 法令、規則、認証制度 |
| 社会的要求 | 安全性、環境負荷、倫理、説明責任 | 社会、地域、業界 |
| 社内要求 | 品質目標、原価、生産性、社内標準 | 経営、品質方針、社内規定 |
| 設計要求 | 図面、仕様、公差、重要特性 | 設計部門 |
| 後工程要求 | 組付性、搬送性、検査性、作業性 | 後工程、物流、検査 |
| 市場要求 | 耐久性、修理性、サービス性、実使用条件 | 顧客使用、市場情報 |
要求を管理する場合は、少なくとも次を明確にします。
要求の発生源
↓
要求内容
↓
要求の優先度
↓
責任部門
↓
展開先
↓
確認方法
↓
変更権限
例えば、法規要求は顧客要望とは異なり、原則として組織の都合で緩和できません。
一方、後工程要求は図面に明記されていなくても、量産性や組付性を成立させるうえで重要な場合があります。
品質保証では、要求の発生源、責任部門、優先順位、確認方法、変更権限を明確にしたうえで、各段階へ展開する必要があります。
品質保証で扱う三つの品質領域
品質保証を考える際は、製品の出来栄えだけで品質を捉えないことが重要です。
品質保証では、設計品質、製造品質、仕事の質を一体として扱います。
1.設計品質
設計品質とは、顧客・社会・法規などの要求に対して、製品やサービスをどのような品質水準に設定したかを表すものです。
「ねらいの品質」と呼ばれることもあります。
設計品質には、例えば次の内容が含まれます。
- どのような機能を持たせるか
- どの程度の性能を実現するか
- どの程度の耐久性を持たせるか
- どのような安全性を確保するか
- どのような使いやすさを実現するか
- どのような使用条件を想定するか
- どの価格帯で提供するか
顧客が必要としていない製品を正確につくっても、顧客満足にはつながりません。
品質保証の出発点は、顧客や社会の要求を正しく把握し、製品・サービスの仕様へ展開することです。
2.製造品質
製造品質とは、設計された仕様や図面どおりに、製品・サービスを安定して実現できているかを表す品質です。
「できばえの品質」と呼ばれることもあります。
設計品質
何を実現するかを決める
↓
製造品質
決めた内容を安定して実現する
製造品質を保証するには、完成品検査だけでなく、要求品質を安定して実現できる工程を設計し、量産条件で成立させ、その状態を維持する必要があります。
製造段階で、この保証責任を実現する仕組みが工程保証です。
3.仕事の質
設計品質と製造品質は、そこに関わる人の判断、情報、標準、連携によって生み出されます。
仕事の質には、次のような内容が含まれます。
- 要求事項を正しく理解する
- 判断基準を明確にする
- 必要な情報を正確に伝える
- 標準や記録を整備する
- 変更時に影響を確認する
- 異常時に適切な初動をとる
- 部門間で責任をつなぐ
- 問題の原因を明らかにする
- 対策を標準や仕組みへ反映する
仕事の質は、設計品質と製造品質を成立・維持する基盤です。
顧客・社会の要求
↓
設計品質
何を実現するか
↓
製造品質
設計どおりに実現できたか
これらを支える基盤
↓
仕事の質
判断・情報・標準・連携の品質
保証事項・保証特性・確認項目の違い
品質保証では、何を保証するのかと、何を確認するのかを区別する必要があります。
保証事項
保証事項とは、各段階が何を保証するのかを表したものです。
例:必要な接合性能を満たすこと
保証特性
保証特性とは、保証事項の成立を評価するために着目する製品・サービスの特性です。
- 接合強度
- ナゲット径
- 破断形態
確認項目
確認項目とは、保証判断のために実際に測定、観察、記録する項目です。
- 溶接電流
- 加圧力
- 通電時間
- 抜取試験結果
- 外観確認結果
保証事項
何を保証するか
↓
保証特性
何を見れば成立を評価できるか
↓
確認項目
実際に何を測定・確認するか
確認項目を管理していても、それが保証事項へどのようにつながるか説明できなければ、品質保証としては不十分です。
保証事項と確認項目は同じではありません。保証事項は「何を保証するか」であり、確認項目は「その保証判断のために何を確認するか」です。
品質保証・品質管理・工程保証の違い
品質保証、品質管理、工程保証は密接に関係しますが、同じ意味ではありません。
品質保証
