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統計的な品質管理手法「実験計画法」とは?

2023年3月10日

統計的手法

実験計画法とは?わかりやすく解説

実験計画法とは?

実験計画法とは、データ分析を目的とする統計学での応用分野で、簡単に言えば効率のよい実験方法を設計し、結果を適切に解析することを目的とする統計学の応用分野です。実験計画法の基本原則は以下の3つです。

  • 局所管理化:影響を調べる要因以外の全ての要因を可能な限り一定にする
  • 反復:実験ごとの偶然のバラツキ(誤差)の影響を除くために同条件で反復する
  • 無作為化(ランダム化):制御できない可能性のある要因の影響を除き、偏りを小さくするために条件を無作為化する

実験計画法の事例とは?

よく例として挙げられるのが、料理の鍋の作り方です。
鍋料理は3条件を変えることで料理の味が決まります。

  1. 鍋の種類
  2. 味つけ
  3. 調理方法

この3条件をどのようにコントロールすれば最高の鍋料理を生み出せるのか?表を作って、実験の計画を立てる手法が実験計画法です。

鍋を例にしたケースでは、鍋の種類を土鍋、アルミ鍋の条件、味付けを塩味、みそ味の条件、調理方法をふたの有り、なしの条件といった項目を用意し、それをもとに実験を行って、一番おいしい鍋の条件を決定するというのが実験計画法を利用した実験方法です。

実際の生産現場では、これらよりもさらに細かな条件を設定して最適な問題の解決や新しい価値の創造といったことを行います。

また、実験計画法を導入して現状の改善を行うケースもあり、いずれにしても効率のよい実験方法を設計し、結果を適切に解析する方法が実験計画法です。

実験計画法の3つの基礎知識「初心者向け」

実験計画法の基礎知識として「要因(因子)・水準・多元配置」の3つについて知っておくと、かなり理解が進むでしょう。

3つの基礎知識 説明画像

基礎知識①:要因(因子)

まず、要因(因子)とは、実験のための条件項目です。先ほどの鍋の例でいえば、鍋の種類、味付け、調理方法といった条件が要因(因子)といえますが、この要因(因子)をコントロールすることで様々な実験が可能となります。

基礎知識②:水準

次の水準は、簡単に言えば要因(因子)の具体的な内容で、今触れた鍋の例でいえば、水準は鍋を土鍋にするかアルミ鍋にするか、味付けを塩味にするか、みそ味にするか、調理方法はふたを使うか、使わないかといった項目ですが、実験によっては水準が増える場合もあります。

例えば、味付けが塩味、みそ味の2つの水準でしたが、実験によっては塩味、みそ味、とんこつ味といったように水準が増える場合も珍しくありません。

基礎知識③:多元配置

最後の多元配置とは、全ての条件の組み合わせを表にしたもので、鍋の例でいえば鍋の種類、味付け、調理方法の全ての組み合わせを表にします。

それぞれ2条件ずつあるので2×2×2で8種類の鍋を実験で作ることになり、この8種類がどのような鍋なのか実験の組み合わせを表にまとめたのが多元配置といえます。実験計画法を用いることで8種類の鍋から一番おいしい鍋が選定できます。

なぜ「実験計画法は使えない」といわれるの?

どのような組み合わせで実験をすればいいか?表などで簡単に整理し、理解できるのが実験計画法ですが、使えない場合も実は意外に多くあります。

現実的でない実験数

その理由は、要因や水準の多さ、現実的でない実験数ができてしまうといった点です。

鍋の例ではシンプルに3種類の要因(鍋、味付け、調理法)、2種類だけの水準(土鍋・アルミ鍋、塩味・みそ味、ふたの有・無)といったものでしたが、実際に運用する場合は、要因も3種類にとどまることはありませんし、水準も2種類のみということは考えられないでしょう。

このように要因や水準が無数に生まれてしまうという点で実験計画法が使えないといわれてしまうのです。

実験数が膨大な数となる生産現場

次に深刻な問題として実験数が膨大なものになります。

先ほどのシンプルな鍋の例でさえ8種類も鍋料理を作らなければなりません。一方で、要因や水準がさらに増える実際の現場では、それ以上に多くの実験回数をこなさなければならないです。

しかも鍋のようにすぐ用意して調理できる場合なら問題ありませんが、1回1回の実験に時間がかかり、しかもそれが数百種類もの実験回数だとしたら、まず実用的な手法でないこと理解できます。

このようにシンプルで実験回数の少ない簡単な実験であれば実験計画法も有用ですが、無数の要因と水準があり、実験回数が多数になる場合は使えない手法となってしまうのです。

実験計画法の直交表って何?

直交表って何?説明前画像

直交表とは?

実験計画法の直交表とは、先ほど紹介した多元配置の実験数を減らしてくれる表のことです。

実験計画法の弱点として無数の実験回数を行わなければならないという理由から使えないと感じられていましたが、その実験回数を減らしてくれるのが直交表なのです。

簡単にいえば、全ての組み合わせが同じ数だけ使われているもののみをしたもので、先ほどの鍋の例では8回の実験が必要(要因3つと水準2で2×2×2=8)になります。

これを全ての実験が書かれた多元配置にすると、条件のかぶっている列が見えてきますが、これに注目したのが直交表で、方法としては実験の組み合わせを羅列した多元配置(8種類の実験の組み合わせがリストアップされた表)を作成します。

そして最初に実験する鍋をアルミ鍋、塩味、ふた無しといった3つの水準のいずれかを持っている実験のみを残して表にすると4つの実験のみを記載された表ができます。

これが直交表で、この4つの実験をするだけで8つの実験を行った場合と同じ結果が得られるとされる手法です。

実際に運用する場合は水準をナンバリングして運用することがほとんどですので、たとえばアルミ鍋を鍋の水準1、土鍋を鍋の水準2といったような形で運用します。

これを知っておくと次の実験計画法の種類が理解しやすいでしょう。

直交表の補足

補足として、「4」つの方法だけで済む鍋の実験で用いた「2の3乗の種類がある」直交表を直交表L4(2の3乗)(エルヨン)と呼び、LはLINE(行)の数を指します。

そのため、水準が3つある場合は3水準と言い、直交表は3のn条系と呼ばれます。たとえば、鍋の水準に土鍋、アルミ鍋以外にも銅鍋が入って3つの水準になった場合にそう呼ばれるでしょう。

実験計画法にはどんな種類がある?

実験計画法は、直交表と分散分析の2種類に分けられ、実験計画法の効率が悪い部分について効率よく行ったり、適切な分析を行ったりするために分けられているのが特徴です。

直交表

まず、直交表は先ほども紹介したように実験数を減らして効率の良い実験計画を立てる方法ですので、先ほど紹介したように実験回数を飛躍的に減らして効率の良い実験が計画できます。

分散分析

次に分散分析は、「分散」(数値データのばらつき具合を表すための指標)による平均値を求め、各実験結果が平均からどの程度離れているか分析する方法ですので、流れの概要としては、3ステップで行われることがほとんどです。

多元配置などで実験を行った後に各因子の効果を分離します。

データと平均値差の2乗を合計して出てきた値である平方和(平均値からのデータのズレがわかる計算方法)を求め、各実験の平均を超えた程度から実験内容を検討します。

分散分析表(観測された分散比や要因、平方和、自由度、F値※データのばらつき具合、P値※平均と確実にとびぬけた数値かどうかわかる値)によってまとめる手法です。

各種の計算を行い、実施した実験が平均に比べてどの位とびぬけた値で、その確実性はどの程度なのかを計算で求める手法です。