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品質管理の基礎知識と考え方

2016年7月11日

品質管理の基礎知識と考え方

本日は『品質管理の基礎知識と考え方』をお伝えいたします。

品質とは何か?

▶︎【ISO 9000:3.1.1品質(quality)】

『本来備わっている特性の集まりが,要求事項を満たす程度』

  • 要求事項・・・明示されている,通常,暗黙のうちに了解されている若しくは義務として要求されている,ニーズ又は期待。
  • 本来備わっている特性・・・そのものを識別するための性質(物質的、感覚的、行動的、時間的、人間工学的、機能的、様々な種類がある)

▶︎【旧 JIS Z 8101:1981(品質管理用語)】

『品物又はサービスが,使用目的を満たしているかどうかを決定するための評価の対象となる固有の性質・性能の全体』

品質とは、「特性が顧客の要求またはニーズを満たす程度」のこと。つまり、「提供する製品やサービスが、顧客が求める特性との合致度が高ければ品質が高い」ということです。

品質管理とは何か?

▶︎【3.2.10品質管理(quality control)】

『品質要求事項を満たすことに焦点を合わせた品質マネジメントの一部』

  • 品質マネジメント・・・品質に関して組織(3.3.1)を指揮し,管理するための調整された活動。
  • 品質・・・本来備わっている特性の集まりが,要求事項を満たす程度。
  • 組織・・・責任、権限及び相互関係が取り決められている人々及び施設の集まり。

▶︎【JIS Z 8101:1981(品質管理用語)】

『買手の要求に合った品質の品物又はサービスを経済的に作り出すための手段の体系』

品質管理を略して ”QC” ということがある。また,近代的な品質管理は,統計的な手段を採用しているので、特に統計的品質管理(statistical quality control 略して SQC)ということがある。

品質管理とは「顧客の要求品質を満たす製品作りのマネジメント活動」のこと。つまり、「顧客の要求を満たす製品やサービスを経済的に作り出すための手段の体系」ということです。

品質を高めるために3つを管理する

  1. 『要求品質(顧客が求める品質)』・・・顧客が求める要求品質で、現状の製品への不満などを吸い上げるリサーチ力が求められる企画段階の品質です。
  2. 『設計品質(ねらい品質)』・・・顧客の要求品質に対して、企業の設計技術や生産技術、生産能力などを加味して、形にする設計を行う上で狙った品質です。
  3. 『製造品質(出来栄え品質)』・・・製造された製品の品質で、顧客の要求品質や設計品質に対して、どのくらいの適合度であるか?実際の出来栄えで評価される品質です。

品質管理で行う主な業務

  1. 「品質管理システムを構築する」・・・品質保証体系を確立して運営する仕組み作り
  2. 「顧客の要求品質の把握」・・・顧客がどのような製品やサービスを求めているのか?それをどのようにして作るのか?
  3. 「製品企画と製品設計」・・・顧客のニーズを製品という形に変換する
  4. 「品質基準の設定」・・・顧客の要求品質と自社の技術力を考慮して決定する
  5. 「工程内監査」・・・品質・生産効率・コストに影響する重要項目であり、確かな製品が作れるかを監査する
  6. 「クレーム対応」・・・顧客からのクレームの原因究明・再発防止の源流対策を行う
  7. 「トレーサビリティーの確立」・・・顧客の手に渡るまでの、材料・製造・流通など、各段階での記録を保管し、安全性・信頼性を高める

品質は工程で造り込む

「品質は工程で造り込む」という考え方は、品質管理の基本です。

品質は工程で造り込むとは、製造工程の一つひとつにおいて品質向上を追求するプロセスの造り込みによって、不良品を最終検査で取り除くのではなく、不良の発生源を絶つという考え方です。つまり、品質の高い製品やサービスを安定供給できるよう工程を管理し、工程を安定した良い状態にすることで、品質不良が発生する前に、工程の異常を検知して早期に対処し、不良を造らない未然防止していくことです。

製品を製造するには、仕入先から原材料や粗形材を購入し、工場で様々な製造プロセスを経て製品として出荷されます。このように、原材料や粗形材などの価値の低い経済財を、部品や製品といった価値の高い経済財に変換する過程の生産や作業のことを工程と呼びます。