品質保証は、顧客・社会・法規などの要求を満たしていると判断し、その根拠を説明できるようにする組織全体の仕組みです。
- 誰に対して何を保証するのか
- どの要求を満たす必要があるのか
- どの段階が何を保証するのか
- 何を根拠に適合と判断するのか
- 保証できない場合に誰が何を処置するのか
品質管理
品質管理は、品質方針や品質目標を達成するために、業務や工程を計画し、実行し、確認し、改善する活動です。
- 品質目標の設定
- 標準の整備
- 実績の測定
- ばらつきの管理
- 異常の検出
- 原因解析
- 改善
- 標準化
品質管理によって業務や工程を安定・改善し、その結果と根拠によって品質保証を成立させます。
工程保証
工程保証は、製造工程において要求品質を安定して実現し、実際に生産した対象品を後工程へ引き渡せるか判断する仕組みです。
- 自工程で何を保証するか
- どの工程条件で品質が成立するか
- 何を日常的に管理するか
- どの基準で正常・異常を判断するか
- 異常時にどこまで影響範囲を管理するか
- 実際の対象品を保証できるか
- 問題をどのように工程へ反映するか
| 項目 | 品質保証 | 品質管理 | 工程保証 |
|---|---|---|---|
| 対象範囲 | 企画から市場対応まで | 各業務・各工程 | 主に製造工程 |
| 主な目的 | 要求への適合と信頼を成立させる | 品質を計画・維持・改善する | 工程で要求品質を安定して実現する |
| 主な問い | 何を根拠に保証できるか | どのように管理・改善するか | 後工程へ引き渡せるか |
| 主な責任 | 組織全体・各段階 | 各管理責任者 | 製造、生産技術、品質、保全など |
| 主な仕組み | 品質保証体系、責任分担、監査 | 標準化、PDCA、統計的管理 | 成立条件、管理基準、保証判定 |
品質保証と品質管理を単純な上下関係として捉えるのではなく、品質管理によって状態を維持・改善し、その結果と証拠によって品質保証を成立させる関係として考えることが重要です。
品質保証を成立させる三つの仕組み
1.要求を製品・サービスへ展開する仕組み
最初に必要なのは、顧客、市場、社会、法規などの要求を明確にし、製品やサービスの仕様へ展開する仕組みです。
市場・顧客情報の把握
↓
顧客価値の明確化
↓
製品・サービスの企画
↓
機能・性能・安全・信頼性への展開
↓
製品・サービス設計
↓
試験・評価
↓
設計成立の判断
- 対象顧客は明確か
- 顧客が必要とする価値は明確か
- 法規・安全・環境要求を把握しているか
- 要求が設計仕様へ展開されているか
- 使用条件や誤使用が考慮されているか
- 過去の不具合や知見が反映されているか
- 製造・検査可能な設計になっているか
2.要求を安定して実現するプロセス保証
プロセス保証とは、定められた条件や方法に従って業務を行えば、狙いとする結果が安定して得られるようにプロセスを設計・管理することです。
対象は製造工程だけではありません。
- 設計プロセス
- 調達プロセス
- 製造プロセス
- 物流プロセス
- 販売プロセス
- アフターサービスプロセス
プロセス保証では、次を明確にします。
- 狙いとする結果
- プロセスの成立条件
- 守るべき標準
- 管理する要因
- 確認方法
- 判断基準
- 適用範囲
- 異常時の処置
- 改善内容の反映先
製造工程におけるプロセス保証を、より具体的に体系化したものが工程保証です。
3.各部門の責任をつなぐ品質保証体系
品質保証体系とは、品質保証に必要な活動、責任、情報、判断、規定、引き渡し条件を、組織全体で明確にした仕組みです。
品質保証体系では、少なくとも次を明確にします。
- どの段階で何を保証するか
- どの部門が責任を持つか
- 誰が実施するか
- 誰が確認するか
- 誰が承認するか
- 何を次の段階へ引き渡すか
- どの基準で次の段階へ進むか
- 未解決事項をどのように管理するか
- 問題発生時に誰が処置するか
- 市場や後工程の情報をどこへ戻すか
業務の流れ
× 各部門の責任
× 保証事項
× 成立条件
× 判断基準
× 適用範囲
× 引き渡し条件
× 規定・標準
品質保証には適用範囲がある
一度保証が成立したからといって、どの条件にもその判断を適用できるわけではありません。
品質保証の成立は、確認した範囲に対して有効です。
