連関図法とは?
連関図とは
多くの問題と言われる現象は、「千錯万綜(せんさくばんそう)」まさに複数の原因が絡み合い発生しているもので、それらの問題は様々な部分に多面的に影響を与えます。
連関図法は、そういった「品質管理や課題分析」に用いる手法で、具体的には連関図と呼ばれる図を作成して分析を行っていきます。
この連関図とは、要因の相関関係、たとえば原因と結果、目的と手段といった千錯万綜している、それらの相互関係を図で整理して分かりやすく表現するものです。
この連関図を作成すると、最終的にはドラマの人物相関図のようなものができあがりますので、連関図を見ることで、根本的な原因が追及できたり、予期せぬ関係性を見出したりといった大きなメリットがあります。
連関図の構造
具体的な構造を解説していきましょう。連関図は、課題、一次要因、二次要因、そしてそれら要因と課題を結びつける矢印によって構成されます。
まず、「課題」は問題となっていることや新しく生み出したいアイデアについて図の中央に書き込むものです。
「一次要因」は、そこから課題に関係するすべての要因を書き出します。
「二次要因」では一次要因がわかるとさらに一次要因になっている事柄に対するすべての要因を書き出します。
場合によっては、その二次要因に対しても要因を書き込める場合があり、それを三次、四次と作っていくことができます。
最後の矢印は「要因と課題を結びつける」もので、二次要因と三次要因とのつながりや課題と三次要因との直接的な関係が判明したりします。このようにして分析を行うのが連関図法です。
連関図法を使う3つのメリット
連関図法を使うメリットは3つあります。それは、「客観的に分析できる・情報共有が容易にできる・簡単にできる」といった点です。
メリット①:客観的に分析できる
まず、ホワイトボードやA3用紙などに課題を書き出し、そこから関係メンバーで意見出し合い一次要因や二次要因を書き込み、要因と課題を矢印で結んでいくことで、第三者からの意見を聞くことで客観的な分析することができます。
一人で考えていてはどうしても主観的になることも、他人の意見を聞いて連関図を作り込むため、「事実or主観」なのかを分けて考えられるメリットがあります。
メリット②:情報共有が容易にできる
しかも多くの人が見てもすぐに理解できる図が完成するため、参加したスタッフや図を知っているすべてのスタッフとの情報共有が容易になります。
参加者一人一人の理解が違ったまま合意するということが起きにくいため、足並み揃えた次のアクションを行うことができますので、問題の早期解決が可能になります。
メリット③:簡単にできる
これによって共通した問題意識や解決のための指針ができあがり、迅速な課題解決が可能になる場合も少なくありません。簡単にできるという点もメリットです。
数値データを用いる定量的な分析ではないので、統計的な知識や専門の教育を受けることなく作成ができます。
矢印を結んでいくだけなので、新入社員からベテラン社員、さらには他部署、外部の業者、場合によってはクライアントに対してもすぐ理解を得られるメリットがあります。
この簡便さが連関図法の最も大きなメリットといえるでしょう。
それでいて要因同士から見た発想の転換、主要因の発見、多くの方へ説明しやすいといった効果を得ることができます。
関連図法はこのように簡単で大きな効果を発揮しやすい分析なのです。
連関図の事例・活用法の紹介
連関図の例として、「不具合調査・改善案の検討・新商品開発の検討」といったものが挙げられます。
例①:不具合調査
不具合調査は、連関図法が最も活用される分野で、発生した不具合現象について中央に書き込みを行い、そこに関連する一次要因を書き込んでいきます。
不具合は様々な要因同士で複雑に絡まり合っていることが多いものの、連関図法を用いることで全体像が把握しやすく、そこから二次、三次と要因を書き込んでいくことで、関係者との情報共有ができ、一歩深い解析が可能になるため、不具合調査が進むでしょう。
例②:改善案の検討
連関図法は改善案の検討にも利用できます。例えば、ある商品の改善を求められた場合、どのような点が改善できるかをどんどん書き込んでいきます。
