本日は『品質管理の考え方「標準化」』をお伝えいたします。
標準化とは?
実在又は潜在の問題に関し、与えられた状況の下で最大限の秩序を実現するため、共通かつ繰返し使用するための取決めを確立する活動。(ISO/IECガイド2)
出典:日本工業標準調査会ウェブサイト
自由に放置すれば多様化、複雑化、無秩序化する事柄を少数化、単純化、秩序化する行動。具体的には、様々な「もの」や「事柄」について、「品質・性能の確保」、「安全性の確保」、「互換性の確保」、「試験・評価方法の統一」等を目的に、一定の基準を定めること。
つまり、多人数で仕事をする場合、各人が勝手に行動すると結果のバラツキが大きくなり、品質も効率も悪くなります。そのため、その時点でもっとも優れた方法を標準として定め、それに沿って行動するという行動原則になります。『標準を作り、守り、生かしていくこと』。モノの作り方や、仕事の進め方について、繰り返し使用するために定めた取り決めのことを標準化といいます。
標準化って何?
標準とは、、、一般のあるべき姿を示すものとしての、ありかた。よりどころとなる目あて。つまり、標準化により作り出される取り決めのこと。
標準化とは、、、標準に合わせること。製品・資材などの種類や規格を、標準に合わせて整えること。つまり、製品などの形・大きさ・性能・測定方法などを一定の取り決めに従って統一していく活動のこと。
標準化の目的
- 「製品品質の安定と向上」
バラツキの少ない製品の品質を向上させるためには、生産の4M(人・機械・材料・方法)の変化点管理が必要です。生産プロセスにおける、各工程での材料・機械・方法・作業者の変化点管理が必要で、そのために標準化が必要となります。 - 「コスト低減」
コスト低減には、様々なムダをさ期限することはもちろんですが、部品や材料の種類・個数を減らすことも必要です。決められた部品や材料の購入により価格低減と棚卸資産を減らすことができます。部品や材料の種類・個数が低減できれば、工程、設備、置き場、倉庫、搬送などの低減ができます。さらには、部品の互換性を持たせることで、設計・加工・修理などにおいて大幅な費用削減となります。 - 「能率向上」
仕事の進め方が標準化できると、業務を覚えるのがより簡単になりますので、今までの教育時間よりも短縮しても同じ質の仕事ができるようになります。作業を標準化することで、仕事のポカミスも減りますので、作業能率も大幅に向上します。 - 「納期短縮」
標準化することで、ムダな部品管理や工程を省くことが可能となり、製品品質が向上安定すれば、手直し品も低減し直行率も向上します。早く顧客へ製品をお渡しできるということに繋がります。
標準化の必要性
標準化しなくても、仕事を進めることはできます。しかし、問題も同時に起きてしまいます。仕事を行う時や人の違いにより、製品精度のバラツキが大きくなります。その結果、時間やコストなどのムダが生じてしまうのです。
例えば、ある部品を三次元計測器で計測する工程で、人によって計測基準ポイントが違うとします。基準点Aは10秒で計測できますが、基準点Bは20秒かかってしまいます。
もし、基準点A・Bで計測しても、同じ計測結果になるのなら、基準点Aで基準ポイントにした方が10秒短縮できます。したがって、この三次元計測工程で、「基準点はA」と標準化しておけば、人によるバラツキは抑えられます。
このように標準化する意味は、「いつ、誰がやっても、ムリ・ムダ・ムラなく同じようにできる」ことの確立にあります。ですので、標準化されたものを文書化し公のものとするだけでなく、「なぜ、そのような方法で作業することが重要なのか?」を理解させ、実際にできるまで技能を訓練しなければなりません。
標準化で得られる5つのメリット
- 【技術の蓄積】・・・個人が習得した固有技術を、企業としての技術として蓄積できる
- 【技術力の向上】・・・蓄積された技術を基礎にして、より技術力を高めることができる
- 【品質の向上】・・・安定した品質を製造でき、品質向上でコスト低減ができる
- 【仕事の進め方統一】・・・会社として仕事の進め方が統一でき部門間の連携が良くなる
- 【品質不良コスト低減】・・・設備保全や品質不良予防により品質不具合の未然防止ができる
なぜ、標準化しても効果が出ないの?
今まで、22業種100社以上の集客・品質改善サポートを行ってきた中で、言われてきたのは「標準化したって実際は使わない・・・」「標準化すると個人の創造性を損なってしまう・・・」「うちの会社は、毎回内容が違う仕事だから標準化できない・・・」ということをよく言われました。
▶︎【 標準化が備えるべき4つの”基本条件” 】 |
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①:守れない標準化を作ってしまった
私が今まで聞いてきた「標準化は使えない」「標準が守られない」といった問題は、「標準化が備えるべき4つの基本条件」を満たしていないと考えられます。その原因として、標準を守らなければならない作業者自身が意見を出し作成に参加できてなかったり、現場監督者が頭で考えた実際に使う人の意向を無視した形の標準化であったり、標準化のための標準化であったりすることが多いと感じます。こうした標準化は、守れない・守られない標準となってしまいます。
②:改善し続けるのが標準化
また、「一度、標準化したら終わり」ではなく、改善・維持・改訂を継続して作り込んでいくもので、標準化というのは常に未完成と考えるべきです。標準化するからこそ、問題が浮き彫りになりやすい環境を作れます。問題を見える化するからこそ、技術力アップや改善が実施できるのであり、それこそ個人の創造性を発揮しやすい職場環境になるのです。
③:考え方のプロセスや共通点は標準化できる
さらには、毎回内容が違う仕事の場合でも、作業ではなく”考え方のプロセス”は標準化が可能です。たとえ、仕事の内容が毎回違うとしても、共通点は見出すことができるので、その部分での標準化はできます。
まとめ
標準化とは、書類にして“標準化が完結した”とするのではなく、その標準を守り、活かしていく行為が“標準化”であり、改善し続ける行為が重要といえます。
正しく標準化できると、技術力・品質力の向上が見込めますし、ムダなコストの削減が可能になります。標準化に完璧なものはありません。常に改善され続けていくものです。形式にこだわらず審査や監査のときにだけ活躍する標準化ではないものを目指しましょう。
品質保証を行う上で、重要な12の考え方
内容 | ||
1 | 「仕事を効果的・効率的に進めるための手順のこと」 | |
2 | ファクトコントロール | 「事実に基づいてデータでものをいうこと」 |
3 | 「結果でなく、仕事のプロセスを管理していくこと」 | |
4 | 「標準を作り、守り、それを活かしていく」 | |
5 | 「プロセスの下流でなく、プロセス上流で管理すること」 | |
6 | 「問題が起きた現地に足を運び現物を見ながら考えること」 | |
7 | 「品質優位により利益確保を目指すこと」 | |
8 | 「お客様の真に要求するモノ・サービスを提供すること」 | |
9 | 「後工程に喜んでもらえるモノやサービスを提供すること」 | |
10 | 「複数の問題から重要問題を選定し、優先的に取り組むこと」 | |
11 | 「根本原因を見極め対策することで問題を再発させないこと」 | |
12 | 「先を読み、想定される問題に対してあらかじめ手を打つこと」 |