適用範囲には、例えば次が含まれます。
- 製品・型式
- 製造拠点
- 設備・治具
- 工法
- 材料
- 供給者
- 生産速度
- 作業者資格
- 使用環境
- ソフトウェア版
- 検査方法
- 測定機器
- 保管・輸送条件
一度成立した
≠
どの条件でも有効
適用範囲を超える変更が生じた場合は、過去の保証判断をそのまま適用してはいけません。
- 何が変わるか
- どの要求に影響するか
- 過去の確認結果を適用できるか
- 何を再確認する必要があるか
- 誰が再承認するか
品質保証の成立は、製品、工程、設備、材料、供給者、使用条件など、確認した適用範囲に対して有効です。適用範囲を超える変更が生じた場合は、影響評価と必要な再確認を行います。
品質保証体系図を整備する四つの効果
1.各部門の保証責任が明確になる
品質問題は、部門間の責任や引き渡し条件が曖昧な部分で発生しやすくなります。
品質保証体系図によって、誰が何を確認し、何を根拠に、どの状態で次の段階へ渡すのかを明確にできます。
2.問題発生時の解析が早くなる
品質問題が発生した場所だけでなく、どの保証段階に不足があったのかを整理できます。
- 要求の把握
- 設計への展開
- 工程への展開
- 調達
- 製造
- 物流
- 市場対応
3.品質監査の基準になる
品質保証体系図は、定めた活動が実際に機能しているかを確認するための監査経路になります。
- 保証責任が実行されているか
- 引き渡し条件が守られているか
- 未解決事項が管理されているか
- 異常時の判断が機能しているか
4.品質保証の全体像を共有できる
各部門が自部門だけを見ていると、品質保証の連鎖が分断されます。
品質保証体系図によって、自部門の仕事が前工程、後工程、顧客、市場へどのようにつながっているかを共有できます。
品質保証における各段階の保証責任
各段階は、単に業務を実施するだけでなく、保証事項を成立させ、必要な情報や成果物を次の段階へ引き渡す責任を持ちます。
また、各段階には、次の段階へ進めるかを判断する出口条件が必要です。
1.市場調査・企画
| 目的 | 顧客・市場・社会の要求を把握し、提供すべき価値と製品・サービスの狙いを定める |
|---|---|
| 主な保証事項 | 対象顧客、顧客価値、法規・安全・環境要求、商品コンセプト、品質・原価・納期目標 |
| 主な引き渡し | 企画書、顧客要求、法規要求、品質目標、商品コンセプト、開発条件 |
| 出口判定 | 対象顧客、要求、提供価値、制約条件、開発目標が明確であり、設計へ展開できる |
2.製品・サービス設計
| 目的 | 企画段階で定めた要求を、機能、性能、構造、仕様、使用条件へ展開する |
|---|---|
| 主な保証事項 | 機能、性能、安全性、信頼性、耐久性、使用条件、製造性、検査性 |
| 主な引き渡し | 図面、仕様書、重要特性、検査要求、使用条件、未解決事項、設計変更情報 |
| 出口判定 | 要求が設計仕様へ展開され、検証・妥当性確認が完了し、製造・検査へ移行できる |
後工程が要求を誤解せず、量産で再現し、適合を判断できる設計情報を引き渡すことが、設計段階の保証責任です。
3.生産準備・工程設計
| 目的 | 設計要求を量産で安定して実現できる設備、治具、工具、工法、工程、作業、検査へ展開する |
|---|---|
| 主な保証事項 | 工法成立性、設備能力、工程能力、検出能力、作業再現性、保全性、異常時対応 |
| 主な引き渡し | 工程フロー、工程FMEA、QC工程表、コントロールプラン、標準作業、異常処置基準、成立確認結果 |
| 出口判定 | 量産条件で要求品質、工程能力、検出能力、異常時対応、作業再現性が確認されている |
帳票を作成すること自体が目的ではありません。
設計要求から工程条件、管理基準、異常時の処置までが、一貫した因果関係でつながっていることが重要です。
4.調達
| 目的 | 自社の要求を満たす材料、部品、設備、サービスを安定して調達する |
|---|---|
| 主な保証事項 | 調達仕様、供給者能力、工程能力、変更管理、不適合対応、供給継続性 |
| 主な引き渡し | 調達仕様書、検査成績、材料証明、変更情報、供給者評価、製造履歴 |
| 出口判定 | 供給者が要求を理解し、必要な能力、管理、変更連絡、異常対応を備えている |
