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4M変更とは?品質管理における変化点管理の重要性

2023年3月16日

4M変更とは?

4M変更とは?

4Mとは、製造業における品質管理でよく用いられる概念で、"Man(人)"、"Machine(機械)"、"Material(材料)"、"Method(方法)"の頭文字を取って名付けられています。

これら4つの要素は、製造プロセスにおける主要な影響要素であり、いずれかが変更されると、製品の品質や生産効率に大きな影響を及ぼす可能性があります。

したがって、"4M変更"とは、これら4つの要素のいずれかが変更されるときのことを指します。これは新しい機械の導入、新しい材料の使用、新しい製造方法の導入、あるいは新たな作業員の採用など、さまざまな形で発生する可能性があります。

4M変更を適切に管理することは、製品の品質を維持し、生産効率を最適化するために重要です。

これは通常、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルとして知られる品質管理プロセスの一部として行われます。このプロセスを通じて、組織は持続的に品質改善を達成し、変更に対応して効率的に動作することが可能になります。

4M変更(変化点管理)とは?

製品品質にバラツキを与える要因の4M

  • Man(人)
  • Machine(設備工具)
  • Method(工程)
  • Material(材料)

上記が変化する時に、品質の維持・管理を確実に行うための仕組みで、4Mに変化が起こった場合、維持・管理状態が復元されているかどうかを見る管理です。

変化点管理の必要性

例えば、製造問題の品質不良の発生要因を解析すると、

  • 設備や治具/工具などの故障
  • 作業者の交替
  • 段取り替え

など、品質不具合の約2/3は日常作業の​変化点で発生していることがわかります。

つまり、いくら品質を造り込んだとしても、これらの変化点への対応がしっかりできていないと品質問題は止まらないということですので、この変化のポイントをリアルタイムに察知し、アクションを取る、発生する異常を未然に防止することが必要です。

変化点項目の把握

製品品質のバラツキに影響する4M「①Man(人):②Machine(設備工具):③Method(工程):④Material(材料)」についての要因が変化点管理においても、大前提となります。

「変化点管理の前提条件は自工程要件(品質を自工程で造りこむための要件)の明確な洗い出し」となるため、管理項目・管理ポイントの把握が、しっかりできていなければ、日々の工程管理もこの変化点管理をうまく機能せず、全ての品質維持・管理行為が無駄になってしまいます。

変化店の把握

4M変更とは?

4M変更とは、4つの観点から品質トラブルを防ぐ品質管理手法であり、4M「①Man(人):②Machine(設備工具):③Method(工程):④Material(材料)」の変化点管理と呼ばれるこの方法は、製造業において起こりうる品質問題のトラブルを防止するために用いられます。

製造が行われている現場を4つのMに分けて、それぞれの観点から分析を行って行くのが特徴で、「①Man(人)」は作業に従事するスタッフの視点からの分析です。次が「②Machine(設備工具)」で、製造を行う機械などに問題がないか分析します。3つ目は「③Method(工程)」で製造方法の視点から分析をすることも行います。そして最後は「④Material(材料)」で原料の観点からもチェックするのが特徴です。

これら4つの観点から、それぞれどのタイミングで変化が起こるか(変化点が発生するか?)をチェックして、変化点が発生したタイミングで起こりうる品質トラブルを発見します。

そして品質問題やトラブルが発生する前に、適切な対策を取るための問題点を発見する手法として、1つの視点ではなく4つの視点から品質トラブル発生を予測することで、より高品質な製品を製造できる手法として現場でも多く利用されているのが4M変更といえます。

変化点管理の定義と目的

変化点の定義

変化点とは、製造工程でバラツキを生じさせる原因である4M(Man人:Machine設備工具:Method工程:Material材料)が変化する時を言う。

変化点を、事前にわかっている項目(既知項目)と突然発生する項目(突発項目)に分類し、其々対応方法を設定する。

  • 「既知項目」・・・設計変更や新人作業者投入、連休工事など予め内容がわかっていて事前に確認ができるもの
  • 「突発項目」・・・突発年休や設備故障、部品異常など、いつ発生するかわからない変化に対して、発生直後即対応するもの

