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製造業における生産技術の基本知識

2017年1月7日

製造業における生産技術の基本知識

本日は『製造業における生産技術の基本知識』をお伝えしたいと思います。

生産技術とは何か?

そもそも、生産技術とは、、、
「設計品質(狙い品質)を製品に転写する技術」のこと。

「製品品質を表す4つの定義」

  1. 当たり前品質・・・市場マーケティングから導き出される
  2. 魅力的品質・・・市場マーケティングから導き出される
  3. 設計品質(ねらい品質)・・・製品にすることを目的
  4. 製造品質(出来栄え品質)・・・ねらい品質を達成させるための管理品質

製造と生産技術の関係

生産技術は、設計品質を製造品質に正確に反映させる要素技術のことです。お客様にとって、必要なものを、必要な時に、必要なだけ、できるだけ安く、安心安全に提供できる商品が受け入れられます。

製造と生産技術の関係

製造業(ものづくり)は、 品質 (Quality)、コスト (Cost)、納期 (Delivery) というQCDの三つの柱で成り立っています。この、品質Q・コストC・納期Dを管理することで、高品質で、作りやすく、効率的に生産することが可能となります。

しかし、ものづくりの製造現場では、バラツキの発生する主な原因である、人(Man)、設備(Machine)、材料(Material)、方法(Method)の4Mがあるため、必ずしもすべての製品が狙い品質 通りにできる訳ではありません。同じ材料を同じ設備で同じ方法で作っても、作る人が違えば全く同じ製品にはなりません。

一方で、新製品の立ち上げの場合は、そのバラツキ発生を許容範囲内に管理できるよう設計していきます。市場や顧客が求める品質を設計段階から作り込んでいきます。製造業(ものづくり)には材料や作業員、作業場所、設備、が必要となります。それらの管理を行うことを生産管理という。この生産技術は、これら管理技術の基礎となる技術のことです。

生産に必要な2つの生産技術

製造業のものづくりには、固有技術と管理技術という二つの技術があります。例えば、鉄板に穴を開ける切削工程では、鉄板の材質管理・ドリル刃の選定・ドリルの取り付け方・穴を開ける技術・ドリル刃管理・手入れ方法などがあります。この時、ドリルを使う共通技術と穴の仕上がりを狙い通りにするために、ドリル刃の選定・ドリル刃の角度や材質など、個別対応の技術に分けられます。

生産技術とは、設計の狙い品質を製造工程に織り込み、製品を安定的に制作するために必要なものづくりに欠かすことのできない要素技術です。

生産に必要な2つの生産技術

  • 固有の技術
    • ものを作ったり、サービスを提供したりするときに必要な技術。たとえば設計開発や製品加工などの技術のこと
  • 管理技術
    • 固有技術などを安定的に発揮して、製品やサービス水準を一定に保つのに必要な技術のこと

固有技術がいくら高くても、管理技術がないと、安定した製品の供給はできません。1000個に1個、最高の製品を作っても999個が廃棄処分になるような製品だと、ビジネスとしては成り立ちません。

逆に、管理技術が突出していて固有技術がなければ、単純で簡単な製品なら安定した供給を望めますが、価値の高い製品を作ることは不可能です。価値あるものを安定して供給するために、固有技術と管理技術のバランスは大切です。

生産技術の目的

生産技術の目的は、、、狙い品質の造り込みと安定化

企業として利益を伸ばしていくためには、顧客のニーズを反映して開発設計部門が決定した製品の狙い品質を、図面通りに実際の製品として製造し出来栄え品質を確保しなければなりません。図面で作った設計品質と実際に製造した製品の製造品質が許容範囲内でなければならないのです。

生産技術は、新製品の生産準備段階において、狙い品質を製造工程で、許容製造原価と最小品質コストの制約条件で反映させる技術です。

生産技術は、利益を生み出すために、品質 (Quality)、コスト (Cost)、納期 (Delivery) のQCD管理をする上で、必要な基本要素技術です。
この要素技術の優劣が、企業の競争力を反映していると言っても過言ではありません。

  • 品質(quality)であれば...最小品質コストを狙う
  • コスト(Cost)であれば...許容製造原価範囲内で工程設計を行う
  • 納期(Dilivery)であれば...リードタイムや直行率の向上

生産技術を使うタイミング

生産技術は、ある特定の生産技術部だけの問題ではなく、各部署が全体最適化のために使用する要素技術です。

「新製品の立ち上げ」

新製品の立ち上げ時は、発売までの制約された時間とコスト。それと同時に量産でも安定した品質を量産するというトレードオフの条件を満たしながら、工程設計や工程準備を行う部署が生産技術を活用します。