受入検査だけで調達品質を保証することはできません。
供給者の工程能力、管理状態、変更管理、異常時対応まで含めて保証する必要があります。
5.製造
| 目的 | 設計・生産準備・調達から受け取った品質要求を、日々の量産工程で安定して実現する |
|---|---|
| 主な保証事項 | 標準条件の遵守、設備・治具・工具の正常性、材料状態、作業者力量、異常判断、対象品の保証判定 |
| 主な引き渡し | 適合製品、製造履歴、検査結果、異常履歴、処置記録、変更点情報 |
| 出口判定 | 工程が保証状態にあり、対象品が定められた条件を満たし、後工程へ引き渡せる |
製造部門は、受け取った設備や標準をそのまま使うだけではありません。
自工程で要求品質を実現し、保証できない製品や状態を未処置のまま後工程へ渡さない責任があります。
6.物流
| 目的 | 製品や部品の品質を劣化させず、必要な数量を必要な時期に、正しい相手へ引き渡す |
|---|---|
| 主な保証事項 | 保管条件、梱包、運搬、識別、数量、先入れ先出し、誤出荷防止、追跡可能性 |
| 主な引き渡し | 適切に保管・輸送された製品、出荷記録、ロット・製造履歴、配送情報 |
| 出口判定 | 品質、識別、数量、納期、出荷先が確認され、定められた条件で引き渡せる |
7.販売
| 目的 | 顧客要求を正しく把握し、製品・サービスの品質、価値、使用条件、保証範囲を誤解なく伝える |
|---|---|
| 主な保証事項 | 顧客要求、契約条件、品質情報、表示内容、保証範囲、納入条件 |
| 主な引き渡し | 契約内容、注文情報、顧客要求、製品情報、保証条件、市場情報 |
| 出口判定 | 顧客要求と提供内容が一致し、契約・表示・保証条件に誤認や不明確さがない |
8.アフターサービス・市場対応
| 目的 | 顧客が製品・サービスを適切に使用できるよう支援し、市場で発生した問題を把握・処置する |
|---|---|
| 主な保証事項 | 使用支援、保守、故障対応、保証範囲、市場不具合の追跡、重大問題の拡大防止 |
| 主な引き渡し | クレーム情報、故障品、使用実態、事故情報、原因解析結果、設計・工程への改善要求 |
| 出口判定 | 顧客への必要な処置が完了し、影響範囲と原因が管理され、関係部門へ反映されている |
9.経営・品質保証部門
| 目的 | 組織全体の品質保証体系を整備し、各部門の保証責任が機能するよう統制する |
|---|---|
| 主な保証事項 | 品質方針、責任と権限、重大問題の判断、監査、部門間調整、資源配分 |
| 主な引き渡し | 品質方針、品質目標、監査結果、経営判断、是正指示、資源配分 |
| 出口判定 | 重大リスク、未解決問題、品質実績が経営判断に反映され、必要な資源と処置が決定されている |
実施・確認・承認・保証責任を区別する
品質保証体系では、実際に作業を行う部門と、最終的な保証責任を持つ部門が同じとは限りません。
実施する部門
≠ 確認する部門
≠ 承認する部門
≠ 保証責任を持つ部門
例えば、品質部門が検査を実施しても、工程で品質をつくり込む責任まで品質部門へ移るわけではありません。
また、生産技術部門が設備や工程を設計しても、量産開始後の維持責任は製造部門や保全部門へ移る場合があります。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 実施 | 作業、設計、検査、評価、処置を行う |
| 確認 | 結果が基準を満たしているか確認する |
| 承認 | 次段階への移行や処置の妥当性を認める |
| 保証責任 | 最終的に保証事項の成立に責任を持つ |
検査や承認を別部門が行っても、品質をつくり込む責任や保証責任まで移るわけではありません。
重大リスクには独立確認を組み合わせる
全ての項目を担当者自身だけで判断してよいとは限りません。
特に次のような事項は、独立した立場による確認、審査、承認を組み合わせる必要があります。
- 安全
- 法規
- 重大品質特性
- 重要な設計変更
- 量産移行
- 出荷可否
- 市場措置
- 重大不具合の再発防止
ただし、全てを品質部門へ承認させればよいわけではありません。
それでは、実施部門が自らの責任を品質部門へ外部化するおそれがあります。