変化点管理の目的

昨今の社会情勢を見ると、不確実性が高まる厳しい経営環境下で、安定した製品品質の造り込みには、「変更管理」と「変化点管理」が重要となります。

変更管理は、企業が目的をもって意図的に変化を発生させるため「4M変更管理」とも言われたりもしますが、品質問題の改善・コストダウン・作業性向上などがあります。一方、変化点管理は、生産工程やサプライチェーンにおいて意図しない変化によって生じる品質問題の未然防止を目的としいます。

4M変更の事例

自工程要件の明確な洗い出しができていれば、変化した内容に対して、どのようなアクションが必要なのか?が整理できますので、例えば、設計変更された場合、最低限以下の4つの内容を確認することが明確になるはずです。

  • 確認①:今まで成立していた自工程要件が成立できるか?
  • 確認②:その変更内容が影響する管理ポイントは何?新たに追加する管理ポイントはないか?
  • 確認③:工程能力に変化はないか?影響有る場合、再確認しなければならない。
  • 確認④:品質保証の網が成立しているか?不成立の場合、どのように復元するか。

また品質以外にも、4M変更の事例として、「安全・設備・在庫」といった3つのトラブル予防と問題発生時における原因究明が挙げられます。

まず3つのトラブルとして最初に挙げられるのが「労働災害」、つまり安全です。人による原因で操作ミスが起こったり、機械の誤作動によってトラブルが発生したり、あるいは作業着などの不適切な着用によって機械に巻き込まれたりといった危険を未然に察知することが目的です。

次は「設備トラブル」を予防する目的です。機械の視点を持つことで機械の経年劣化やそれに伴う製造中断、歩留まり率の悪化といったトラブルをメンテナンスや使用方法の順守といった対策によって未然に防げるでしょう。

意外に知られていないのが「在庫トラブル」です。材料の視点を持たないと、欠品や過剰在庫、原料の劣化といった問題が発生します。場合によっては大量廃棄によって企業へ経済的な負担が発生するだけでなく、企業イメージが損なわれることすらあります。

また、「品質問題」が発生した場合も原因究明の手法として変化点管理は用いられます。4つの視点から何が問題発生の原因となっているか究明することで問題を最小限に抑えたり、再発防止をしたりといった目的が達成できるでしょう。

変化点としての対象項目(例)
Man
(人)
Machine
(設備/治具/工具/刃具)
Method
(工程)
Material
(物)
日常変動項目タクト変更:負荷変動も含む
ローテーション:多能工化/新人/実習者/期間従業員
受援:課内経験者/課外未経験者
職制変更:昇格/異動
年休・教育:全日/半日
一時離業/一時交替
健診等の半日程度~教育等のみ数日
直始業時/終業時
ライン外作業者変更:定期抜取検査または測定の作業者
改造工事:更新/能増/サイクルタイム変更
改修工事:更新/能増
設備移設:単なる移設と寄止めも含む
能増新設
ポカよけ装置の変更・移設
工具/治具/刃具/チップの変更や交換
検査治具、ゲージ新設や更新
パレット変更
ライン工事(休日/平日)
定期点検/保全/メンテ/清掃含む
工程変更:他の項目との重複もある
条件変更:設備/型潤滑剤/塗装通電時間/炉温
工法変更:直接品質に関わる場合と間接的な場合あり
サイクルタイム変更
タクトタイム変更
ライン変更
季節変動:温度や湿度
試行/テスト/トライ:材料/型処理/設備条件復帰/刃具や砥石等の寿命延長
設変
素材変更
材料変更
補助材の変更
精度修正、チューニング
突発管理項目一時離業(トイレ等)
突発年休:病気/忌引きなど
作業中断時フォロー:計画停止/他行程トラブル
ライン停止と再起動:チップ取替え
設備故障、設備異常
工具・治具・刃具の劣化/破損/摩耗
工具・治具・刃具の故障
全数検査治具・テスター故障や破損
抜取検査治具・テスター故障や破損
生産指示ダウン(ポカよけダウン)
Method(作業異常)
作業遅れ時フォロー
Method(品質異常)Method(災害)
異常処置
後追い点検/さかのぼり点検
部品不良
誤・欠品で流動せざるを得ない場合
地震、台風
火災、事故
停電、エア停止

