- 「問題解決ができなくて」
- 「問題の解決手法がわからなくて」
という悩みを相談されることがよくあります。
原因と考えられる要因はたくさん把握されていますが、真の問題の原因となる真因まで把握できている人はいませんので、同じ問題が繰り返し、繰り返し、発生してしまうという状況になっています。
真因が把握できていれば、問題解決は非常にシンプルになります。
改善するまでに時間がかかるものだとしても、進むべき道が明確になっている訳ですので。
トヨタに学ぶ問題解決手法!なぜなぜ分析(RCA分析)
- 「問題解決ができなくて」
- 「問題の解決手法がわからなくて」
という状況のとき、どうやって改善しますか?
ブログの「なにが問題で、どう解決すればいいのか?」解決の糸口をなかなか見つけることはできない方は多いのではないでしょうか?
そこで、原因分析や問題解決に使えるフレームワークとして、私も13年間、トヨタの品質管理部門で勤務して学んできた、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)が取り入れている「5why」があります。
なぜなぜ分析「5why(Five whys)」とは?
「5why」は、問題解決する際に「原因と結果との関係を明らかにする」使う手法です。
つまり、基準と現状とのギャップの要因(原因)を明確にする手法です。
根本的な真因を発見する「5why」
問題が解決しないのは、真因が特定されておらず、その真因が残ったままだから、問題が繰り返し発生してしまうのです。
解決すべき課題を発生させている原因を究明し、真の要因を突き詰め、その真因を取り除くことによって目標を達成できます。(真因とは問題を発生させる真の要因のこと)
5W1Hとは
物事を具体的に述べるときに便利なフレームワーク「5W1H」というのがあります。
この手法は、疑問を持って幅広く問う場合に使われますが、この5W1Hで、問題解決では表面的な問題の発見に留まってしまい、対策も表面的なものとなってしまいます。
- Why(なぜ:必要性の追求)
- What(なに:対象物)
- Where(どこ:場所)
- When(いつ:時期)
- Who(だれ:人)
- How(どのように:方法)
5Whyとは
トヨタの現場では、根本的な真因を発見する方法として「5Why」を使います。
- Why(なぜ:原因を考える)
- Why(なぜ:その先の原因を考える)
- Why(なぜ:そのまた先の原因を考える)
- Why(なぜ:そのまたまた先の原因を考える)
- Why(なぜ:そのまたまたまた先の原因を考える)
問題点の真因を発見するには?
問題点の真因の発見のためには、先入観を持たずに白紙になって観察することや、事実の背後にある真実を発見することが重要になります。
トヨタでは、現地・現物・現実という「三現主義」を徹底していましたので、「この目的は何か?」を明確にして上で、半日ぐらいは問題が発生する現場にジ~ッと立ち観察していました。
様々な要因のうちから真因を見極める
この「5why」は、「なぜ?」を5回問うことにより、様様な要因のうちから真因を見極めるための手法です。
もっと噛み砕いていえば、問題が起きた時に「なぜ問題が起きたのか?」と掘り下げて問うことです。
これは、トヨタの元副社長の大野耐一氏の著書「トヨタ生産方式」の中で、5回の「なぜ」を自問自答することで、事象の因果関係や、真の原因を追究できると書かれています。
なぜなぜ分析が必要なのか?
問題の真因(根本的な原因)にたどり着く
この「5why」は、「なぜなぜ分析」や「なぜなぜ問答」ともいわれています。
この「なぜ?」を5回繰り返す目的は、問題の真因(根本的な原因)にたどり着くためであり、因果関係をつきつめていくための手法として、この「5why」が有効なのです。
「なぜ?」を繰り返さないとどうなるのか?
