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原価低減の考え方!トヨタ生産方式(TPS)の7つのムダとは?

2023年4月26日

7つのムダ

「モノづくりの主役は人間である」という考えのもと生み出されたトヨタ生産方式(TPS)は、「自働化」と「ジャスト・イン・タイム(JIT)」というムダの徹底的排除の仕組みを構築することによって生産性向上を図り、​原価を低減する生産方式です。
トヨタが考えるムダには7つの種類があり、7つのムダとは「造りすぎ・在庫・加工・不良品と手直し・動作・手待ち・運搬」に分類される7項目です。

造り過ぎのムダ(売れ残るお金のムダ​)

造り過ぎのムダとは、必要以上に製品を生産してしまい、在庫を抱えることによってムダのことを指します。在庫によって、資源の無駄使いや不良品の生産、運搬や保管に必要なコストの増大などに従い、生産性や利益率の低下に繋がります。

造り過ぎのムダが生み出す問題点

  1. 【倉庫コストの増加】:増えた在庫保管のために工場や倉庫スペースが不足し、倉庫管理・在庫管理費用が増加
  2. 【運搬の増加】:在庫増により倉庫スペースが圧縮され、効率的な運搬や作業ができなくなる
  3. 【光熱費や資材の浪費】:本来必要ない生産により機械や設備を運用で資材・光熱費(電気・水・エアー)の増加
  4. 【労働力の浪費】:人材も必要以上に使用され、労働者のモチベーション低下・生産性の低下に繋がる
  5. 【品質低下】:倉庫で保管されている間に、汚れや錆など品質劣化に繋がり、廃棄問題に繋がる

造り過ぎのムダは、文字通り製品を造り過ぎることによって生じる無駄です。このムダの問題は、在庫過剰、ミスや異常の看過が生じやすくなるといった点です。
造り過ぎることによって在庫が増えますが、在庫管理の手間がかかり、手持ちのムダが生じます。製造業にとって製造することが重要なので在庫管理をすること自体がムダな手間といえ、問題でもあるのです。

次に造り過ぎのムダが放置されることによって、製品管理もおざなりになり、ミスや異常状態を見過ごされてしまうという危険も生じるのです。このような問題を引き起こす、造り過ぎのムダをなくすためには、生産量の管理や在庫チェックを徹底することが重要です。受注予測をより正確に行うために生産方式を受注生産に切り替えたり、過剰在庫がないか常にチェックするシステムを導入するといった対策をすることで造り過ぎのムダを改善できるでしょう。

造り過ぎのムダは、単独での問題で終わるわけではありません。他の在庫のムダ・動作のムダ・運搬のムダにもつながるため、早めに目を摘む必要があります。そういった意味で生産管理や在庫管理を徹底し、造り過ぎのムダを予防することが重要です。

在庫のムダ(余分なスペースのムダ)

在庫のムダとは、生産した製品が保管されている在庫が、必要以上に多く存在することで無駄なコストや手間のことを指します。在庫が多すぎると、保管場所や管理にかかるコスト増、さらには製品の仕様変更や不良品発生時の対応が遅れるため、生産性や品質も低下する可能性があります。

在庫のムダが生み出す問題点

  1. 【資金不足】:在庫を抱え込むことで、必要な資金が在庫に束縛されてしまい、無駄な資金が必要となる
  2. 【品質低下】:在庫が長期保管すると製品劣化や変質で品質低下する恐れがある
  3. 【スペース不足】:倉庫や工場内の在庫保管スペースが不足し作業効率が低下する
  4. 【在庫管理の負担】:在庫管理に必要な人員や場所、在庫管理コストの負担増になる
  5. 【無駄なリードタイム】:出荷までの時間が伸びるため顧客の元へ届くリードタイムが長くなる

在庫とは、原材料、部品、仕掛品(しかかりひん、作りかけの製品)、完成品といった全ての余剰な物品を言います。これらの在庫がムダになって起こる問題は、「コストが余計に発生・歩留まり悪化」といったことが発生します。

そもそも在庫が過剰だと、その在庫を管理する場所やスペース、管理するための人件費など、本来は必要のない管理コストが膨れ上がることで経費も増え、結果として企業全体の利益の悪化にもつながります。

歩留まりの悪化も見落とせません。たとえば、原料の在庫がたくさんあることで、失敗したら予備の原料を使うというスキームが常態化してしまい、結果として歩留まり率の悪化が懸念されるのです。
こういったコスト増加や歩留まり率の悪化を防ぐためにも在庫のムダを改善する必要があります。