  1. 生産技術開発・・・製品をどのように効率的に製作するか?その技術を開発する段階。
  2. 工程設計・・・製品の作り方を設計する作業のこと。
  3. 生産準備・・・製造するための生産ラインの構築(SE検討・工程計画・設備計画・設備製作など)
  4. 工程整備・・・生産ラインで期待された精度や工程能力(加工時間、速度)の確認。
  5. 設備検証・・・安全性・機能性・品質などが期待された設計通りかの検証。
  6. 工程能力検証・・・安定して狙い通りの製品を製作できるか能力の検証。

「工程の維持管理」

量産開始後は、品質 (Quality)、コスト (Cost)、納期 (Delivery) を保証する管理部門が生産技術を活用します。

  1. 工程整備・・・生産ラインで期待された精度や工程能力(加工時間、速度)の確認。
  2. 設備検証・・・安全性・機能性・品質などが設計通り維持されているかの検証。
  3. 工程能力検証・・・安定して狙い通りの製品を製作できるか能力の検証。
  4. 設備保全・・・設備機械の故障や劣化を予防し、製品精度を維持するための保全業務

生産技術は、どのように活用するのか?

生産技術とは、、、付加価値を増大させ利益をもたらす技術

一般的に生産技術といえば、生産準備や設備管理などに使うイメージがあると思います。
しかし実際は、意識してないだけで日常的に使っているものです。

ノギス

例えば、製造部門でも1日の製造数を把握するためには、製造数を計測する必要がありますので、計測技術が必要となります。製品寸法を測定する場合でも、ノギスやダンチノギスやボールすきまゲージなどを使いますので、測定マニュアルを整備したり、測定器の正確性を保証するかも決めなければなりません。

生産技術の基本的な考えは、やりたいことを具体化する技術ですので、生産技術を使う機会は多岐に渡ります。生産技術は、付加価値を増大させ利益をもたらす基本的な技術ともいえます。

生産技術は、利益を伸ばす技術

生産技術は、、、製造業では加工という作業を加えて、付加価値を高めている

生産技術は、一般的には製造工場の技術と捉えられていますが、そうではありません。農業、林業、漁業などの一次産業や宿泊設備貸与業,広告業,修理業,興行業,医療保健業,宗教・教育・法務関係などのサービス業にも多様に活用されています。その管理している項目が、品質 (Quality)、コスト (Cost)、納期 (Delivery) です。

製造業(ものづくり)でいえば、生産技術は素材に加工という作業を加えることで、付加価値を高めて顧客により大きな価値を提供します。サービス業でいえば、提供する品物にサービスという付加価値をつけて、価値を提供し、その対価として報酬を得るということです。

製造業での付加価値の質や量を決めるのは、ねらい品質を決定する開発設計部門の仕事になります。それを最小コストの中で、高品質を作る仕組みを構築する技術が、生産技術になります。企業の利益は、生産技術なしでは得ることはできません。

生産技術の種類

生産技術には、どんな技術があるか?

生産技術には、設計開発・工程設計・生産準備・初期生産・工程維持管理・品質改善など様々あります。生産技術の話をする以上、私が以前勤めていたトヨタ生産方式をお伝えしない訳にはいきません。

トヨタ生産方式は、在庫ゼロにするために徹底したムダ取りの技術です。トヨタ自動車では、ムダを「付加価値を高めないものすべて」と定義しています。徹底的なムダの排除により原価低減を行い「必要な時に、必要なものを、必要な量だけ造る」よい品をより安く造ることが、トヨタ自動車の目指すところです。

工数低減は生産技術の見せ場でもある

工数低減の基本は、考える範囲を絞るため仕事を細かく区切ります。まず「正味作業・付加価値のない作業・ムダ」の選別を行います。各工程間のバラツキやボトルネックを確認し、分解した作業を元にムダの排除と工程間のバランス調整を行います。

  • 正味作業・・・作業全体のうち「付加価値を高める作業」のこと
  • 付加価値のない作業・・・「付加価値はないが、今の作業条件下ではやらねばならない」もの
  • ムダ・・・「作業をしていく上で何ら必要でないもの」のこと

工程設計をする上で、バラツキの発生する主な原因である4M、人(Man)、設備(Machine)、材料(Material)、方法(Method)のコントロールが重要になってきます。生産技術は、利益を生み出すため品質 (Quality)、コスト (Cost)、納期 (Delivery) を管理することであり、ねらい品質を再現するための要素技術でもあります。