保証責任は実施部門が持つことを基本としながら、重大性やリスクに応じて独立確認を組み合わせます。独立確認は責任を代替するものではなく、判断の妥当性を補強する仕組みです。
各段階の手続き完了と保証成立は同じではない
品質保証では、手続きや帳票が完了したことと、その段階の保証責任が成立したことを区別する必要があります。
設計審査を実施した
≠ 設計品質が成立した
≠ 顧客要求を満たすことが確認された
生産準備を完了した
≠ 量産工程が成立した
≠ 実際に生産した製品を保証できる
各段階の手続きを完了したことは、活動を実施した証拠にはなります。
しかし、次段階へ進むためには、次が明確でなければなりません。
- 保証事項が成立している
- 必要な確認結果がそろっている
- 適用範囲が明確である
- 未解決事項が識別されている
- 残存リスクが評価されている
- 次段階が業務を開始できる状態である
- 判断者と承認者が明確である
各段階の手続きを終えたことと、その段階の保証責任が成立したことは同じではありません。
未解決事項は記録するだけでは管理にならない
新製品開発や生産準備では、全ての課題を完全に解決してから次段階へ進めるとは限りません。
ただし、未解決事項を一覧に記録しただけでは、管理された状態とはいえません。
未解決事項には、少なくとも次を明確にします。
- 未解決内容
- 影響する要求
- 想定されるリスク
- 影響範囲
- 暫定処置
- 適用条件
- 責任者
- 完了期限
- 完了条件
- エスカレーション条件
- 次段階移行の可否
- 承認者
未解決事項があるからといって、必ず次段階へ進めないわけではありません。
リスクを評価し、適用範囲や暫定条件を限定し、必要な責任者が承認した場合は、管理された状態で限定的に進める場合があります。
未解決事項が残る場合は、影響範囲、リスク、暫定処置、責任者、期限、完了条件を明確にし、次段階へ移行できるかを権限者が判断します。
品質保証の連鎖を成立させる「保証された引き渡し」
品質保証では、各段階の活動内容だけでなく、段階間の引き渡しが重要です。
例えば、設計部門から生産準備部門へ図面を渡しただけでは、十分な引き渡しとはいえません。
保証された引き渡しには、次の情報が必要です。
- 何を保証すべきか
- どの要求が重要か
- どのような使用条件を想定しているか
- どのばらつきを考慮しているか
- どの方法で確認するか
- どの状態なら次段階へ進めるか
- 適用範囲はどこまでか
- 未解決事項は何か
- 誰が判断・承認したか
成果物を渡す
≠
保証責任を果たして引き渡す
保証された引き渡しとは、後段階が、前段階の保証不足を追加調査、選別、手直し、条件探索によって恒常的に補わなくても、あらかじめ定められた条件で業務を開始できる状態です。
前段階の仕事が終わったかではなく、次の段階が定められた条件で仕事を始められるかを確認することが重要です。
品質保証を横断して支える保証手段
検査・測定は、製造後だけに行う独立した段階ではありません。
企画、設計、生産準備、調達、製造、物流、市場対応の各段階を横断して、保証判断を支える手段です。
1.検証・妥当性確認
検証
定めた要求や仕様どおりに、成果物が作成されているかを確認します。
- 設計図面が要求事項を反映しているか
- 設備仕様が工程要求を満たしているか
- 標準作業が工程条件を反映しているか
妥当性確認
実際の使用目的や使用条件に対して、意図した結果を得られるかを確認します。
- 実使用環境で必要な性能が出るか
- 量産条件で品質を安定して実現できるか
- 顧客の使用条件で安全性を確保できるか
2.検査・測定
検査・測定は、製品、部品、工程状態、業務成果物が要求へ適合しているかを確認する手段です。
- 何を確認するか
- 何のために確認するか
- どの方法で確認するか
- 測定能力は十分か
- どの基準で判定するか
- 不適合時に何をするか
検査は品質をつくる活動ではなく、各段階でつくり込まれた品質の適合を確認し、保証判断を補完する手段です。
3.変更管理
製品仕様、材料、設備、工程、作業方法、供給者などが変化した場合に、過去の保証成立がそのまま有効かを確認します。
- 何が変わるか
- どの要求に影響するか
- どの段階まで影響するか
- 適用範囲を超えるか
- 何を再確認するか
- 誰が承認するか
- どの記録を残すか
4.異常管理