4M変更の通知義務が必要な理由

4M変更の通知義務が必要な2つの理由

4M変更の通知義務が必要な理由として、すぐに問題の予防策が立てられる、問題の原因追及ができるといった理由が挙げられます。

各部署で4M変更の通知義務を徹底することで、製造する上での品質管理が容易になるため、起こりうるトラブルを予測したり、変化への対処法を打ち立てたりといったことが実現できるため、問題の予防策が立てられます。

一方、4M変更の通知義務を徹底していれば、問題が起こった際、「どの変化点で問題が発生したのか?」といった原因追及も迅速に行えますので、予防や原因追及がスムーズになるという理由で4M変更の通知義務が必要といえます。

品質向上活動を行う企業には必須

さらに複数の企業から部品を購入し製造を行っている企業ではサプライヤーと4M変更の通知義務を締結することは必須であり、自社が製造するうえで未然に製造トラブルを回避するために、より強固な予防策を取る上で重要だからです。

サプライヤーの人員変更や機械の更新、さらには調達材料の変更、製造手法の変更といった4Mを発注側で把握しておくことで、問題発生時にはサプライヤーまでさかのぼって原因追及ができるため、製品の品質管理を徹底することが可能になるからです。

このように4M変更の通知義務を徹底することで、ここまでやっておけば大丈夫という品質まで高めることができ、さらにその変化を管理できるようになります。

4M各変化点の品質管理ポイント

それぞれの要素における品質管理ポイントを以下に示します。

①Man(人)

変化点での品質不具合を発生させないためには、以下のような具体的な取り組みが効果的です。

【ワークスタンダードの遵守】

変更点が発生する場合、事前に変更点に関するワークスタンダードを作成し、関係者に共有します。具体的な作業手順や品質基準を明確にし、変更点を正確に実施することが重要です。例えば、新しい部品の導入時には、関連する作業手順や検査基準を明確にして、正確な組み立てと品質管理を行います。

【チェックリストの使用】

変更点を管理するためにチェックリストを活用します。変更点の実施前と実施後にチェックリストを用意し、必要な手順や確認項目を一つずつ確認します。例えば、新しい工具や設備の導入時には、チェックリストを使用して必要な設定や検査項目を確実に実施します。

【変更点のリスク評価】

変更点を実施する前に、リスク評価を行います。変更が品質に与える潜在的な影響を評価し、それに基づいて対策を検討します。例えば、生産ラインに新しい工程を導入する場合、その工程が他の工程に与える影響や品質リスクを評価し、必要な対策を講じます。

【変更点のトレース性の確保】

変更点を追跡し、問題が発生した場合に遡及的な調査や対策を行うために、変更点のトレース性を確保します。例えば、変更点の実施日時や担当者、関連する文書などを適切に管理し、必要な情報を迅速に取得できるようにします。

【変更点に関するトレーニングと教育】

変更点に関わる従業員に対して、適切なトレーニングと教育を提供します。変更点の理解や実施方法、品質管理の重要性などについて従業員を教育し、必要なスキルや知識を身につけさせます。例えば、新しい製品の導入に伴う変更点に対して、関連する従業員に対して製品の特性や品質基準についてトレーニングを行います。

【コミュニケーションと協力の促進】

変更点の管理では、関係者間のコミュニケーションと協力が不可欠です。関係部署や関係者間での円滑な情報共有や意思疎通を促進し、変更点に対する共通理解を築きます。例えば、変更点の実施前に関係部署とのミーティングやコラボレーションを行い、変更点に対する期待や課題を共有し合います。

【監視と定期的な評価】

変更点の効果を確認するために、監視と定期的な評価を行います。変更点の実施後、一定の期間をおいて品質や生産性などの指標を監視し、変更の効果を評価します。必要に応じて調整や追加の改善を行い、持続的な品質向上を図ります。

これらの取り組みにより、変化点での品質不具合を最小限に抑えることができます。重要なポイントは、変更の影響を評価し、作業手順や品質基準を明確にし、コミュニケーションと協力を促進することです。また、変更後の品質監視とトレースバックを通じて、変更の効果と品質への影響を定量化することが重要です。

②Machine(機械)

変化点での品質不具合を発生させないためには、以下のような具体的な取り組みが効果的です。

【機械の効率化と改善】

溶接工程において、作業時間を短縮し効率を向上させるために、新しい溶接機やロボットシステムの導入を検討します。これにより、溶接作業の自動化や高速化が可能となり、タクトタイムの短縮につながります。
具体的な例として、溶接ラインにロボット溶接装置を導入することで、人手による溶接作業の代替や複数の作業を同時に実行できるようになります。これにより、作業効率が向上し、タクトタイムの短縮が図られます。