さらに工程には様々な種類があり「加工工程」と「組み立て工程」に分類される工程と、その重要性から「特殊工程」と「重要工程」という他より管理をより強化する工程もあります。

①:加工工程の種類

加工工程とは、原材料や粗形材に対して、付加・変形・除去して要求される仕様の形状や精度の部品に仕上げる工程のこと。

  • 【付加工程】・・・溶接加工(抵抗溶接・アーク溶接・ガス溶接・レーザー溶接・電子ビーム溶接・テルミット溶接など)
  • 【変形工程】・・・塑性加工(熱間鍛造・冷間鍛造・温間鍛造・曲げ・絞り・バルジ加工・エンボシング・ロール成形・スピニング・転造など)
  • 【除去工程】・・・機械加工(旋削・穴あけ・研削・フライス削り・中ぐり・打抜き・切断・サンディング・のこ引き・ねじ立て・ルータ加工など)

②:組立工程の種類

組立工程とは、複雑な形状の製品を作るため、複数の部品を組み合わせ一体化させる工程のこと。

  • 【挿入工程】・・・ボルトやナットなどによる締め付け
  • 【圧入工程】・・・ファスナーなどによる締結
  • 【カシメ工程】・・・リベットや接着剤などによる接合

③:特殊工程

特殊工程とは、製品の検査や試験では、当該工程の要求品質を満たしているか十分に検証できない工程のこと。例えば、溶接工程・熱処理工程・表面処理工程・樹種溶着など、工程を完了した製品が要求された品質特性を満たしているかを十分に検証することができません。

他の工程とは区別して、認定作業者が作業したり、作業条件や作業者のエビデンスを残すなど、管理して品質保証することが求められる工程を特殊工程と言います。

④:重要工程

重要工程とは、求められたQCDを確保するために、他の工程よりも管理を厳しくする工程のことで、以下のような工程がある。

  • 【品質】・・・品質の肝となる工程
  • 【原価】・・・原価を下げる工程
  • 【納期】・・・納期遅れの危険がある工程
  • 【技能】・・・特殊な技能が必要な工程
  • 【能力】・・・生産でボトルネックとなっている工程
  • 【設備】・・・代替設備のない工程

製品の出来栄えで統計的に工程管理する

私たちは、毎日の生産活動の中で、品質が安定し不良品を出さない工程(工程能力指数Cp1.33以上)を目指して工程を造り込みます。しかし、製品が完成するまでの生産プロセスには、品質に大きな影響を与えるバラツキの要素である4M(人・設備・材料・方法)があります。この4Mのバラツキ要因を取り除くことが、品質の安定化につながっていきます。

この工程の異常原因によるバラツキを発見するために、QC手法を活用することで現象や兆候を統計的に把握し、できるだけ初期段階で不良発生要因を取り除きます。現象を統計的にとらえて図示化する手法として「QC七つ道具(特性要因図・チェックシート・ヒストグラム・散布図・パレート図・グラフ・管理図・層別)」があります。

管理された工程で作られた製品の品質データ分布は、左右対称の釣鐘形の正規分布の形状になります。製品にまつわる各種データの分布状況を調べて、傾向や性質などを数値で明らかにする手法を統計的手法を呼びます。この統計的手法として代表的なものがQC7つ道具と言われる手法で、工程に隠れている問題点や不具合などを効率的に解決していく手段として活用されています。

統計的管理:QC7つの道具と統計的な3つの考え方

  1. 【QC手法】・・・「仕事を効率的に進めるための手法」
     データや思考を見える化するためのツールです。仕事を効率的に進めるために問題解決の各ステップで使うと便利な手法です。
  2. 【チェックシート】・・・「データが分類項目別にどこに集中しているか?視覚化する
     データの取得・整理を容易にし、また点検・確認項目がもれなく行えるように、あらかじめ設計された様式・フォーマット。(QC7つ道具の一つ)
  3. 【パレート図】・・・「原因を分類して視覚化。重点指向、優先順位を付けやすい」
     
