本日は『新製品立上げ:設計段階における製造部門4つの役割』をお伝えいたします。
品質保証における製造部門の役割(設計段階)
新製品立上げ時、設計段階での製造部門の品質保証における役割・目的は何でしょうか?
設計段階における製造部門の役割は、品質の造り込み易さと作業性という観点で、過去トラブル(過去の不具合)や作業性の問題を含めた自工程要件の抜けのない織り込み、製品構造の変更要望や改善案を設計部門に提案すること、提案後の展開状況のフォローです。
設計部門に対する図面織り込み要望項目の4つの提案
1:過去トラブルの適切なる整理
過去トラブル情報をどのような方法で、整理&把握していますか?多くの企業が過去のトラブル発生時、徹底した再発防止を行っていると思います。
この過去トラブル情報を整理するためにはトラブルの内容を分析し、トラブルにつながった原因や要因の因果関係を明確にし把握することが大切です。過去トラブルの整理をするのは、今後その原因や要因を発生させないで、トラブルならないために何をするか?というポイントを見つけるための活動です。
例えば、設計が原因で引き起こされた過去の製品でのトラブル事例や技術課題を紐解き、図面段階に織り込むことで、その製品で起こりうるトラブルを未然防止することができます。ただし、注意するべきポイントが過去のトラブル情報の集約と記述の方法です。過去トラブルのデータベースがあったとしても、その事例で起きたことの因果関係が有耶無耶になっていると、その因果関係を明確にして理解するために余計な手間と時間がかかってしまいます。
過去トラブル情報の活用
過去トラブル情報を整理していても、有効に活用できてないという場面も見受けられます。これは多くの企業が抱えている重要な課題です。過去トラブル情報を活かすために、3つのポイントをまとめました。
- 【過去トラブルの原因究明が大切】
過去トラブルの原因究明が不十分だと発生源の恒久対策ができず、トラブル再発に繋がる可能性が高くなります。弊社のクライアントさまでも流出防止のための暫定対策ばかりで、トラブルが何度も再発しているケースもありました。起きている事象が的確に把握され、真の原因が明確化され、再発を未然防止につなげることが重要です。 - 【過去トラブルから教訓を学ぶ】
過去トラブルを活かすとは、二度と同じことを繰り返さないために過去のトラブルから教訓を学ぶことです。トラブルの事例整理だけに終わらせることなく、事例のエッセンスを事前検討項目としてまとめることが重要です。例えば、設備であれば「壊れにくい設備造り・不具合流出させない工程造り・省人を見据えた工程造り・バックアップを見据えた工程造り・地震対策」などの項目も取り入れてみてはいかがでしょうか? - 【過去トラブル情報を活用し未然防止に繋げる】
過去トラブル情報を活用しやすく工夫して、未然防止に繋げることが重要です。パソコンの中に埋まっていても誰も活用しませんので、関係者全員がパッと見ただけで把握できるように、ミーティング場で大きな模造紙に記入して張り出すなど見える化(可視化)するというアイデアもいいと思います。
2:作業性に関する問題点の把握
問題点の把握が重要
現場で作業するオペレーターから作業性に関する問題点の聞き込み、その実作業の状況を明確に把握できていますか?
まず、見えないことが一番の問題です。例えば、人の動きだけでなく業務を自動化やシステム化されたロボットや設備の動きまでもがブラックボックス化される可能性があります。
確かに生産効率を高めるために自動化することで、生産効率UPは図れますし、人がミスを引き起こす要因も減りますが、自動化し過ぎて動きが把握できてない場合、何かの変更時に影響も関連も分からないまま手を加えるため、大きなトラブルを生み出す原因にもなります。
現場で作業するオペレーターから作業性に関する問題点、実作業の状況をなどをヒアリングしましょう。一つ注意点として、毎日作業を行うオペレーターはその作業を毎日淡々とこなしている訳ですので、問題として捉えてないことや気付かないケースがほとんどです。問題点の洗い出しや分析することは第三者の方が客観的に物事を見れるのでやり易いです。
どれだけ問題点を吸い上げられるか?