対策として、「なぜ今そこに置いてあるのか?」を説明できない在庫については全てムダな在庫と判断し処理することです。どんな生産現場でも最低限の在庫は必要ですが、安易に全ての在庫をなくすのはリスクがあるでしょう。

加工のムダ(設備投資・加工労力のムダ​)

加工のムダとは、製造プロセスにおいて各工程で標準化された作業手順等が存在しない、または作業者が守ってないということであり、余計な加工作業や加工時間が発生し、生産性低下やコスト増大、品質の低下などが発生します。

加工のムダが生み出す問題点

  1. 【生産性低下】:加工のムダが多くなると、作業時間が長くなり、生産性の低下に繋がる
  2. 【品質不良発生】:不要な加工や仕上げ作業は、部品形状への変化に繋がる恐れ
  3. 【コスト増加】:素材費、用役費、労務費等のコスト増は、製品価格上昇に直結するため競争力低下を招く
  4. 【作業者の負担増】:不要な作業は作業者の負担増により作業効率低下に繋がる
  5. 【納期遅れ】:出荷までのリードタイムが長くなることは、納期遅れにより顧客の信頼を失う恐れ

具体的には、必要以上に仕上げ作業に時間をかけてしまったり、不要な検査や二重検査といった内容が該当します。これによって発生する問題は、コスト増や生産効率の悪化です。

加工のムダをなくすには、工程分析を行い、作業標準通りに作業が行われているか?標準通りの作業で、品質確保を徹底することが必要です。また、加工作業における工夫や改善を取り入れることで、無駄な作業や不要な手間を省き、生産性向上が可能です。 スタッフの改善アイデアを積極的に取り入れ、日々の業務におけるムダの発見や解決に取り組むことも大切です。

また、作業者ごとのばらつきもチェックします。作業者によっては過剰な加工が行われていることも多いからです。加工のムダが発生しないよう作業標準書を作成したり、作業標準を作業者に守らせることで加工そのもののムダを改善できます。On the Job Training (オンザジョブトレーニング)の機会を設けることも有効です。

品質不良・手直し品を造るムダ(捨てる、余分な労力のムダ​)

品質不良を造るムダとは、製品が仕様や規格に不適合な状態で生産され、商品として出荷できないため、手直しや再生産、廃棄期などにより、コスト増加となり会社にとって利益に繋がりません。

品質不良や手直し品のムダが生み出す問題点

  1. 【廃棄によるコスト増加】:品質不良が生じた場合、手直しや再加工、または廃棄が必要になりコストが増加
  2. 【顧客からの苦情増加】:顧客から苦情や不信感が生じ、信頼関係の低下やブランドイメージの悪化に
  3. 【納期の遅れ】:再加工等により出荷が遅れ追加料金を請求されたり、企業としての信頼性低下に
  4. 【生産性の低下】:品質不良が発生すると、原因究明や手直し等で製造ラインが停止に追い込まれることも
  5. 【再生産やリコール】:製品の修理・交換費用などに係る時間や人件費のコスト増だけでなく、企業の信頼関係の低下に

品質不良を造るムダは、不良品が発生してそれを廃棄したり、手直ししたり、あるいは再生産する場合もあり、歩留まりの悪化、生産効率の低下に繋がります。

不良品を生産することで、廃却する手間だけでなく不良品を手直しするといった手間が発生したり、場合によっては再生産で作り直しということあります。さらには出荷後に発覚した場合、出荷先のフォローアップといった手間さえ発生します。

品質不良を生産しないようにするには、「どの工程で発生してるのか?」発生源の工程を4M(人・機械・材料・方法)で変化はないか等調査・対策を行い改善するだけでなく、また後工程に流出させないための流出源対策も必要です。

動作のムダ(余分な労力のムダ​)

動作のムダとは、作業の中で付加価値を高めない、不必要な動きのことを指します。例えば「探す、しゃがむ、持ち替える、調べる」といった動作です。

動作のムダが生み出す問題点

  1. 【作業効率低下】:動作のムダが多い場合、不要な動作を繰り返すことで作業効率が悪く生産性が低下
  2. 【従業員の負担増加】:従業員が疲れやすくなり、ストレスや肉体的負担が増加し、欠勤などの問題が生じる
  3. 【品質低下】:ムダな動作があると、作業中に不注意が生じる可能性が高くなり、品質に影響を及ぼす
  4. 【焦りやすくなる】:ムダな動作が多い場合、作業に余計な時間を費やすため時間に追われ、焦りミスが生じる
  5. 【コスト増加】:不必要な動作を繰り返すことで、ムダな時間や労力などのコストが増加