    パレート図とは、値が降順にプロットされた棒グラフとその累積構成比を表す折れ線グラフを組み合わせた複合グラフ。(QC7つ道具の一つ)
  4. 【特性要因図】・・・「要因解析の時に使う特性と要因の関係を線で結んで表した図」
     この特性要因図は、問題解決の7ステップの中の「要因解析」で“原因と結果との関係を明らかにする”一番重要になるステップの一部です。(QC7つ道具の一つ)
  5. 【管理図】・・・「工程の品質特性が規格に対して安定状態にあるか?を見るツール」
    時系列に得られるデータをプロットし、点の位置や並び方からデータの変動が偶然原因なのか?異常原因なのか?を判断するためのものです。(QC7つ道具の一つ)
  6. 【ヒストグラム】・・・「データのバラツキの姿を把握するために活用するツール」
    集めたデーターを幾つかの区間に分け、この区間に入るデーターの数を数えて度数表を作り柱状に表したものです。(QC7つ道具の一つ)
  7. 【散布図】・・・ 「2種類のデータの関係を視覚化して整理するためのツール」
    特性とその要因とを対にしたり、関連のありそうな二つの特性や要因同士を対にしてとったデータを、二つの軸の交点にプロットした図です。(QC7つ道具の一つ)
  8. 【グラフ】・・・「二つ以上の数量や関数の関係を図形に示したもの」
    グラフはあらゆる場面で使われ、あるデータを図表に表し、その状態が目で見て解るようにしたものです。(QC7つ道具の一つ)
  9. 【バラツキ管理】・・・「バラツキに注目し、ばらつく原因をつかむこと」
     
    製品の品質を保つためには、このバラツキを管理していくことが重要であり、品質を一定の水準に安定させることを品質管理といいます。
  10. 【層別】・・・「データを何らかの基準(尺度・視点)によって分類すること」
     
    データの共通点や特徴に着目して分類することで、複雑な事柄を解きほぐし問題点を具体化していくことです。
  11. 【データ】・・・「それをもとに推理し結論を導き出す、行動を決定するための事実」
    連続的に変化する計量値データや断続的に変化する計数値データがあり、正しいデータ収集が重要になります。

不良率の低減など品質改善を行う

日々の品質に関するデータを蓄積していくことで、リアルタイムに集計・分析を行い品質改善を行い、品質向上に役立てることが大切です。

品質不良が発生すると、手直しや不具合解析など、本来行なわなくてもいいムダが発生してしまいます。それは、生産性の低下による納期遅れや不具合品の流出など、経済的な損失だけでなく、企業の信頼が失墜してしまうことにも繋がります。

品質改善を行うためには、問題が明確になっていなければ取り組めません。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる!というような考え方で、原因を把握せずに対策を行うといつまでたっても問題は解決しません。余計悪くなってしまう可能性が高いです。そのために問題解決で活用するのが、以下のQCストーリーです。

問題解決の8ステップ(QCストーリー)

問題解決8つのステップ
  • 【問題解決手法の基礎】・・・「上手に問題解決をするための基本的ステップのこと」
     
    経営や仕事は問題解決の連続です。ここでいう問題とは、”あるべき姿と現状との差”のことであり、この差を埋めることを問題解決と言います。今回、説明する問題解決のステップとは、問題を「合理的・科学的・効果的・効率的」に解決するための段階のことです。問題解決手法の基礎を身につけることで、「問題とは何か?」の定義が決まり、「どうすれば解決できるのか?」解決手法がマスターでき、「ありたい姿と現状の差=問題」を効率的に解決することができます。
  1. 【問題の明確化】・・・「ありたい姿と現状の差を明確にし解決すべき問題を決定する」
     まずは、この問題の定義をきちんとしておかないと、関わる人がみんなバラバラの方向に進むと、効果的な問題解決どころか、結果を出せないダメ会社となってしまいます。
  2. 【現状の把握】・・・「現状を調査・分析し、データなど”事実”を把握する」
     
    問題解決しようとする管理特性について、現状の状態を正確に客観的に掴み、要因解析の手掛かりを掴むステップです。
  3. 【目標の設定】・・・「目標に対して何を、いつまでに、どのように実行するかを決める」
     その取り組むべき目標設定を行います。目標設定のポイントは「ニーズに基づいた具体的な目標設定を行う」ということです。
  4. 【要因解析】・・・「原因と結果との関係を明らかにすること」
     