【機械の点検とメンテナンス】

溶接機やロボットシステムの点検と定期的なメンテナンスを行うことで、機械の正常な動作を確保します。定期的な点検により異常や故障を早期に発見し、予防保全を実施します。また、メンテナンスによって機械の寿命を延ばし、安定した溶接品質を確保します。
具体的な例として、溶接機の電極やガス供給装置の点検と交換を定期的に行います。また、ロボットシステムのギヤやモーターの点検やグリースアップも重要です。これにより、機械の正確な動作と安定した溶接品質を維持します。

【プロセスの改善と最適化】

溶接工程におけるプロセスの改善と最適化を行うことで、作業効率の向上とタクトタイムの短縮を図ります。具体的な例として、溶接パラメータの最適化や溶接位置の最適な配置を検討します。これにより、不必要な作業やムダな移動を削減し、効率的な溶接作業が可能となります。
具体的な例として、溶接パラメータの最適化によって、溶接時間や電力の節約が可能となります。また、溶接位置の最適な配置によって、作業者の移動距離を短縮し、作業効率を向上させることができます。

【データの収集と分析】

溶接工程におけるデータの収集と分析を行うことで、品質の向上とタクトタイムの短縮に役立ちます。具体的な例として、溶接パラメータや作業者の生産性データを収集し、品質や生産性のトレンドを分析します。
データ分析によって、問題点や改善のポイントを特定し、適切な対策を立てることができます。例えば、溶接パラメータの調整や作業者のトレーニングの見直しを行い、品質不良や作業効率の低下を改善します。

これらの具体的な取り組みによって、自動車会社の溶接工程においてタクトアップを実現し、品質不具合を最小限に抑えることができます。機械の効率化と改善、定期的な点検とメンテナンス、プロセスの改善と最適化、データの収集と分析を組み合わせることで、効果的なタクトアップ対策を実施できるでしょう。

③Method(工程)

変化点での品質不具合を発生させないためには、以下のような具体的な取り組みが効果的です。

【プロセスの標準化と改善】

溶接工程における作業手順や品質基準を明確化し、従業員間での作業の一貫性を確保します。例えば、溶接パラメータやクリーンアップ作業の方法を統一し、品質の安定性を向上させます。また、定期的な改善活動を実施し、工程の効率化や品質向上に取り組みます。

【問題解決とルートコーズ分析】

発生した品質不具合やトラブルに対して、迅速に対応し、その原因を特定します。ルートコーズ分析を行い、問題の根本原因を明確にし、再発を防ぐための対策を講じます。例えば、溶接不良が発生した場合は、パラメータの調整や作業者のトレーニングなど、適切な対策を講じて品質を改善します。

【品質管理ツールの活用】

PDCAサイクルや統計的手法を活用して、工程の品質を管理します。例えば、PDCAサイクルを適用して改善活動を計画・実行・評価し、継続的な品質向上を図ります。また、統計的手法を使用して品質データを分析し、品質の異常や傾向を把握し、予防的な対策を講じます。

具体的な業務例として、日々の溶接作業において以下の取り組みが挙げられます。

  • 溶接前に準備作業を徹底的に行い、材料のクリーニングやパーツの正確な位置合わせを行う。
  • 溶接パラメータの設定を標準化し、作業者が適切なパラメータで溶接作業を行えるようにする。
  • 溶接作業中に発生した品質異常や不良部位を記録し、ルートコーズ分析を行う。
  • 定期的なミーティングや改善活動を通じて、溶接工程の問題点や改善点を共有し、チームでの意見交換や改善提案を行う。
  • 品質データの定期的な収集と分析を行い、品質の傾向や異常を把握する。例えば、溶接不良の発生頻度や不良箇所の集中度を把握し、改善の優先順位を決定する。
  • 溶接工程における機械や装置の定期的なメンテナンスと点検を実施し、正確な動作と安定した品質を確保する。
  • 変更点が生じた場合は、その内容を共有し、変更に伴う品質への影響を評価する。適切な手続きを経て、変更点を適切に管理し、品質に影響を与えないようにする。
  • チーム内でのコミュニケーションと協力を促進し、情報共有や意思疎通を円滑に行う。定期的なミーティングや連絡会議を通じて、課題や改善案を共有し、チーム全体で品質向上に取り組む。