その上で、ムダに視点に絞ることで、問題点は見つけやすくなるのです。トヨタ生産方式のムダ取りには、 代表的な指標の7つが挙げられます。

「7つのムダ」

  1. 造りすぎのムダ・・・売れ残るお金のムダ
  2. 在庫のムダ・・・余分なスペースのムダ
  3. 手待ちのムダ・・・時間のムダ
  4. 運搬のムダ・・・モノの動きのムダ
  5. 加工そのもののムダ・・・設備投資・加工労力のムダ
  6. 動作のムダ・・・余分な労力のムダ
  7. 不良品・手直しのムダ・・・捨てる、余分な労力のムダ

このムダ取りは、工程設計段階が最も実行しやすく費用対効果が高いです。ムダを発見したら、以下の問題解決8ステップ手法を使って解決すると良いでしょう。

「問題解決の8ステップ」

問題解決8ステップ

問題解決ステップ

内容

①:問題の明確化

あるべき姿、ありたい姿と現状の差(問題)を明確にし、
どの問題を改善するのかを決定する。

②:現状把握

現状の調査・分析を行い、問題を層別・具体化する。
事実とデータで把握することがポイント。

③:目標設定

目標とする項目に基づいて具体的に目標を定める。

④:要因解析

特性に関する現状を調査し、要因を洗い出し、整理・解析する。
問題解決の重要なポイント、真因の検証を行う。

⑤:対策立案

対策案の洗い出しと検討評価を行う。

⑥:対策実施

計画に基づき着実に対策を実行し、進捗状況を定期的に確認する。

⑦:効果確認

現地現物で対策結果の確認し、目標値と比較確認する。

⑧:標準化と管理定着

元に戻らないよう標準化し、効果の拡大を図る。

QCDは生産技術で向上させる

QCDとは何か?

QDC関係図

QCDとは、生産管理する上で重要な、品質 (Quality)、コスト (Cost)、納期 (Delivery) の頭文字をとったものです。

  • 品質(Quality)・・・顧客が求める要求品質を満たしているか?
  • コスト(Cost)・・・他社より安く手に入るか?
  • 納期(Delivery) ・・・欲しい時に手に入るようになっているか?

そのためにも、工程は誰が見ても一目で分かる工程にする必要があります。ムダの改善が進むためには、管理基準となる目標と実績が視える化されて、初めて異常や弱いところが見え、改善が進みます。モノの管理の基準は4S(整理・整頓・清潔・清掃)で、作業の管理基準は標準作業です。トヨタ自動車でも言われてましたが、4Sはすべての管理の基本です。

「品質不良の低減」

そして、不良低減は生産技術が深く関わる分野でもあります。品質不良の約80%は設計段階での問題が出てくると言われています。ですので、現地現物で問題把握することから生産技術が関わり、源流での対策を行うべきなのです。

「リードタイムの低減」

お客様に受注を受けて納品するまでの時間のことです。リードタイムはその企業の総合力が問われると言われています。

「リードタイム短縮の4つのポイント」

  • 段取り時間の短縮
  • 標準化
  • 工程設計の検討
  • FA(製造業における工場の自動化)

他社に勝つための生産技術を磨く

固有技術とは何か?

固有技術とは、モノづくりに必要な固有のエンジニアリング技術をはじめとしたテクノロジーを意味します。例えば、ものを作ったり、サービスを提供したりするときに必要な技術、たとえば設計開発や製品加工などの技術のことです。

グラインダーを使う作業員

分かりやすく簡単に言いますと、固有技術とは個人の技術、熟練工のような名人芸のことを言ったり、ロボットに独自の改善を加えた技術などを言います。それに対し管理技術は、このような熟練工の名人芸を誰でもできるようにする技術とでもいいましょうか。

つまり、固有技術とは競争力のあるものづくりをするための独自の技術、コアコンピタンス(強み)のことです。あなたの会社の固有技術やコアコンピタンスとなる技術は企業秘密として、外部に漏らさないよう知的財産法などで守られていると思います。つまり、この固有技術があることで、真似したくてもできないほどの技術であれば、企業としての競争力が高くなるということです。

「固有技術を育てる」

他社との競争力は、この固有技術の優位性によって左右されますので、長期的な視点で固有技術を育てていく必要があります。やはりそのためには、基礎となる基礎技術の向上が、固有技術を育てます。

その基礎技術の向上のために取り組むべきなのが、品質は工程で作り込むということです。品質がバラツク原因として、4M、人(Man)、設備(Machine)、材料(Material)、方法(Method)のバラツキ低減が基礎技術の向上のベースになります。

もう一つは、根本的なチョコ停対策に挑むということです。このチョコ停とは、瞬間的にラインや工程が止まることです。チョコ停対策で最も重要なことは、チョコ停の発見と認識をすることです。実際に作業する作業者が分かっていても、工程管理者が認識していなかったら、作業者が言わない限り改善することはできません。チョコ停の裏には、品質不良が隠されているかもしれません。