    「ありたい姿と現状の差」の原因を突き止めることで、問題解決の中で最も重要なステップになります。今まで分かっている事実を収集・整理して解析するステップです。
  5. 【対策立案】・・・「対策案の洗い出しと検討を行い、具体的な実行計画の立案のこと」
     
    対策立案とは「問題解決の対策案の洗い出しと検討・評価を行い、具体的な実行を行なう計画の立案のこと」ことです。
  6. 【対策実施】・・・問題の情況に応じてとる手段を実際に施行すること
     
    対策実施とは「問題解決のために立てた具体的な計画を実行すること」ことです。関係者の協力のもと行うので報連相は欠かせません。
  7. 【評価(効果の確認)】・・・「どれだけの価値・価格があるかを見定めること」
     
    立てた目標に対し、どの程度達成できたかを把握し評価する。つまり、対策を実施した結果、変化や効果があったかどうか確認することが必要です。
  8. 【標準化と管理の定着】・・・「元に戻らないよう標準化し、効果の拡大を図ること」
     改善を行って、良い結果が得られた場合は、二度と改善前の状態に戻らないよう標準化して再発防止を図りましょう。

品質機能展開(QFD)

QFD(Quality Function Deployment:品質機能展開)とは、お客様の要望を的確に把握する方法で、顧客のニーズや期待を整理し、技術的にどのようにすれば、顧客に喜んでもらえるか?を明確にする方法です。

品質機能展開は、製品開発の際に、お客様の要求する品質を商品創りに反映させ、売れる商品創りをするのに最適な方法で、どのような機能が必要か?どのような特性が必要か?を決定すためのツールです。

提供する製品の設計段階からの品質保証を目的とした設計アプローチ方法であり、顧客が満足を得られる設計品質を設定し、その設計の意図を製造工程までに展開することを目的としています。また、売れる製品作りの活動の流れを可視化することで、組織的に売れる製品作りを進める方法でもあります。

この品質機能展開において基本となるのが、顧客ニーズを明確にしていく要求品質展開表と、それを実現していくために具体的な品質特性に変換する品質表です。

  • 「要求品質展開表(顧客ニーズの明確化)」
    要求品質展開は、顧客の製品やサービスに愛するニーズを把握することから始めます。
  • 「品質特性展開表(顧客ニーズを実現する品質特性)」
    整理された顧客ニーズとそのニーズを実現させるために必要な品質特性を明確にする手法です。

品質表(QFD)では、まず顧客要求を徹底して洗い出して顧客表現のままに整理し、別途整理した品質特性との関連性をマトリクスで明確にする事で、要求品質重要度を品質要素重要度に転換して、要求に対応した機能、性能を設計します。また品質だけでなく、品質表を必要に応じて「部品展開・技術展開・コスト展開・FMEA・業務機能展開」からQC工程表等に展開する方法が、品質機能展開です。

検査で不良品の流出防止

検査とは

検査とは、製品をなんらかの方法で試験をした結果を、品質判定基準に照らして合格・不合格の判定を下すことです。つまり、完成した製品が顧客の要求を満足するものであることを確実にするために検査を行います。

製品の良否の判定をするだけの作業ですので、製品の品質を向上させることではありません。
検査の目的は二つあります。一つは、不良品を後工程や顧客に渡らないように品質を保証すること、もう一つは前工程の品質レベルの監査することです。

検査の定義

検査とは、品物またはサービスの一つ以上の特性値に対して,測定,試験,検定,ゲージ合わせなどを行って,規定要求事項と比較して,適合しているかどうかを判定する活動。(JIS Z8101-2)