その場合は、表面的な思考・行動に陥りがちになります。問題の真因まで辿り付けないからです。
様々な要因が上がると思いますが、要因はあくまでも、1つの可能性なだけです。事実に基づく管理であるファクトコントロール(Fact Control)の思考こそが、真の原因にたどり着くことができます。
なぜ?と問いかけるところが、5whyのスタートです。
「5why」は、こう考える
「トヨタ生産方式(著:大野耐一氏)」より
さきほど挙げた「トヨタ生産方式(著:大野耐一氏)」では、機械が動かなくなったと仮定して、「5why」の実例が紹介されています。
- 「なぜ機械は止まったか」→「オーバーロードがかかって、ヒューズが切れたからだ」
- 「なぜオーバーロードがかかったのか」→「軸受部の潤滑が十分でないからだ」
- 「なぜ十分に潤滑しないのか」→「潤滑ポンプが十分くみ上げていないからだ」
- 「なぜ十分くみ上げないのか」→「ポンプの軸が摩耗してガタガタになっているからだ」
- 「なぜ摩耗したのか」→「ストレーナー(濾過器)がついていないので、切粉が入ったからだ」
これが真因を突き詰めるということ
1回目の「なぜ?」では、機械は止まったのは、ヒューズが切れたことが原因として挙げられました。
しかし「なぜ?」を繰り返して、5回目の「なぜ?」では、ストレーナー(濾過機)がついていない、ということが「真因」だと分かりました。
1回目の「なぜ?」で分かった、ヒューズ交換をしても、何度も機械は止まる事になります。
真因の対策ではなかったため、こうやって「5why」を繰り返すことで「真因」にたどり着き、根本からの問題解決をが可能になります。
「5why」は実践できるのか?
「5why」は、なぜ?(why)を繰り返し、繰り返し行うことで、物事を本質的に考えるようになるための手法になります。
多くの人が「5why」のことを知っていても、実践する人が少ないのは、繰り返して問うことを、慣れていないと、非常に骨の折れる作業になるからかもしれません。
ロジカル思考が鍛えられる
「なぜ?」と自問自答を掘り下げることで、「5why」を身につけると、ロジカルに物事を考えられるようになります。
論理的に物事を理解する力がつくことで、あらゆる視点から物事を見る力が付きます。
なぜなぜ分析は無意味?意味ないのか?
なぜなぜ分析は、問題解決の手法として大いに意味がありますが、無意味に感じてしまう人が多いのは、どうしてなのでしょうか?
なぜなぜ分析」とは、どんな手法?
なぜなぜ分析は、問題解決において有効な品質管理手法の1つですが、問題発生に対して「なぜ?」を5回繰り返し質問することによって、問題の根本原因を特定しようとする手法です。
例えば、製造する製品に品質不具合が発生した場合、「なぜその品質不良が発生したのか?」という質問から始まり、それに対する回答を基に「なぜその回答事項が起こったのか?」という質問をする、といったように「なぜ」を繰り返し、最終的に根本原因を特定していきます。
なぜなぜ分析が無意味になる場合も
この手法は、問題解決を行う中で根本原因を特定するために有効な手法であり、決して無意味ではありませんが、分析のやり方自体に問題がある場合、その効果が薄くなることもあります。
それは、事実関係の調査や分析をしっかり行われておらず、事実関係が明確に把握されてない場合だと、「なぜ?なぜ?」と繰り返しても問題の本質からどんどん逸れてしまい、根本原因が特定できず、問題解決につながらないことがあり得ます。
したがって、なぜなぜ分析は、「正しく」「適切に」使われた場合に限って、有用な品質管理手法になると言えます。
なぜなぜ分析で思い込みを排除する6つの視点
問題解決で重要なのは、KKD(勘・経験・度胸)などの思い込みを排除して解析することで、そういった思い込みを排除するには、以下のような方法が有効です。
- 視点①:仮説を立てずに質問を繰り返す
問題が発生した原因について、事前に仮説を立てないようにしましょう。仮説を立てると、それに合わせた質問を行ってしまい、本来の原因を見落とすことがありますので、仮説を立てずに客観的な視点で問題を分析し、疑問に思ったことを繰り返し質問していくことが重要です。 - 視点②:質問を多角的に行う
問題について多角的な視点で質問を行いましょう。例えば、製品の品質不具合が発生した場合、品質管理の不備だけでなく、特性要因図を活用して4M(Man:人、Machine:機械、Material:材料、Method:方法)である製造工程や材料の段階についても質問を行っていくことで、より本質的な原因を特定することができます。 - 視点③:チームで実施する
複数の視点から問題を分析することも重要ですので、できるだけ複数のチームメンバーで実施しましょう。また、チームメンバーが異なるバックグラウンド・専門知識を持っていれば、より多角的な視点から問題を分析することができます。 - 視点④:分析結果を客観的に評価する