作業ミスが多いポイント、過去に不具合が発生している作業などは、目に見えて問題あると分かり易いのですが、問題は目に見えてない部分の問題点です。それをどれだけ吸い上げられるか?が重要です。
そこでオペレーターにヒアリングするのですが、その時に意識して欲しいのが「キツイ・面倒・やりにくい・重い・大変・時間かかる・手間がかかる・判断が難しい・前からそうだった・難しい・分かりにくい」と言った言葉を発する項目は、非常に怪しいです。問題点として考えてもいいと思います。
問題点の課題整理
作業性に関する問題点を洗い出し、対策を考えることはあなたも得意とするところではないでしょうか?しかし、多くの問題点を抽出した後に出てくるのが、問題点がありすぎて何処から手をつけて良いのか分からないという問題です。ここで躓いて、大きな効果を得られてない企業が、まだまだ数多くあります。だからこそ、まず事実の把握をした上で、抽出した数多くの問題点をしっかりと確かめ、内容を整理して分析していかなければなりません。
問題点の見方として、標準三票(工程別能力表・標準作業組合せ票・標準作業票)を基準として、それに対して作業のムリ・ムラ・ムダはないか?というポイントを見ていきます。タクトタイムの短縮、品質不良の低減、稼働率向上などに繋がる要素を見つけていきましょう。その時の注意するポイントは、局部的な見方だけではなく全体俯瞰も忘れずにしましょう。ボトルネックとなっているポイントを見つけることが最も重要です。ボトルネックの部分を改善できれば、改善効果も大きく出ますし、問題の再発もありません。細部だけの視点ではボトルネックは見つかりません。全体を俯瞰しながらボトルネックとなっているポイントを見つけていきましょう。
3:製品の品質特性に影響する要因の洗い出し
設計要件を洗い出す際、製品の品質特性に影響する要因の洗い出しができていますか?
品質特性とは、品質評価の対象となる性質や性能のこと。製品の基本の要求性能や使用目的をしっかりと考慮して、やるべきことを検討するということです。製造部門で言えば、提供する製品の基準に合わせて、得たい結果を得られる工法・設備を検討することや行動することをいいます。
この製品の品質特性に影響する要因の洗い出しには、魚の骨と言われる特性要因図や工程FMEAが有効です。
【特性要因図】
特性要因図とは、結果と原因系の関係を整理&把握するためのツールです。要因解析の時に活用する、特性と要因の関係を系統的に線で結んで表した図をいいます。仕事の結果に対して影響していると考えられる要因を洗出して、因果関係を関連付け、魚の骨のような図に表したものです。この特性要因図は、真中の太い矢印を背骨、背骨に近い順に大骨、中骨、子骨、孫骨と呼ぶように形が魚の骨に似ているため、よく“魚の骨”とも呼ばれています。※要因とは、原因の候補で、原因とは決まったものではない。
例えば、webサイトで新規の見込み客の獲得ができない場合「なぜ、獲得できないのか?」を考えてみて下さい。webサイトに掲載されている内容が良くない、申し込みにくい、googleやyahooの検索で表示されてないなど、多くの原因が考えられます。この新規の見込み客が獲得できない結果(特性)に関係する原因(要因)をみんなで、出し合い、洗い出しすることは非常に重要なことです。
※詳しくは『QC7つ道具:特性要因図』を参照ください。
【工程FMEA】
工程FMEAとは、Failure(故障・不具合) Mode(モード・形態) and Effects(影響) Analysis(解析)の略で、潜在的故障モード影響解析のことをいいます。製品設計、工程設計に関する問題を故障モードに基づいて摘出し、設計段階で使用時に発生する問題を明らかにすることを目的とした手法です。つまり、この工程FMEA手法は、故障が全体にどのような影響を及ぼし、どの程度重要なのかを解析し改善することで信頼性の高い製品を造り上げていくものです。
4:製品公差の成立性
どのような確認方法で最適な公差設定になっていると判断していますか?
構成部品の分布やその部品の特性の重要度によって、公差の算出方式と設定の考え方が異なります。
- 単純累積法
分布を考慮せず各製品公差の上限・下限値を足し合わせていく方法。最も確実な方法で要求性能が厳しいものには効果的だが、組立品を規格内に納めるため、各製品に対し高い精度が要求されるケースが多くなる。 - 正規分布累積法
正規分布している2つ以上の製品を組み合わせる場合、組立品の寸法は単純な公差の足し合わせよりも狭い範囲でばらつく。正規分布累積法は、分散の加法性を利用したもので、比較的ゆるい公差の設定が可能。しかし、この方法を用いるには管理図等による「ばらつき」と「平均値」の日常管理が必要となる。 - 矩形分布累積法
基本的な考え方は正規分布累積法と同じ。しかし、公差上下限付近の出現確率が正規分布と比較して高いため、組立品の規格を満足するための各製品公差は、正規分布累積法より厳しくなる。正規分布しているものでも全数検査で規格外れのものを取り除くと、このような分布となる。
まとめ
設計側の視点で図面検討などに参加するのではなく、製造部門の代表として品質をより造り込み易くするための要件を、いかに設計段階で図面に織り込むかという視点で、参画することが重要です。
QDCのコストや納期など品質以外の理由に押さえ込まれることなく、「顧客の立場」に成り代わって、設計部門にきちんと物言いが出来ているかがポイントになります。
つまり、この段階における製造部門の役割は、図面織り込み要望項目の提案をすることです。