4種類の検査

  1. 「受け入れ検査」
    受入検査とは、製造に必要な原材料や部品を外部から購入したものを、受け入れて良い品物か?を行う検査です。受入検査の目的は、生産工程や顧客に、仕様・規格に合わない商品が流れることがないよう品質保証することや品質上の責任の所在を明確にすることなどです。最近では、購入した原材料や部品の検査データや品質状況を見て、納入業者の品質改善へ繋げる企業もあります。
  2. 「工程内検査」
    工程内検査とは、各生産工程で、次の工程に送っても良いか?次工程へ不良品を流さないために行う検査です。不良品による損害をできる限り小さく抑えることや、工程異常を早期に発見し改善に繋げることを目的としています。また、作業者の品質向上の意識を高めることができることや工程へのフィードバックが迅速に図れるため、品質保証が強化されます。
  3. 「最終検査」
    最終検査とは、完成した製品が製品として要求事項を満足しているか?を判定するために行なう検査です。最終検査データから、製造工程の品質レベルの推移を監視することも可能になります。
  4. 「出荷検査」
    出荷検査とは、最終検査した製品を倉庫などでストックしておき、受注に応じて出荷の際に行なう検査です。顧客の要求事項に基づいて顧客目線での検査を行います。

検査で重要なこと

検査で重要なことは、検査を行なう検査員の教育・訓練です。検査手順、検査方法、不良品が出た際の取り扱い方や連絡方法、検査記録の方法など検査作業には、多くの知識と技能が必要となります。

検査は、人によって判断基準が変わらないようにすることや、時間による判断基準の変化などがありますので、どんな状況でも判断基準が一定にする訓練が必要になります。特に重要な品質特性を検査する検査員には検査員制度などの資格制度を作ることで、一定レベル異常の技能を持った検査員だけが判定できるようにすることも大切です。

また、検査員にバラツキがあるように検査装置や測定機器にもバラツキや測定誤差があります。どの程度までの測定誤差までは許容範囲なのか?を明確にしておくことと、どうすれば測定誤差が最小になるのか?など、訓練や教育が大切です。

ISO9000の基礎知識

ISOとは?

ISOとは、International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称で、国際的な標準である国際規格を策定するための非政府組織です。スイスのジュネーヴに本部を置き、日本は日本工業標準調査会(JISC)が1952年に加盟。工業製品や技術から、食品安全、農業、医療まで約2万の規格があります。

ISOが制定したものをISO規格と呼び、国際的な貿易を促進するために「世界中で同じ規格のものを提供できるようにする」という国際的な基準であり、制定や改訂は日本を含む世界165ヵ国(2014年現在)の参加国の投票によって決まります。

またISO規格は、製品そのものだけではなく、組織の品質活動や環境活動を管理するためのマネジメントシステムについても制定され、品質マネジメントシステム(ISO9001)や環境マネジメントシステム(ISO14001)があります。

マネジメントシステムとは?

マネジメントシステムとは、組織の目標を達成するための仕組みです。会社の目標を達成するためには、組織内の人々が同じ目標に向かって動くためのマネジメントが必要不可欠です。そこで会社としてのルールを作り、それを皆で守ることで円滑な会社運営をしていきます。そのルールが、規定や手順と言われるものです。

さらに、規定や手順を運用するために、部次課長などの職制が必要となりますので、各役職に応じた責任と権限を明確にしていきます。会社目標を達成するために組織を適切に指揮・管理する仕組み、つまり会社の規定や手順、そして運用するための責任・権限の体系がマネジメントシステムだと言えます。

ISOマネジメントシステム規格は、こういった組織の「仕組み(マネジメントシステム)」に関する国際的な基準を示したものです。

ISO9000シリーズとは?

ISO9000とは、ISO(国際標準化機構)による品質マネジメントシステムに関する規格の総称で、顧客が購入する製品の品質を確かなものにしようとする場合、製品の検査だけでは全く不十分です。顧客は提供者に対して、製品の品質規格だけでなく、製造方法・品質管理体制までも含めた生産プロセスにて、品質を造り込み、維持するための品質システムの構築を要求するようになります。

ISO9001規格では、QC工程表については直接言及されていませんが、本来ISO9001規格は顧客に信頼してもらえるための資料です。ただ、そのためだけに活用すると、ISO審査の時や顧客監査の説明時には活躍しますが、それ以外では役に立たない社内の人間にとっては価値のない資料になってしまいます。

QC工程表については『製造業におけるQC工程表の基本』を参照ください。

ISO9001の品質計画書は、QC工程表として表現され、新製品の開発や製造にあたり、管理漏れがないように管理内容を可視化したもので、初期流動段階の生産時に活用したり、ISO審査の時や顧客監査の説明で活用しますが、マーケティングにも大いに活用できます。

