本日は『問題解決手法「標準化と管理の定着」』をお伝えいたします。
標準化と管理の定着とは?
標準化と管理の定着とは「元に戻らないよう標準化し、効果の拡大を図ること」
標準化とは、「自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化する事柄を少数化、単純化、秩序化すること」ということができます。 また、標準は、標準化によって制定される「取決め」と定義できます。
出典:日本工業標準調査会
なぜ、標準化と管理の定着が必要なのか?
よくある話ですが、頑張って6ヶ月間改善しても数ヶ月後には、改善前の状態に戻ってしまうといった事例を数多く聞いたことがあります。なぜ、せめてキープすることもできないのか?これは、改善後に定着するまで歯止めの処置をしてなかったから、改善前の状態に戻ってしまうといったことになるのです。
新たな問題は出ないか?再発防止の予知をして、そのための対策は考えているか?解決した問題に対する再発防止や、今回の対策で結果的に解決できなかった部分について継続的に管理していくことが必要です。
歯止めの処置とは、標準化して維持し続けることができるようにする事です。標準化は、二度と同じ不具合を発生させないために再発防止として行うものです。
標準化の目的
誰が作業をしても同じような高い品質の製品ができるようにするには、製造工程における作業の標準化が必要です。そうしなければ、安全で高い品質の製品をお客さまに安定的に提供することができません。作業標準がなければ、作業者のバラバラやり方で製造することになりますので、品質のバラツキが生じてしまい、品質不良の発生・手直し品の増加によるコスト高・納期遅れなどに繋がってしまい生産性の低下、最終的には利益を減らしてしまうことに繋がります。
作業を標準化するためには、製造工場の関係者だけでなく、設計・生産技術など関係者が協力して、過去の経験や今までのノウハウなど、どのようにすれば品質のバラツキが少なく、作業効率の良い作業ができるのか?について考え、標準化を進めていきましょう。
標準化する理由
歯止め(恒久対策)を標準化しなければなりません。標準化する2つの理由があります。
- 標準化しなければ問題を解決するために取られた処置が、人の移動とともに忘れられてしまい定着しない
- 標準は新人作業者の教育訓練に必要だから
そして標準化は、作業手順を文書化するだけでは達成されません。標準は、作業者が標準を実施するために必要な知識や技術の教育と訓練を行うことが大切です。標準の意味は以下の3つになります。
- 作業手順書を作成するのには5W1Hを用いると表現しやすくなります。仕事を本当に理解するためには「なぜ?(Why)」は標準の必要性の理解に大切な要素です。
- 標準は文書化され、関係者に適切に正しく伝達されなければなりません。新商品が立ち上がり時に起こる混乱の原因の1つは、新しい標準が導入されたときに伝わるまで標準を伝えてなく、徹底しないことにあります。新しい標準を伝えるには、今までの仕事のやり方を変えなければなりませんので、大きな抵抗があります。この際の些細なミスで混乱が引き起こされるのです。
- 教育と訓練は、標準が遵守されるために繰り返し繰り返し行うことが必要です。この教育を怠っていると、標準は実行されないただの飾りになってしまい問題が度々再発してしまいます。
標準化するための2つのポイント
①:改善前の冶工具は処分しておく
改善前の作業台や工具類をそのまま放置しておくと、うっかり間違えて使用する事があります。うっかり不良を防ぐためにも改善前のものは全て処分するようにしましょう。
②:仕事のやり方を標準化する
- 【仕事の仕組みを変更する】
作業方法・材料(素材)・使用工具類の変更の場合、「作業標準書」「作業手順書」「抜取りチェック表」等、標準類の変更・改定・新設を行いましょう。 - 【設備の仕掛けをする】
異常が出た場合に、作業者が一目で分かるように警報や異常ランプ等の設備的な仕掛け(目的のために巧みに工夫された装置やからくり)も対応しましょう。 - 【躾(しつけ)の徹底を図る】
いくら作業のやり方を変更したり、設備的な仕掛け対策をしても、作業者が理解して体得しなければ、何の意味もありません。
繰り返し時間をかけて、作業訓練や異常処置などの教育することで、理解して体得してもらうようにしましょう。 - 【図面・規格の変更は忘れずに手続きを行う】
・設備基準を変更した場合は、「工程計画書」「品質標準」などの図面の変更も忘れずに行いましょう。設計変更時のトラブルの元です。
・改善で設備の改造を行った場合は、設備図面、電気回路図等の変更を行う必要があります。特に電気系統の改善の場合は忘れずに担当部署に申し入れをしておきましょう。
標準化のための作業手順書
標準化するためには、作業手順書が必要になります。なぜならば、それぞれの作業者が今までの経験をもとに自分勝手な方法で作業を行うと、安全を確保できないばかりか、作業者によって作業時間や仕上がりなどに差ができ、工場全体として作業を円滑に進めることができません。
生産性向上や品質向上などを目的として作業手順書を作成して、最も良い作業の順序と急所を文書化しておくと、作業の中で発生するムリ・ムダ・ムラを排除することができ、誰が作業しても同じ基準通りの同じ仕上がりの結果を得られます。この作業手順書とは、誰がやっても同じ結果が出るように、人の動作・機械操作の手順を、今考えられる最善のものとして定めたものです。
さらには、未熟練作業者や新人作業者に仕事を教える時に、安全で・正確に・早く作業方法を統一して伝えることができる教材になります。今現在、最も適切な作業方法と手順を決めて、安全で効率的に作業ができるようにするために作業手順書が必要になります。
- 安定した品質の製品を誰でも作れる
- 作業のムリ・ムダ・ムラをなくし安定生産
- 作業をやりやすくする
- 作業者の疲労度を軽減させる
- 危険な作業を減らし災害の原因を減らす
まとめ
標準化と管理の定着とは、「元に戻らないよう標準化し、効果の拡大を図ること」です。つまり、同じ問題が二度と起きないように再発防止を行うということです。
改善を行って、良い結果が得られた場合は、二度と改善前の状態に戻らないよう標準化して再発防止を図りましょう。その場合、効果を拡大させるという視点を持ち、関係先や関係部署との情報共有を行いましょう。
そして、最も大切なことが”今回の対策の反省を次に活かす”ということです。常に改善の意識を持ち、より良くするにはどうすればいいか?を考え続けることで、よいアイデアが湧いてきます。今回の改善で、新しく問題が発生することもあります。「改善が終わったから知らない!」ではなく、改善後も、その問題点も注視しておくことが大切です。