これらの具体的な取り組みによって、溶接工程における変化点での品質不具合を最小限に抑えることができます。定量的な品質目標の設定や定期的な改善活動の実施、コミュニケーションの活性化などを通じて、溶接工程の品質管理を確立し、品質の向上と効率化を実現しましょう。

④Material(材料)

変化点での品質不具合を発生させないためには、以下のような具体的な取り組みが効果的です。

【原料の選定と検査】

使用する材料の品質を確保するために、信頼性の高いサプライヤーからの原料の選定や検査を行います。例えば、溶接に使用する溶接材料の強度や耐久性などの物性を確認し、適切な材料を選定します。また、サンプリングや非破壊検査などを通じて、材料の品質を定期的にチェックします。

【サプライヤー管理】

サプライヤーとの継続的なコミュニケーションを図り、品質管理における共通の目標を共有します。定期的な品質会議やサプライヤー評価を行い、サプライヤーの品質管理体制や改善活動を確認します。さらに、サプライヤーとのパートナーシップを築き、長期的な安定供給と品質向上に取り組みます。

【ロット管理とトレーサビリティ】

各ロットやバッチごとに材料の情報を明確に管理し、品質のトレーサビリティを確保します。例えば、材料のロット番号や生産日付、出荷先などの情報を記録し、必要な場合に迅速に追跡・検証できる体制を整えます。これにより、品質不具合が発生した際には、該当する材料の特定と原因分析が迅速に行えます。

具体的な業務の例としては、溶接工程における材料管理を考えてみましょう。溶接に使用する溶接棒や溶接ワイヤーなどの材料について、以下の取り組みが考えられます。

  • サプライヤーからの材料の出荷時に品質検査を実施し、仕様に合致していることを確認する。
  • 材料ごとにロット番号を管理し、品質データや生産日付などの情報を記録する。
  • 溶接棒や溶接ワイヤーの保管状態や保管期限を管理し、劣化や錆びの発生を防ぐために適切な環境で保管する。
  • 溶接棒や溶接ワイヤーの使用前に必要な検査を実施し、品質基準に合致していることを確認する。
  • 溶接作業時に使用する材料のロット番号や品質情報を記録し、溶接品質と関連付けてトレーサビリティを確保する。
  • 発生した品質不具合や不良品について、迅速に原因分析を行い、該当する材料のロットを特定して対応策を検討する。

これらの取り組みにより、溶接工程において材料による品質不具合を最小限に抑えることができます。適切な材料の選定と管理、サプライヤーとの密なコミュニケーション、トレーサビリティの確保が重要です。また、定期的な品質検査や品質データの記録、迅速な原因分析と対応策の実施も欠かせません。

これらのポイントを適切に管理することで、4Mの変化点における品質を確保することができます。品質管理においては、各要素が相互に関連し合っており、一つの要素の問題が他の要素にも影響を及ぼす可能性があるため、総合的なアプローチが求められます。

変化点管理ボードとは?

変化点を視える化する変化点管理ボード

職場の全員が目で見て仕事の進み具合が「正常か?異常か?」の判断を素早くでき、対策につなげていくためのものですので、特別知らされなくても、目で見て職場の実態を正しく把握でき、かつ全体の中の自分の位置・役割も理解でき、自主管理を可能とするものです。

4M変更には、変化点を管理する変化点管理ボードが用いられ、変化点管理ボードにより変化点が起こったタイミングがすぐに分かり、4M変更を速やかに実現できるツールといえます。

企業によってその内容は若干異なるものの、大きなホワイトボードを用意し、4M変動管理表を掲示・記載し、従業員内で共有する目的で利用されます。

さらに追加情報として本日の工程表や注意点、出荷状況の他、対応マニュアルも変化点管理ボードに追加している例も見られます。

変化点管理ボードの活用事例

また、シンプルな変化点管理ボードとしては、ホワイトボード上に表を作り縦の列には作業着、設備、製品や部品、その他といった項目を設定し、横の列には変化点と対応策を書くという手法を取り入れ、当日影響が出そうな変化点を挙げて記入し、並行して対応策を検討した結果を記入します。