作業の中で付加価値を高めない動作のムダによって起こる問題は、生産効率の低下です。無駄な動きが多いため、生産が間に合わず残業することになったり、その分生産時間の増加に伴い疲労が増したりします。
その原因としては、作業標準が守られてなかったり、作業標準がやりにくい作業になっていたり、さらには作業者の訓練不足が挙げられます。
ムダな動作を無くすには、標準作業の見直しや作業訓練、やりにくい作業がないか工程見直し、改善活動の継続的な推進なども重要な要素となります。

そのためには、作業者の動作チェック、作業標準とのギャップ確認を行なった上で、作業者にやりにくい作業等のヒアリングで、何が問題になっているか?を把握し、工具の設置場所を工夫したり、改善ポイントを明確にしていきます。

また、作業標準とのギャップをチェックする際は、実際の作業の様子を撮影して、作業者と共に確認するのもポイントです。場合によっては作業標準に問題があることも否定できないため、作業標準を改訂することも重要です。

「なぜ無駄な動作になっているか?」作業者からヒアリングすることも重要なポイントで、工具が取りにくい、調べないといけない等、何かしらの理由がありますので聞き逃さず改善に活かしましょう。

手待ちのムダ(時間のムダ​)

手待ちのムダとは、作業者が待ち時間に費やすことによって発生する無駄な時間のことを指します。手待ちのムダは、作業時間が長くなり、生産性の低下や生産遅れの原因となります。

手待ちのムダが生み出す問題点

  1. 【生産性の低下】:手待ちにより作業が進まず、生産数の減少で時間内で予定生産数を造れない
  2. 【遅延で納期遅れ】:作業が滞り、生産が遅れるため、納期遅れによりクレームの原因となる
  3. 【モチベーション低下】:手待ち時間が長くなるため、従業員のモチベーション低下、作業意欲低下に繋がる
  4. 【作業効率の低下】:手待ちにより、同じ作業でも完成するまでの必要時間や労力が増加する
  5. 【コストの増大】:手待ちにより残業対応となると人件費や光熱費等のコストが増大

手待ちのムダというのは、いわゆる手持ちぶさたの状態で生産効率低下に繋がり、予定生産量が達成できなくなったり、現場の人間関係が悪化することもあります。この手待ちのムダを削減するためには、各工程の標準時間計測や一個流しのテストを実施するなどの方法が挙げられる。

標準時間を計測して各工程の生産計画を見直すことで、各工程の作業時間を均一にし、一個流しをして実際の生産状態を確認し、各工程の作業のムダを発見して対策を立てることができます。設備的に問題がある場合はタクトUP対策や消耗品の交換等、メンテナンスなどの改善が必要になります。

運搬のムダ(モノの動きのムダ​)

運搬のムダとは、必要のない運搬作業のことであり、製品や部品などのモノを不必要に動かすことによって発生するムダのことを指します。それにより時間や人件費、運搬コストの増加だけで無く、生産性低下や安全上のリスク向上にも繋がります。

運搬のムダが生み出す問題点

  1. 【生産効率の低下】:運搬のムダによって生産ラインが滞り、作業効率が低下することで生産効率が悪化
  2. 【作業負荷の増加】:長時間運搬作業する場合、作業者の集中力低下や体力消費に繋がる
  3. 【安全上のリスク向上】:運搬中の接触事故や部品落下等の安全上のリスクが増大
  4. 【コストの増加】:運搬にかかる時間や作業者の人件費や破損や接触事故等のコストが増加

運搬のムダ(モノの動きのムダ​)とは、必要のない運搬作業のことであり、問題は運搬時間の手間や時間のロスによって生産効率が落ちることです。それだけでなく作業負荷増加、品質低下、安全上のリスク向上、在庫管理などコスト増加などの問題点を指摘します。

具体的には、在庫品の保管場所を一本化することによる総移動距離の短縮が挙げられます。また、レイアアウトの確認を行い、利用頻度によって高頻度の物を作業所内平置き、使用頻度が低いものを立体倉庫といったような管理の工夫も必要です。基本的には在庫が溜まらない生産計画の見直しが必要となります。

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  2. 現場での作業改善が立案でき、それを実践する能力が身につきます。
  3. 本講座は、実際に役立つ「改善提案」をねらった構成です。教材の取り上げ方も、受講者に語りかけるよう工夫しました。


問題解決の8ステップ

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