分析結果が自分の想定と合わない場合でも、客観的な視点で問題を分析し事実を把握していきましょう。本質的な原因の特定に集中するように、心がけましょう。 - 視点⑤:質問に反対する立場を取る
問題についての説明者には、立場的な偏りがある場合がありますので、質問を行う際には、反対する立場を取って質問をすることも有効です。問題を客観的に見ることができるため、思い込みを排除しやすいでしょう。 - 視点⑥:データに基づく分析を行う
データに基づいて分析を行い、客観的な視点で事実に基づいて問題を分析しましょう。そのためには、問題に関連するデータをできるだけ多く収集しながらも、必要なデータを絞り込み、統計による解析を行うことが有効です。
なぜなぜ分析がうまくいかない5つの理由
なぜなぜ分析がうまくいかないと感じる時は、以下の5つの点が関係しているかもしれません。
- 理由①:正しい質問が不十分
正しい質問が行われているでしょうか?不十分であるがゆえに、問題の根本にたどり着くことができず、解決策を見つけることができていない場合があります。現地現物で目の前の事実を把握し、正しい質問を十分に行い、本当の問題点を明確にする必要があります。 - 理由②:偏見や主観的な判断が入る
主観的な意向が入っていないか確認しましょう。本当の問題点を見逃してしまったり、解決策を見つけることができなくなることがあります。偏見や主観的な判断が入ることがないようにするためには、現地現物で目の前の事実を正しく把握し、複数の人に質問を行い、他のメンバーの意見を取り入れることが有効です。 - 理由③:解決策が見つからない
製造業ではなくソフトウェアなど現地現物で目の前の事実を把握できにくい現象など、なぜなぜ分析との相性が悪く、そもそもこの分析を行っても解決策が見つからない可能性もあります。この場合には、別の分析手法を用いる必要があります。そのために、他の分析手法についても学んでおいて、うまく使い分ける必要があります。 - 理由④:問題点の本質を見誤っている
問題点の本質を見誤っている場合には、現地現物で目の前の事実を把握し、正しく問題点を見直す必要があります。問題点の本質が見えていない場合には、なぜなぜ分析を行っても、本当の問題点にたどり着くことができません。 - 理由⑤:問題点が複雑すぎる
複数の要因が関係している場合には、問題点を整理することが必要です。この場合には、特性要因図やフローチャートやマインドマップなどのツールを使って、問題点を整理することが有効です。
なぜなぜ分析の書き方5つのコツ
なぜなぜ分析を書き進める上での書き方のコツを、以下にまとめました。
- コツ①:質問を具体的詳細に書き表す
質問、特に最初の質問を具体的に設定することが重要です。曖昧な質問だと、その時点で分析が進まなくなったり、次の分析から脱線してしまうことがあります。具体的で詳細な事実を文章化して、分析がスムーズに進むように心がけましょう。 - コツ②:因果関係を意識する
質問が、原因に対する結果になっているかを確認することも重要です。例えば、「スポット溶接剥がれが散発で発生する」という問題に対する、なぜなぜ分析では、「溶接チップの摩耗が激しい」という考え方は正しいですが、どの工程のどの設備のロボットの溶接で、どの程度の使用時間で、どの程度の摩耗しているかが分からないため、正しく因果関係が把握できず、悪い例だといえます。 - コツ③:見落としがちな要因も考慮する
問題の原因を特定したら、「あり得ない、、、」と思い込んでいた要因だったということもあります。例えば人間のミスや環境要因などがそうで、これらの事象は必ず発生するという前提で、現地現物で目の前の事実を正しく把握しましょう。 - コツ④:複数の原因も考える
例えば、「製品が完成するのが遅いのはなぜか」と考えたとき、作業開始が遅いからなのか、準備に時間がかかり過ぎているのか、作業がやりにくいのか、部品を探す弾がかかるのか等、複数の原因が発覚する場合も出てきます。しっかりと作業観察を行い、正しく事実を把握しましょう。 - コツ⑤:誰が見てもわかりやすい書き方をする
明解に書くことも重要です。専門用語を避けて、図やグラフ、表などを用いれば、分析結果をわかりやすく説明することができます。チームメンバーが共通認識を持てば、意見交換や意思疎通が円滑になり、多角的な視点から問題を分析できるようになります。
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まとめ
- 「問題解決ができなくて、、、」
- 「問題の解決手法がわからなくて、、、」
など、問題解決に行き詰まってしまうことは、だれでも経験することです。
現象の裏にある真実。
そこまで真因まで把握できれば、問題解決で迷うことはなくなります。