異常を早期に認識し、保証できない状態を止め、隔離し、影響範囲を管理します。
- 正常・異常の基準
- 停止判断
- 対象品の隔離
- 関係部門への連絡
- 影響範囲の特定
- 復旧確認
- 再開承認
5.トレーサビリティ
トレーサビリティとは、製品や業務について、必要な履歴を追跡できる状態です。
- 材料・部品
- 製造設備
- 製造条件
- 作業者
- 検査結果
- 出荷先
- 変更履歴
- 異常・処置履歴
6.品質監査
品質監査では、規定や帳票が存在するかだけでなく、品質保証の論理が実際に機能しているかを確認します。
- 保証事項が明確か
- 責任と権限が明確か
- 成立条件に根拠があるか
- 確認方法が有効か
- 適用範囲が明確か
- 異常時の処置が機能するか
- 引き渡し条件が守られているか
- 問題が仕組みへ反映されているか
品質保証が成立している状態とは
品質保証が成立している状態とは、単に品質実績が良い状態ではありません。
少なくとも、次の十項目が満たされている必要があります。
- 顧客・社会・法規などの要求が明確である
- 要求が各段階へ展開されている
- 各段階の保証事項が明確である
- 保証特性と確認項目の関係が明確である
- 成立条件と確認方法に根拠がある
- 適用範囲が明確である
- 責任、権限、確認者、承認者が明確である
- 次段階への引き渡し条件が明確である
- 保証できない状態を止め、処置し、追跡できる
- 変更や問題を品質保証体系へ反映できる
要求が明確
↓
保証責任が明確
↓
成立条件と確認方法が明確
↓
保証判断が可能
↓
保証できない状態を処置可能
↓
次段階へ引き渡し可能
↓
問題と変化を体系へ反映可能
この状態が成立して初めて、品質保証体系が機能していると判断できます。
品質実績が良いことと品質保証成立は同じではない
市場不具合が発生していないからといって、品質保証体系が十分に機能しているとは限りません。
市場不具合が発生していない
≠
品質保証体系が成立している
不具合が発生していない理由には、次の可能性もあります。
- 使用条件が限定されていた
- 生産数量が少なかった
- 潜在問題がまだ顕在化していない
- 市場情報を把握できていない
- 偶然、悪条件が重ならなかった
反対に、不具合が発生したからといって、直ちに品質保証体系全体が機能していないとも限りません。
重要なのは、発生時に次ができることです。
- 対象製品を追跡できる
- 影響範囲を判断できる
- 顧客への必要な処置ができる
- 原因を解析できる
- 再発防止を設計・工程・標準へ反映できる
品質実績は品質保証の重要な結果ですが、品質実績だけで品質保証体系の有効性を判断することはできません。潜在リスク、変更、異常、影響範囲、再発防止を管理できることが必要です。
品質保証に必要な十二の考え方
1.顧客志向
判断の基準を、自部門の都合ではなく、顧客や使用者が必要とする価値に置きます。
2.品質第一
納期や生産性だけを優先し、保証できない製品や状態を後工程や顧客へ渡さないことです。
3.後工程はお客様
自工程の次の段階もお客様として考えます。前段階の保証不足を、後段階の追加確認や手直しへ押し付けないことが重要です。
4.プロセス重視
結果だけでなく、その結果を生み出した条件、方法、判断、履歴を確認します。
5.源流管理
問題が顕在化した場所だけでなく、要求、企画、設計、工程計画など上流段階へさかのぼって対策します。
6.標準化
良い結果を個人の経験だけに依存させず、誰でも再現できる方法として残します。
7.現地現物
推測だけで判断せず、実際の製品、工程、設備、作業、記録を確認します。
8.ファクトコントロール
印象、経験、立場だけではなく、事実とデータに基づいて判断します。
9.重点志向
全てを同じ強さで管理するのではなく、安全、法規、重要品質特性、高リスク工程へ資源を重点的に配分します。
10.PDCA
計画、実行、確認、処置を繰り返し、品質保証体系を維持・改善します。
11.再発防止
発生した問題を個別処置で終わらせず、原因を設計、工程、標準、管理体系へ反映します。
12.未然防止
過去のトラブル、変化点、リスク分析を活用し、問題が発生する前に対策します。
品質保証が機能していない組織の典型例
| 見かけ上の活動 | 品質保証として不足している点 |
|---|---|