各社とも工夫をこらして変化点と対応策を共有できるホワイトボードなどに記入しているのが特徴で、「変化点が発生して結果どうなったか?」といった点を書いたり、上長が内容にチェックを入れるチェック欄を設けたりといった工夫をしている場合もあります。

いずれにしても分かりやすい場所に変化点を記載したボードを設置し、従事者全員で共有できるようにしているボードが変化点管理ボードといえるでしょう。

4M変更管理マニュアルが必要な理由

4M変更管理マニュアルとは、4Mの変更点を管理表に記載するためのルールが書かれたマニュアルであり、このマニュアルが必要な理由として「①記述方法の統一、②管理方法の統一、③責任者の明確化、④基準値の把握」といった点が挙げられます。

記述方法を統一する

まず、「①記述方法を統一」するという意味でもマニュアルを用意することは重要で、業務で使用する専門用語が各従業員ともバラバラであったり、詳細な変化点を記入する従業員もいればそうでない従業員もいるといった問題が発生します。そうなると品質管理が難しくなり、問題発生時の原因究明もしづらくなります。

管理方法を統一する

次に「②管理方法の統一」も必要で、どのような変化点があったら、どう対処するといった管理がマニュアルで明文化されていないと、各ショップの対応がバラバラになります。例えば人の変化点の場合、新人が配置されたらベテランを一人指導者として配置するといった共通の対処法ができるようになるでしょう。

責任者の明確化

また、マニュアル作成により「③責任者を明示する」ことで責任追及や管理すべき従業員がわかります。問題が発生した時、誰も管理者として担当していなかったということも未然に回避できるでしょう。

基準値の把握

最後が「④基準値の把握」で、記述の統一にも近いものがありますが、機械の温度が工場内の気温の変化で上昇している場合、何度以上で変化点として記載するかといった点です。このように4M変更の変化点の基準を設定し、全員で共有するためにもマニュアルは重要です。

PDCAサイクルと4M変更

PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の頭文字を取ったもので、品質管理のための重要なフレームワークです。4M変更はこのPDCAサイクルにおける重要な要素であり、変更を適切に管理することで品質のバリエーションを最小限に抑えることが可能です。 

①Plan(計画)

4Mの各要素が製品の品質にどのように影響を及ぼすかを理解し、変更が必要な場合の計画を作成します。

例えば、会社が新しい製品ラインを立ち上げることを計画しているとします。新しい製品ラインでは、新しい機械を導入し、新しい材料を使用し、新たに雇用された作業員が製造作業を行うことを想定しています。これらはすべて4Mの変更です。

【Man(人)】

新たに雇用された作業員のスキルレベルや熟練度が製品の品質に影響を及ぼす可能性があります。これを計画段階で考慮に入れ、新人の研修計画を作成したり、適切なスキルを持つ作業員を雇用することが必要です。

【Machine(機械)】

新しい機械を導入すると、製品の品質や生産効率に大きな影響を及ぼす可能性があります。どの機械を選択するか、新しい機械の操作方法を習得するためのトレーニングが必要な場合、その計画も作成する必要があります。

【Material(材料)】

新しい材料は、製品の性能や品質に影響を与えます。したがって、新しい材料の品質を確保するための供給元の選定、材料の取り扱いや保存方法の計画などが必要です。

【Method(方法)】

新しい製品ラインのための製造プロセスや手順が確立されていない場合、それらを開発し、ドキュメンテーションを作成することが重要です。また、これらの新しい手順をスタッフが遵守するためのトレーニング計画も必要です。

これらの計画は、新しい製品ラインの成功を確保し、期待される品質基準を達成するための重要なステップです。また、これらの計画はPDCAサイクルの一部であり、実行、評価、改善のステージを通じて見直しや調整が行われます。

②Do(実行)

計画した4Mの変更を実行します。

【Man(人)】

計画した通り、新たに雇用した作業員を研修し、新製品ラインで必要となる特定のスキルを身につけさせます。これには、新しい機械の操作方法や新しい材料の取り扱い、新しい製造プロセスについて学ぶ時間が含まれます。

【Machine(機械)】

計画に基づいて新しい機械を導入します。これには、機械の設置と設定、初期のテストラン、そして必要に応じて作業員へのトレーニングが含まれます。このステージでは、機械が正確に設定され、適切に機能することを確認します。