ISO9000シリーズは、このような顧客の立場から供給者に対して要求される「品質システム」が具備すべき必要事項を20項目にまとめて作成された国際規格です。

  1. 経営者の責任
  2. 品質システム
  3. 契約内容の見直し
  4. 設計管理
  5. 文書管理
  6. 購買
  7. 購入者による支給品
  8. 製品の識別及びトレーサビリティ
  9. 工程管理
  10. 検査及び試験
  11. 検査、測定及び試験の装置
  12. 検査及び試験の状態
  13. 不適合品の管理
  14. 是正処置
  15. 取扱い、保管、包装及び引渡し
  16. 品質記録
  17. 内部品質監査
  18. 教育・訓練
  19. 付帯サービス
  20. 統計的手法

なぜ、マネジメントシステムが普及したのか?

18世紀後半から始まった産業革命以降、製造業にとって目指すべき目標は、いかに効率的に大量生産を行うかということでした。20世紀前半にはアメリカで自動車産業が台頭し、世界大戦を経て、製造業は効率的に大量生産する必要に迫られる社会環境の中、製造現場で品質管理や品質保証といった考え方が広がります。製品の不良率を下げ、品質による無駄なコストを下げるための手法として、品質管理・品質保証という考え方は急速に普及しました。

品質管理や品質保証が製造業で広く普及すると、やがてこういった取り組みを制度として整備する動きが生まれ、イギリスが品質保証のモデルを作り、それを元に国際規格ISO9001が制定されました。日本にとっては、ISO9001の認証を取得していると、欧米との取引の際に相手企業からの信頼を得られるというメリットがあり、多くの企業が認証を取得するようになりました。

【ISO9000のメリット】

  • 品質向上に取り組むという企業活動が外部に伝わる
    品質向上活動が、品質技術ノウハウ構築と更なる製品と企業の信頼向上に繋がります。
  • 社内業務の文書化で可視化され、部署間の業務内容や責任が明確になる
    助け合うという日本企業の良さもありますが、責任が不明瞭な部分が明確になることで責任を持った仕事ができます。
  • 国内・海外企業に対して品質が良いとうい証明になる
    ISO9000の取得は欧米企業から大きな信頼を得ることが可能になります。
  • 顧客の立場で客観的に生産プロセスにおける品質を見ることができる
    自社の生産プロセスの強み弱みの発見ができ、現場力アップに繋がります。
  • 品質に強い企業として、受注比率の向上に繋がった
    確かな品質を作り込む企業として、新規獲得やリピート注文の向上に繋がります。
  • 暗黙知だったベテランの技術ノウハウが新人にも伝わる
    技術は盗むという時代ではなく、早く技術の習得が可能になります。
  • 製品の品質保証の関所や検査基準や検査方法が明確になる
    どこで、いつ、何を見るという検査基準が明確になり品質不良の流出低下に繋がります。

【ISO9000のデメリット(問題点)】

  • 管理文書が増加し複雑化したので、人手と手間がかかる
    文書管理の手間が増えて管理が大変になります。
  • 今までの仕事に承認などワンクッション過程が増えた
    文書の確認を上司にしてもらう必要性が増えます。
  • 責任が明確化されたことで協力体制が弱くなった
    この仕事はどこの部署という明確な仕事の役割ラインができます。
  • 文書化されたことをやるという風潮になりチャレンジ精神が弱くなった
    決められていることをやるという受身の体制になる人材が増える可能性があります。
  • 目的があやふやな品質データを取ることが増えて生産性が低下した
    無駄なデータ取得が増えてしまう可能性があります。

ISO9000の品質計画書

ISO9000 4.2.3では「供給者は、品質要求事項をどのように満たすのかを定め、文書化すること」ということとして、品質計画の作成を求められています。

その品質計画の作成で作られる品質計画書は、ISO8402 3.13で「特定の製品、プロジェクト又は契約に関する特有の品質、業務、経営資源及び活動順序を規定した文書」と定義されています。その品質計画書とは「契約仕様書・図面・仕様書・QC工程表・作業標準書・生産指示書・検査基準書」が挙げられます。