そして、それらの点を改善するために何ができるかを書き込み、一次、二次と書き込みを進めていきます。それによって根本的な改善が検討できるようになるでしょう。
例③:新商品開発の検討
最後が新商品開発で、こちらも連関図法を利用します。最初に新商品、たとえば炭酸ドリンクを書き込みます。よりコンセプトのしっかりしているものであれば、アルコール入り炭酸ドリンクなど具体的な物を書きましょう。
そこからアイデアをどんどん書き込み、そのアイデアを実現するために二次、三次と書き込みます。こうして新商品の形が生み出されるでしょう。
これら以外にも様々な用途で連関図法が用いられます。
連関図の作り方5ステップ
連関図の作り方は、「①テーマ設定→②一次要因の洗い出し→③二次要因以降の洗い出し→④矢印で要因同士の関連を確認→⑤主な要因の特定」の5ステップで行われます。
連関図の作り方①:テーマ設定
まず、テーマの設定として解決したい課題を決めましょう。連関図の中央に大きく記載を行って、このテーマの解決を目標にします。
連関図の作り方②:一次要因の洗い出し
次にテーマに直結する一次要因を書いていきます。注意点としては、漏れなく書いていくことで、書き漏れがあると後から原因が見つけにくいこともあるので、時間をある程度かけて要因を書き出していきましょう。
連関図の作り方③:二次要因の洗い出し
一次要因が書けたら、そこから二次要因以降の洗い出しを行っていきます。「なぜ?」を繰り返して深堀していくことが重要です。
連関図の作り方④:矢印で要因同士の関連を確認
「なぜ?」を繰り返すことで要因が抽出できたら、この時点で要因同士の関連を矢印で結んでいきます。
二次要因以上の項目が完成していると視覚的に分かりやすくなっているので、比較的スムーズに関連性を確認できるでしょう。
ただ、矢印の重なりなどに注意して配置を工夫し、見づらくならないようにしましょう。
連関図の作り方⑤:主な要因の特定
最後に洗い出された要因から主要因を特定します。複数あるケースも珍しくありませんが、最大でも3つに絞るようにします。つい1つに絞りがちになるものの、抽出した要因を安易に取り除くことは避けることがポイントです。
「連関図」と「なぜなぜ分析」の違い
「連関図」と混同しがちな分析法に「なぜなぜ分析」があります。この2つの違いとして、「目的が異なる・文章化の有無・要因追及の回数」といった3点が違いです。
違い①:目的が異なる
なぜなぜ分析は、発生した問題事象に対して5回の「なぜ」を追及し根本原因を導き出す手法から英語でFive whysといわれています。
例えば、工作機械で故障が行った場合、なぜ故障が起こったのか、なぜメンテナンスができなかったのか、なぜメンテナンスする時間ができなかったのか、なぜメンテナンス時間が他の時間に取られていたのか、なぜ他の時間が大幅に広がったのかというように問いかけを繰り返します。このような特徴を持つなぜなぜ分析は、目的を原因の追及のみに特化しています。
一方、連関図は、原因を追及しつつも要因同士の関係性についても分析していくのが特徴です。より広い範囲の分析をするのが連関図法の特徴といえるでしょう。
違い②:文章化の有無
次に文章化の有無として、なぜなぜ分析は、文章化して分析します。一行程度の文章を問いかけ続けて、最終原因として一文が生まれるのが特徴です。
一方、連関図法は、単語のみで分析をすることがほとんどなので、文章化を行いません。
違い③:要因追及の回数
最後が要因追及の回数です。一概ではありませんが、なぜなぜ分析は、先ほども触れたように「なぜ?」を5回追求することで要因追及を行います。
一方、連関図法は多くても3次要因程度で、なぜなぜ分析に比べるとやや少ないのが特徴です。
このように類似の分析方法ですが、「なぜなぜ分析」は、発生した問題事象の根本原因を探る分析手法です。
それに対し「連関図法」は、原因と結果や目的と手段などの関係が「千錯万綜」に複雑でかつ絡み合っている場合、相互関係を図解することでわかりやすく表現するものです。細かく見ていくと相違点は意外に多くあります。