【Material(材料)】

計画した通りに新しい材料を調達します。これには、新しい供給元からの初めての材料の配送が含まれます。また、材料の取り扱いや保管方法についてのプロセスを実行します。

【Method(方法)】

新しい製造プロセスや手順を実装します。これには、作業員が新しいプロセスに従って製品を製造することが含まれます。また、新しい製造プロセスが適切に実行されていることを確認するための監視と評価も行います。

これらの"実行"のステップは、計画した4Mの変更を具体的に行うフェーズです。このステージでは、品質や生産効率に影響を及ぼす可能性のある問題を早期に特定するために、定期的なモニタリングと評価が重要です。

③Check(評価)

変更が製品の品質にどのような影響を及ぼしたかを評価します。

【Man(人)】

新たに雇用した作業員のパフォーマンスを評価します。新しいスキルやプロセスを適切に理解し、適用できているか、また作業の質と効率が期待されるレベルに達しているかを確認します。

【Machine(機械)】

新しい機械のパフォーマンスと信頼性を評価します。機械が定められた基準に従って正確に機能しているか、また予期しない停止や故障が発生していないかを確認します。

【Material(材料)】

新しい材料が製品の品質にどのように影響しているかを評価します。供給元から提供される材料の品質が一貫しているか、また製品に組み込まれたときのパフォーマンスが期待通りであるかを確認します。

【Method(方法)】

新しい製造プロセスが効果的であるかを評価します。製造時間、廃棄物の量、製品の欠陥率などの指標を用いて、新しい手順やプロセスが期待した結果を達成しているかを判断します。

これらの"評価"のステップは、計画と実行の結果を分析し、必要な改善点を特定するための重要なフェーズです。得られたデータと情報は、次の"Act(改善)"ステージで活用されます。

④Act(改善)

評価の結果に基づいて、4Mの変更を最適化または改善します。

【Man(人)】

評価の結果、新たに雇用した作業員のパフォーマンスが期待値に達していない場合、さらなるトレーニングや教育が必要かもしれません。この場合、トレーニングプログラムを改善し、作業員のスキルと熟練度を向上させることで品質を改善します。

【Machine(機械)】

新しい機械が頻繁に故障するか、または期待したパフォーマンスを達成しない場合、機械のメンテナンスプロセスを見直すか、別の機械に切り替えることを検討するかもしれません。

【Material(材料)】

供給元から提供される材料の品質が一貫性がない場合、または材料が製品のパフォーマンスに不適切な影響を与えている場合、別の供給元を探すか、材料の仕様を調整することを検討するかもしれません。

【Method(方法)】

新しい製造プロセスが期待した生産効率を達成していない場合、または製品の欠陥率が高い場合、製造プロセスを見直し、改善する必要があります。これには、新しい手順の開発、作業員の再教育、または製造環境の改善などが含まれるかもしれません。

"Act(改善)"ステージは、計画と実行、評価の結果を基に、現状のプロセスを改善し、品質を向上させるための行動を起こすフェーズです。これらの改善活動は、再び"Plan(計画)"ステージにフィードバックされ、PDCAサイクルが繰り返されます。これにより、組織は持続的な品質改善を達成することができます。

4Mの変更は絶えず起こり得るため、PDCAサイクルを通じてこれらの変更を継続的に管理することは、製造業における品質の維持と改善に不可欠です。この適応的なアプローチにより、組織は生産プロセスの変化に対応し、競争力を維持することが可能になります。

最後に

4M変更とは、品質管理における変化点管理の重要性を示す手法です。変化点管理は、製品やプロセスにおいて行われる変更を追跡し、管理することで品質の維持や向上を図るものです。具体的な変更要素である「4M」は、Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(方法)を指し、これらの変更によって品質や生産性に影響を及ぼす可能性があります。

変化点管理の目的は、変更による品質の低下やトラブルの予防、効率的な改善活動の実施などです。これには、変更の通知義務や変化点管理ボードの活用、4M変更管理マニュアルの作成などが必要です。PDCAサイクルも重要であり、変更の計画・実施・評価・改善を繰り返すことで、効果的な変化点管理を実現します。

品質管理においては、変更は避けられないものです。しかし、適切な変化点管理を行うことで、品質の維持や改善が可能となります。4M変更は、この変化点管理を促進し、組織全体で品質向上に取り組むための重要な手法です。