| 完成品を厳しく検査している | 不適合の発生原因が設計や工程へ残っている |
| 品質問題を品質部門だけで処理している | 発生部門や責任部門の保証責任が曖昧 |
| 図面を発行して設計完了としている | 製造性、検査性、使用条件、未解決事項の確認が不十分 |
| デザインレビューを実施している | 指摘事項の処置や出口判定が不明確 |
| 試作品が良品だった | 量産条件での再現性、安定性、成立幅が未確認 |
| 生産準備日程を完了した | 工程能力、検出能力、異常時対応が未成立 |
| 調達品を受入検査している | 供給者工程、変更管理、異常対応が未確認 |
| 異常品を選別・手直ししている | 影響範囲の特定や再発防止が不足 |
| 未解決事項を一覧にしている | リスク、責任者、期限、完了条件が不明確 |
| 品質部門が承認している | 実施部門の保証責任が外部化されている |
| クレームへ個別対応している | 市場情報が企画、設計、工程へ戻っていない |
| 品質保証体系図が存在する | 実際の判断、責任、引き渡しと一致していない |
| 規定や標準が多い | なぜその活動で保証できるか説明できない |
| 品質実績が良い | 潜在リスク、変更、保証適用範囲が管理されていない |
その活動によって、なぜ顧客・社会・法規の要求を満たしていると判断できるのか。
自社の品質保証を確認する十の問い
- 誰に対して、何を保証するのか
- 要求の発生源、優先度、変更権限は明確か
- 保証事項、保証特性、確認項目を区別できているか
- 要求をどの段階・部門へ展開しているか
- 各段階の出口判定は明確か
- 保証の適用範囲は明確か
- 実施・確認・承認・保証責任を区別しているか
- 未解決事項のリスク、責任者、期限、完了条件は明確か
- 保証できない状態を止め、影響範囲を管理できるか
- 工程や市場で得られた情報を要求・設計・工程・標準へ戻せるか
要求を把握する
↓
保証責任を割り当てる
↓
保証事項と適用範囲を定める
↓
成立条件と確認方法を定める
↓
出口判定を行う
↓
保証できない状態を管理・処置する
↓
次の段階へ引き渡す
↓
判断根拠を記録・説明する
↓
問題や変化を体系へ反映する
この問いに各部門が同じ認識で答えられない場合、品質保証体系の責任分担、判断基準、引き渡し条件に未整備な部分が残っている可能性があります。
品質保証における製造部門と工程保証の位置付け
品質保証全体の中で、製造部門は設計、生産準備、調達などから受け取った要求を、実際の製品へ再現する責任を担います。
ただし、製造部門が工程条件を管理しているだけで、品質保証が成立するわけではありません。
品質保証
└ 企業活動全体で要求品質を保証する仕組み
└ 製造部門の保証責任
└ 工程保証
└ 工程管理
- 品質保証:企画から市場対応まで、組織全体で要求品質を保証する仕組み
- 製造部門の役割:製造段階で要求品質を実現し、後工程へ保証して引き渡す責任
- 工程保証:製造部門の保証責任を工程で実現する仕組み
- 工程管理:成立した工程保証を日々の量産で維持する活動
まとめ|品質保証は、組織全体で保証責任をつなぐ仕組み
品質保証は、品質部門が完成品を確認する活動ではありません。
顧客・社会・法規などの要求を明確にし、企画、設計、生産準備、調達、製造、物流、販売、アフターサービスへ展開し、各段階が自らに割り当てられた保証責任を果たす仕組みです。
品質保証の基本構造は、次のとおりです。
要求を正しく定義する
↓
各段階が保証責任を果たす
↓
次段階への出口判定を行う
↓
保証できない状態を次へ渡さない
↓
問題と変化を要求・設計・工程・標準へ戻す
各段階の手続きや帳票が完了していても、保証事項が成立していなければ、次の段階へ進める状態とはいえません。
また、一度保証が成立していても、製品、材料、設備、供給者、工程、使用条件などが適用範囲を超えて変更された場合は、保証の有効性を再確認する必要があります。
品質保証とは、品質部門が製品を確認する活動ではありません。組織の各段階が、自らに割り当てられた保証責任を果たし、次の段階が定められた条件で業務を開始できる状態をつくる仕組みです。
そして、保証できない状態を止め、影響範囲を管理し、得られた知見を要求、設計、工程、標準へ戻すことで、品質保証体系は維持・更新されます。
